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エビマヨの会−2009年7月15日

 第6回:アルツハイマー病の自己スクリーニング検査(TYM)はある程度有用だが,信頼性が低い

Brown J, Pengas G, Dawson K, Brown LA, Clatworthy P.
Self administered cognitive screening test (TYM) for detection of Alzheimer's disease: cross sectional study.
BMJ. 2009 Jun 9;338:b2030. doi: 10.1136/bmj.b2030.
PubMed PMID: 19509424;
PubMed Central PMCID: PMC2694259.

チェックシートは はじめてダイアゴンシート4.2

背景: 認知症患者はありふれており,原因も多岐に渡るが,診断には経験を要する.非専門家に広く使用されるようになるためには,短時間で検査できる,必要とする範囲の認知機能を検査できる,軽症Alzheimer病に感度が高いという3つの条件が必要であるが,これまで作られた多くの認知機能検査のうち,これを満たしているものはない.
カテゴリー: 診断
研究デザイン:
 横断研究
資金源: Alzheimer's Research Trust(UK), Cambridge Commonwealth Trust, Stroke Association
利益相反: なし
1.論文のPECOを探る:
P: 英国Addenbrooke's Hospitalのmemory clinicを2007年3〜10月に受診し,NINDCS-ARDRA criteriaで診断されたAlzheimer病患者94名(平均年齢69.0歳)と健忘型軽度認知機能障害患者14名,健常者540名,年齢18〜95歳
E/C: TYM(Test Your Memory),Addenbrooke's cognitive examination-revised(ACE-R),mini-mental state examination
O: Alzheimer病の診断
TYMの質問紙はこちら(Data SupplementのAppendix 1 Test your memory. The TYM test).
2.C(Ccmparizon)には,gold standardが用いられているか?: Alzheimer病の診断はNINCDS-ARDRAで行われているが,これがgold standardといえるかどうかは不明(ディスカッションの項参考).
3.研究で行われた診断法は,いずれも全ての患者行われているか?: はい.
4.研究で行われた診断法と最終診断の判定は,互いに独立に行われているか?: NINCDS-ARDRAでの評価はTYMの結果を参考にせず行った.TYMの方は来院初日に検査されている.良心的に解釈すれば,”NINCDS-ARDRAでの評価の際に,TYMの結果を参考にせず行った”とわざわざ書いてあるので,TYMを行った後で,NINCDS-ARDRAでの評価を行ったと考えられ,TYMはNINCDS-ARDRAの結果を知らずに評価したと考えられる.
5.研究で行われた診断法と最終診断の判定は,いずれもその方法が明確に記載されているか?: はい.
6.研究で行われた診断法と最終診断の判定は,いずれも再現性があるか?: 3人の評価者(JB,GP,JAB)が100枚のTYMシートを独立に採点し,評価者間一致度を評価した.Pearsonの相関係数ではr=0.99でかなり相関は高い.
7.結果の評価:
TYMスコア(50点満点)は,健常人で46.6点だったのに対して,Alzheimer病患者で33.2点(p<0.001)
全ての項目のサブスコアで,健常人とAlzheimer病患者の間に有意差があった.

TYMスコア42点以下をAlzheimer病としたとき,感度93%,特異度86%(陽性尤度比6.6,陰性尤度比0.08)
Table 3から尤度比を計算
score 感度 特異度 陽性尤度比 陰性尤度比
≦38 96 75 3.8 0.05
≦39 95 81 5 0.06
≦40 92 83 5.4 0.10
≦41 91 87 7 0.10
≦42 86 93 12 0.15
≦43 83 94 14 0.18
≦44 81 95 16 0.20
≦45 75 97 25 0.26
Chronbachのα係数は0.80(質問紙の内的妥当性の評価指標で0.8以上なら妥当性ありと評価)
ディスカッション:
  • 参加者の組み入れに問題がある.
    通常,このテーマで研究を行うのであれば,Alzheimer病が疑われる患者を集めて,その全員をTYMとNINCDS-ARDRAで評価し,NINDCS-ARDRAに対するTYMの感度・特異度,尤度比を算出するべきである.
    しかし,本研究では,まずAlzheimer病と診断された人を集め,次にその3倍の健常者が集められているので,Alzheimer病患者と健常者との割合は恣意的に決められている.
    したがって,この研究では有病率は求めることができない.
    また,しばしばAlzheimer病かどうか分からない境界域の患者の診断が難しいので,そのような患者にスコアを付けたり検査をしてみようと思うのであるが,本研究のように患者と対照を別々に集めてくると,疾患があるのかないのか分からない境界域の患者が選ばれないことが多く,算出された感度・特異度が過大評価されることになる.
  • 108名がAlzheimer病と健忘型軽度認知機能障害と診断され,当初そのうち,85名がAlzheimer病で23名が健忘型軽度認知機能障害と診断されたが,後者の内ACE-Rの点数が低い(83点以下)の人は早期にAlzheimer病に進展することが考えられたため,Alzheimer病群に組み入れて,最終的に94名のAlzheimer病患者とした.
  • 本研究では,Alzheimer病の診断基準としてとしてNINCDS-ARDRA criteriaが使われており,これは臨床診断ガイドラインにおける診断として使われている.
    NINCDS-ADRDA(National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke and the Alzheimer's Disease and Related Disorders Association)の基準は以下の通り.
     ・臨床所見と標準化した簡易精神状態検査で証明された認知症があり,神経心理学的テストで確認されたもの
     ・2領域以上の認知障害
     ・記憶とその他の認知機能の進行性悪化 
     ・意識障害がない
     ・初発年齢が40〜90歳
     ・進行性の認知障害を説明できる他の全身性または神経学的疾患がない
    この基準はautopsyをgold standardとした場合,感度83〜85%,特異度50〜55%とされている(J Am Geriatr Soc 1999 May;47(5):564)ので,今回の研究でNINCDS-ARDRA criteriaを診断基準とすると,結果として出てくる感度・特異度は真のものよりも過大評価されて出てくる可能性が高い(NINCDS-ADRDAの診断ですら,真にAlzheimer病があるかどうかを弁別しきれないので).
  • 一方,本研究ではAlzheimier病予備群とも呼ぶべき現在amnestic mild cognitive impairmentの患者9名が含まれているが,軽症患者が入ることにより,Alzheimer病なしの方からAlzheimer病ありの方に患者が動き,動いた患者はAlzheimer病患者よりも軽症であるので,よりTYM高値のものが多く含まれる.
    このため,感度は低くなる.
    また,残ったAlzheimer病なしの群も,TYM高値の方が多い人数で抜けるので,特異度も低くなる.
    そのため,感度・特異度ともにAlzheimer病患者だけの場合よりも低くなり,過小評価される(下図参照).
Alzheimer病あり Alzheimer病なし
TYM低値
TYM高値 ↑↑ ↓↓
    結局のところ,この診断法は使えるのか:
    • 簡易なアンケートで診断ができるのは画期的である.
      検査に時間がかからないので,外来の場面でも使える.
    • 参加者の組み入れに致命的な問題があり,日常診療で問題となるAlzheimer病があるかどうかグレーゾーンの患者での診断特性が分からないので,現時点でTYMをAlzheimer病のスクリーニングに使うのは時期尚早.
    • ただ,検査法自体は簡単で短時間でできるので,将来的に外来で使えるツールになる可能性はある.

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