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エビマヨの会−2009年8月5日

 第9回:T度房室ブロックがあると,心房細動発症率と死亡率が増える

Cheng S, Keyes MJ, Larson MG, McCabe EL, Newton-Cheh C, Levy D, Benjamin EJ, Vasan RS, Wang TJ.
Long-term outcomes in individuals with prolonged PR interval or first-degree atrioventricular block.
JAMA. 2009 Jun 24;301(24):2571-7.
PubMed PMID: 19549974.

チェックシートは はじめてコホートシート3.2

背景: 心電図上PR間隔が200msec以上のものをT度房室ブロックと呼ぶが,その臨床的意義は分かっていない.
カテゴリー: 予後
研究デザイン:
 コホート研究(Framingham study)
資金源: National Institutes of Health contract N01-HC-25195.
利益相反: なし
1.論文のPECOは何か?:
P: Framingham Heart Studyのオリジナルコホートの第11次隔年検査(1968-1971年,n=2955),offspringコホートの第1次検査(1971-1974年,n=5124)
   除外基準(504人): PR間隔が測定できない不良心電図(n=81)
                20歳未満(n=243)
                心房細動の既往があるか,検査時に心房細動があった(n=29)
                抗不整脈薬や強心配当体を使っているか,ペースメーカー埋め込み術の既往がある(n=86)
                共変量のデータがない(n=65)
E: T度房室ブロック(first-degree AVB,心電図のPR間隔の長さ>200msec)
C: 心電図のPR間隔の長さ≦200msec
O:
 死亡,心血管イベント(心筋梗塞,冠動脈虚血,脳卒中,心不全)
   不整脈関連エンドポイント:心房細動,ペースメーカー埋め込み術
2.outcomeの観察者が危険因子についてmaskingされているか?: outcomeの評価の際にPR間隔はmaskingされていない.
3.追跡期間はどれくらいか?: 20年
4.交絡因子の調整のため,多変量解析は行われているか?: 行われている.多変量Cox比例ハザード回帰モデルが使われている.
 多変量モデルにおいて,以下の変数を調整した.
 年齢,心拍数,高血圧,BMI,,TC/HDL,喫煙,糖尿病
 心房細動の解析には,弁膜症(グレード3/6以上の収縮期雑音と全ての拡張期雑音の有無),心臓超音波検査による左室肥大,10秒間起こる心室性期外収縮の有無を共変量に加えた.
 ペースメーカー埋め込み術の解析には,QRS間隔を追加で調整した.
5.結果の評価:
baselineのPR間隔>200msec: 124/7575=1.6%
PR間隔をMedian(149msec)で切ったときの,心房細動,ペースメーカー埋め込み術,総死亡の生存曲線は以下の通り.

各エンドポイントの粗発症率はTable 2にあり,10,000人年対PR間隔>200msecの心房細動発症率は140,総死亡率は334である.
つまり,それぞれ年間1.4%と3.3%の発症率ということである.

PR間隔が1SD(20msec)延びる毎にどれくらい各エンドポイントのリスクが上がるかを示した表がTable 3.
20msec延びる毎に,心房細動は11%,総死亡は8%,どちらも有意に増える.

T度房室ブロック(PR間隔>200msec)の有無で各エンドポイントのリスクを示したのがTable4.
T度房室ブロックがあると,心房細動の発症は2.06倍に,総死亡は1.44倍に,どちらも有意に増える.

  • QRS間隔が120msec以上を除外しても結果は変わらなかった.
  • 性別によるPR間隔のアウトカムへの影響の違いはなかった.
  • オリジナルコホートとoffspringコホートで層別化しても,リスク推定には有意な変化はなかった.
ディスカッション:
  • 総死亡が増えるとされているが,原因疾患が不明.
  • 方法では,PR間隔は200msecで切ると言っているのに,FigureではなぜMedianで2群に分けられているかは不明.
  • Table 3は,PR間隔が20msec延びる毎に直線的にリスクが上がっていくことが前提に計算されたものである.
    PR間隔が延びると徐脈が誘発されて,ペースメーカー埋め込み術の適応が増えたり,その結果死亡率が上がるのは理解できるが,心房細動が増えるというのは説明が付けられない.
  • 方法では,多変量解析の共変量として性別や心血管系疾患の状態については挙げられていないが,Table 3,Table 4では調整されている.
  • 多変量解析の調整項目の中に,心房細動の原因となりうる飲酒量,コーヒー摂取量,甲状腺機能亢進症,低K血症,ACE阻害薬,ARB,ビス剤の使用状況などは含まれていない.
    baselineに心不全の既往がある割合に5倍の開きがあるが,心不全であればジギタリスが使われている可能性があり,心房細動のリスクとなりうるジギタリスの使用量も共変量として扱うべきである.
  • Framingham Heart Studyの他の報告(Lancet 2009;373:739)でも,PR間隔≧160msecで心房細動が起こしやすくなることが示されている.
結局のところ,どうすればいいのか:
  • T度房室ブロックが予後を悪化させるのが分かったとしても,それをどのように治療したら改善するのか分からない.
  • 現時点では,経過観察と,他のリスクファクターの評価とコントロールを行う.

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