SGLT-2阻害薬のCREDENCE Trial斜め読み

一昨日のNEJMにSGLT-2阻害薬であるカナグリフロジンの腎アウトカムに対する効果を検証したRCTであるCREDENCE Trialの結果がNEJMに発表された.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1811744
SGLT-2阻害薬の大規模臨床試験では,EMPA-REG OUTCOME,CANVAS program,DECLARE-TIMI 58に続いて4本目である.

まだ斜め読みしかしていないが,eGFR 30~90かつ尿中アルブミン300~5000mg/gCr(つまり糖尿病性腎疾患3期)のRAS阻害薬使用中の30歳以上の2型糖尿病患者を対象にして,カナグリフロジン100mgとプラセボを比較して,2.6年間で腎アウトカムを3割減らしたという結果である.目標イベント発症数に達したことで試験は早期中止された.

ただ,例によって素直に受け入れるには注意が必要である.
腎アウトカムは,クレアチニン倍加,末期腎疾患(eGFR<15,透析導入),腎死亡,心血管死亡の複合アウトカムであり,有意に減ったのは,クレアチニン倍加と末期腎疾患,心血管死亡であり,eGFR<15と透析導入と腎死亡には有意差はついていない.ただ,効果推定値が25~40%減少と比較的揃っているので,イベント数の一番多いクレアチニン倍加が引っ張っているというわけでもなさそうである.

Primary outcome HR 0.70(0.59-0.82) p=0.00001
sCr倍加 HR 0.60(0.48-0.76) p<0.001
末期腎疾患 HR 0.68(0.54-0.86) p=0.002
eGFR<15 HR 0.60(0.45-0.80) NA
透析導入 HR 0.74(0.55-1.00) NA
腎死亡 NA NA
心血管死亡 HR 0.78(0.63-1.00) 0.05

注目するべきはサブ解析だ.
交互作用の検定では有意差はないものの,有意差がついているのはeGFR 45~60未満と30~45未満,尿中アルブミンが1000mg/gCr以上の層だけである.eGFRについては60~90未満では有意差が見られていない.しかし,eGFR値による腎アウトカムに対するハザード比に用量反応関係が見られていない.40~60未満の層にだけ大きな効果があるということがあるのだろうか.

eGFRによるサブ解析
30~45未満:HR 0.75 (0.59–0.95)
45~60未満:HR 0.52 (0.38–0.72)
60~90未満:HR 0.82 (0.60–1.12)

驚くべきことは,本研究は糖尿病歴が平均15.8年で平均HbA1c 8.3%の平均年齢63.0歳の2型糖尿病患者が対象で,心血管疾患の既往を持つ者が50.4%いる.
これまで,糖尿病罹患歴が長い患者には抗糖尿病薬の合併症予防効果は(試験開始前にコントロール良好だった患者を除き)証明されていない(ACCORD,ADVANCE,VERTなど)ので,この結果は意外である.

Supplementary appendixに詳しい患者背景が出ているので見てみると,他の抗糖尿病薬使用歴は,インスリンが65.5%,SU薬が28.8%,ビグアナイドが57.8%,GLP-1受動態作動薬が4.2%,DPP-4阻害薬が17.1%である.また他の薬剤の使用歴は,スタチンが69.0%,抗血小板薬または抗凝固薬が59.6%,β遮断薬が40.2%,利尿薬が46.7%だった.かなり薬物治療が入っている患者が対象となっている.
合併症は,網膜症が42.8%,神経障害が48.8%と,これまた多い.

昨年11月に発表されたSGLT-2阻害薬のSRでは,EMPA-REG OUTCOME,CANVAS program,DECLARE-TIMI 58のメタアナリシスで,心血管疾患の既往のある患者では心血管イベント抑制効果が見られたが,心血管疾患の既往のないハイリスク患者では見られなかった.
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0140-6736(18)32590-X
今回のCREDENCE Trialにおける心血管疾患の既往によるサブ解析では,心血管疾患の既往のある患者ではHR 0.70(0.56~0.88),心血管疾患の既往のない患者ではHR 0.69(0.54~0.88)と変わらない.
これまでの知見と異なるので,違和感のある結果である.
ひょっとしたら,併用薬の増減による影響が交絡しているのかもしれない.

なお,下肢切断などの副作用は有意に増えなかったとあるが,たかだか4,000例程度の規模の研究であるので,副作用については結論が出しにくいことは他の大規模臨床試験と同様である.

本研究の結果を見ても,総合診療医としては,現時点でSGLT-2阻害薬の処方は控えるという立場は変わらないが,もし本研究結果から使う適応を考えるとしたら,eGFR 45~60の,尿中アルブミンが1000mg/gCr以上ある,網膜症や神経障害を持つ2型糖尿病患者で,ビグアナイド,インスリン,スタチン,抗血小板薬または抗凝固薬,β遮断薬,利尿薬を使用中でもHbA1c 9.0%以上の患者になるだろうか.かなり適応できる患者は少ないはずだ.
機会があれば,もう少し詳しく読んでみたい.

P6041912.JPG
旧大社駅にて,2017/6/4撮影)

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です