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エビマヨの会−2009年8月12日

 第10回:旅行時間が長いほど,静脈血栓塞栓症のリスクが高くなる

Chandra D, Parisini E, Mozaffarian D.
Meta-analysis: travel and risk forvenous thromboembolism.
Ann Intern Med. 2009 Aug 4;151(3):180-90.
PubMed PMID: 19581633.

チェックシートは はじめてレビューシート3.4

背景: 長距離旅行が急速に増えていることにより,旅行に関連した静脈血栓塞栓症のリスクが公衆衛生上重要になってきているが,先行研究では結論は一致していない
カテゴリー: 病因
研究デザイン:
 システマティック・レビュー,メタ・アナリシス
資金源: 外部からの資金供与はなし
利益相反: なし
1.論文のPECOは何か?:
P: 人
E: 全ての移動手段で旅行する
C: 旅行をしない
O: 静脈血栓塞栓症:適切な放射線学的検査(深部静脈血栓症に対する超音波と静脈造影,肺塞栓に対するCTと換気血流シンチ),剖検所見,静脈血栓塞栓症による入院記録
2.全ての研究を網羅的に集めようと努力したか?: 
 @検索に用いた文献データベースは?: MEDLINE,EBMBASE,BIOSIS,CINAHL,the Cochrane library,grey-literature sources
 Aどのような検索語で,どの期間の研究を調べたか?: 
   検索語: travel,transportation,journey,flying,thrombosis,emboism,DVT,PE,clot
         (以下の後は除外:review,review literature as topic,case reports)
   期間: 各データベースの検索可能の最初の年から2008年3月まで.
 B個々の論文の参考文献まで追跡して調べたか?: 調べた.
 C個々の研究者や専門家に連絡を取ったか?: 取った(が,返事はなかった).
 D出版されていない研究も探したか?: 記載なし.
 E同じ研究が複数報告されていないか?: 記載なし.
 F英語以外で書かれた研究も探したか?: 言語の制限はしなかった.
3.全ての研究が網羅的に集められたか?: 
 結果的に14研究が選ばれた:前向きコホート研究が1件,後ろ向きコホート研究が1件,ケースクロスオーバー試験が1件,症例対照研究が11件.
 Funnel plotが示されており(Figure 4),対称性の検定ではp=0.67(Begg test),p=0.172(Egger test)で出版バイアスは認められなかった.
4.集められた研究は,複数の評価者によって評価されたか?: 2名の評価者で独立に評価された.2名の評価者の評価が食い違った場合は3人目の評価者に相談した.
5.集められた研究は,明確な基準を持って妥当性を評価されたか?: 観察研究の質を評価する標準的な指標が確立されていないため,異質性をもたらすものとして評価するために,いくつかの重要なデザイン上の特徴を選んだ:組み入れ基準と除外基準,旅行歴の評価方法,対象患者の選択基準,マッチング基準,交絡因子のコントロール.
6.集められた研究は同質か(異質性heterogeneityが低いか)?: Cochrane QとI2統計量を用いて検討した.全体ではp<0.001,I2=70%と異質だった.
7.集められた研究の結果は統合されたか(Meta-analysis)?: 解析にはランダム効果モデルを使用している.
8.結果の評価:
主解析の結果はFigure 2にある.
旅行者の静脈血栓塞栓症の相対リスクは,全研究を通して2.0(95%CI 1.5〜2.7; p<0.001)だった.
異質性の原因は,研究デザイン(p=0.008),症例対照研究でのコントロールの選択基準(p=0.008)だった.
コントロールとして静脈血栓塞栓症の評価をして陰性だった患者を用いた6件の症例対照研究では,pooled RR 1.2(95%CI 0.9〜1.6)で有意差はなかった.
コントロールとして静脈血栓塞栓症の評価をしなかった患者を用いた5件の症例対照研究では,pooled RR 2.3(95%CI 1.8〜2.9)と有意差があった.
用量−反応関係については,Figure 3にある.
2時間旅行時間が延びる毎に18%(CI 4〜33%; p=0.010)静脈血栓塞栓症のリスクが増えるとされている.

ディスカッション:
  • コントロールとして静脈血栓塞栓症の評価をした患者としなかった患者とで,大きく異なる結果が出た.
    これは,静脈血栓塞栓症の検査をするような人ではそのリスクが一般人よりも高く,検査では見逃されて(本来は静脈血栓塞栓症が存在するのに,検査では見つからない)コントロールとされてしまうために,静脈血栓塞栓症患者とのリスクが近くなってしまうことが原因と考えられた.
  • 旅行時間が2時間延びる毎に18%静脈血栓塞栓症のリスクが増えるとされているが,直線的な増加になるのか?
    感覚的には,ある時点を境に発症率が上がり,ある程度以上の旅行時間では,発症率が頭打ちしてプラトーになると考えられる.
    極端に考えて,10分の旅行でも旅行をしないのと比較して静脈血栓塞栓症が起こりやすくなるのかと考えると,それはあり得ない気がする.
    ちなみに,過去の研究(J Gen Intern Med 2007;22:107)では,航空機搭乗が6時間以上であれば,有意に静脈血栓塞栓症のリスクが上がるとされている.
  • なぜ,Table 1で最短の旅行時間を表記したのか不明.
    平均や中央値が欲しかった.
  • Table 1では,リスクが高いものほど旅行時間が長く,航空機での旅行が多い傾向にあるように見える.
  • リスクが高いKelman, 2003の研究は,Australiaのものであるが,旅行時間が長いのが原因か?
    Case-crossover故のrecall biasなのか

 

  • Table 2にサブ解析があり,それ見るといろいろ分かる.
  • サブ解析で有意差があったのは,研究デザイン,症例対照研究でのコントロールの選択,静脈血栓塞栓症の病型だった.
  • 研究デザインの違いでは,Case-crossoverが最も高いリスクを示し,Cohortが次で,Case-controlが一番リスクが低い.
    通常は,研究デザインのレベルが下がるほどリスクが高くなるものだが,本研究では,そうなっていない.
    理由は不明.
  • 症例対照研究でのコントロールの違いでは,静脈血栓塞栓症の検査をして否定された人よりも検査をしなかった一般人の方がリスクが高かった.
    この理由は,前述の通り.
  • 静脈血栓塞栓症の病型では,深部静脈血栓症と肺塞栓症のそれぞれ単独よりも,両者のいずれかをアウトカムとした方がリスクが高くなるのは当然と考えられた.
  • その他,有意差はなかったが,次のいずれも理論的に矛盾しないと考えられた.
    研究の行った国の違いでは,ヨーロッパで一番リスクが低く,オーストラリアとニュージーランドでリスクが高かったが,これは,旅行時間の長さがバイアスになっていると考えられた.
    旅行時間も,8時間未満よりも8時間以上の方がリスクが高く,長時間の旅行では静脈血栓塞栓症が起こりやすくなった.
    旅行の手段では,地上の移動手段よりも航空機の方がリスクが高かったが,これは,移動時間の長さがバイアスになっていると考えられた.
    症例対照研究でのコントロール患者を通院患者から選んだよりも,一般人から選んだ方がリスクが高かったが,これは通院患者の方が一般人よりももともと静脈血栓塞栓症のリスクが高かったからと考えられた.

結局のところ,このレビューは使えるのか:

  • 旅行をすることが静脈血栓塞栓症のリスクになるとして,それに対してどのようにすればそれを防ぐことができるのかが分からなければ役に立たないだろう.
  • 長時間の航空機搭乗が静脈血栓塞栓症のリスクになることは,これまでも多くの研究で明らかにされてきたし,メタ・アナリシスも出ているのに,今更この結果が出てきた意義が不明.
  • やはり,旅行時間が長いほど,注意が必要である.

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