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EBMにまつわるトピックス
ここでは,EBMにまつわるトピックスについて書いていきます.
Values-Based Practice(VBP)における医療者の価値観
EBMのstep4は「情報の患者への適用」と呼ばれていて,EBMの5つのstepではもっとも重要なものです.
つまり,エビデンスをどのように患者に当てはめていくか,であり,しばしばエビデンスとは異なる決断がなされることがあります.
私はBrian HaynesのBMJ 2002;324:1350を引用して,step4では,「エビデンスは,患者の病状と周囲を取り巻く環境,患者の好みと行動,そして医療者の臨床経験と組み合わせることで,患者にとってもベストな決断を行うもの」と4要素で説明しています.
ところが,ネットで調べてみると,3要素で説明しているものも散見されます.EBM triadとして,best external evidence,patient
values & expectations,individual clinical expertiseとしているものが多いようです.Haynesの4要素と比べてみると,病状や環境が抜けているようですが,これは,患者の価値観や医療者の臨床経験に組み込んでいるのかもしれません.
EBMのバイブルと呼ばれるSackettの「Evidence-Based Medicine - How to Practice and Teach EBM」には,EBMのstep4(患者への適用)に以下のように書かれています.
「Step 4 - integrating the critical apraisal with our clinical expertise and with our patient's unique biology, values and circumstances」
私は初版本を持っていませんが,第2版〜第4版まで,同じ書き方がされています.こちらは,Haynesの4要素のすべてが入っているのがわかります(著者にBrian
Haynesが入っているので当然だと思いますが).
そして,Gordon Guyattの「Users' Guides to the Medical Literature: A Manual for Evidence-Based Clinical
Practice, 2nd ed(日本語版)」には,適用の部分についていくつの要素と図示されているわけではありませんが,患者と協議によって意思決定する際に「医師自身の価値観や好みを示すことも必要」と書かれています.
書き方はいろいろですが,同じことを言っています.そして,診療の現場における決断は,患者の価値観だけでなく医療者の価値観も大きく影響しますが,Haynesの4要素では,医療者の臨床経験にそれが含まれるのでしょう.
いずれにしても,医療者自身がどのような価値観やバイアスを持つのか(私の場合は薬出さないバイアス,保守バイアスがかかっている)を自覚することが大事です.
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