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エビマヨの会−2009年9月30日

 第12回:dabigartan(ダビガトラン)は心房細動患者の脳卒中発症予防に対してwarfarinよりも劣ることはなく出血が少ない(RE-LY)

Connolly SJ, Ezekowitz MD, Yusuf S, Eikelboom J, Oldgren J, Parekh A, Pogue J, Reilly PA, Themeles E, Varrone J, Wang S, Alings M, Xavier D, Zhu J, Diaz R, Lewis BS, Darius H, Diener HC, Joyner CD, Wallentin L; RE-LY Steering Committee and Investigators.
Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation.
N Engl J Med. 2009 Sep 17;361(12):1139-51.
PubMed PMID: 19717844.

チェックシートは はじめてトライアルシート5.5

カテゴリー: 予防
研究デザイン:
 ランダム化比較試験,非劣性試験
資金源: Boehringer Ingelheim
利益相反: Dr. Connolly reports receiving consulting fees, lecture fees, and grant support from Boehringer Ingelheim; Dr. Ezekowitz, consulting fees, lecture fees, and grant support from Boehringer Ingelheim and Aryx Therapeutics, consulting fees from Sanofi-Aventis, and lecture fees and grant support from Portola Pharmaceuticals; Dr. Yusuf, consulting fees, lecture fees and grant support from Boehringer Ingelheim and consulting fees from AstraZeneca, Bristol-Myers Squibb, and Sanofi-Aventis; Dr. Eikelboom, consulting fees, lecture fees, and grant support from Boehringer Ingelheim, AstraZeneca, Sanofi-Aventis, and GlaxoSmithKline, consulting fees and lecture fees from Eisai Pharmaceuticals, Eli Lilly, and McNeil, and consulting fees from Bristol-Myers Squibb, Corgenix Medical Corporation, and Daiichi-Sankyo; Dr. Oldgren, consulting fees, lecture fees, and grant support from Boehringer Ingelheim and lecture fees from AstraZeneca; and Drs. Parekh and Xavier, grant support from Boehringer Ingelheim. Drs. Reilly, Varrone, and Wang report being employees of Boehringer Ingelheim. Drs. Alings and Zhu report receiving consulting fees and grant support from Boehringer Ingelheim; Dr. Diaz, consulting fees from GlaxoSmithKline, lecture fees from Sanofi-Aventis, GlaxoSmithKline, and Boehringer Ingelheim, and grant support from Boehringer Ingelheim; Dr. Lewis, consulting fees from Sanofi-Aventis, Bristol-Myers Squibb, and Boehringer Ingelheim and grant support from Boehringer Ingelheim; Dr. Darius, consulting fees, lecture fees, and grant support from Boehringer Ingelheim, consulting fees from Sanofi-Aventis and Bayer Schering Pharma, and lecture fees from the Medicines Company and Eli Lilly; Dr. Diener, consulting fees and lecture fees from Boehringer Ingelheim, Abbott, AstraZeneca, Bayer, Bristol-Myers Squibb, CoAxia, D-Pharm, Fresenius, GlaxoSmithKline, Janssen Cilag, Merck Sharp and Dohme, MindFrame, Neurobiological Technologies, Novartis, Novo-Nordisk, Paion, Parke-Davis, Pfizer, Sanofi-Aventis, Sankyo, Servier, Solvay, Thrombogenics, Wyeth and Yamaguchi and grant support from Boehringer Ingelheim, AstraZeneca, GlaxoSmithKline, Novartis, Janssen-Cilag, and Sanofi-Aventis; Dr. Joyner, grant support from Boehringer Ingelheim, AstraZeneca, Sanofi-Aventis, and Bristol-Myers Squibb; and Dr. Wallentin, consulting fees, lecture fees, and grant support from Boehringer Ingelheim, consulting fees from Regado and Athera, lecture fees from Boehringer Ingelheim, AstraZeneca, and Eli Lilly, and grant support from AstraZeneca, Bristol-Myers Squibb, GlaxoSmithKline, and Schering Plough. No other potential conflict of interest relevant to this article was reported.
1.論文のPECO:
P: スクリーニングの時点か過去6ヶ月以内に心電図で心房細動が記録され,以下のうち1つ以上を持つ75歳以上か,糖尿病,高血圧症,冠動脈疾患のいずれかを持つ65〜74歳:脳卒中や一過性脳虚血発作の既往,左室駆出率40%未満,スクリーニングの6ヶ月以内に起こしたNYHA classU以上の心不全症状がある.
除外基準:重度の心臓弁膜症を持つ,発症14日以内の脳卒中,またはスクリーニングの6ヶ月以内に起こした重症脳卒中,出血のリスクがあるもの,クレアチニンクリアランスが30ml/min未満,活動性肝疾患,妊娠
E/C: dabigatran 110mg1日2回,dabigatran 150mg1日2回,ワーファリンをINR 2.0〜3.0になるように調整して投与
O: primary: 脳卒中または全身性塞栓症
   primary safety: 重篤な出血(Hb 2g/dl以上の減少,2単位以上の赤血球輸血,致命的な部位や臓器の症状のある出血と定義)
   secondary: 脳卒中,全身性塞栓症,死亡
   other: 心筋梗塞,肺塞栓,一過性脳虚血発作,入院
   primary net clinical benefit: 脳卒中,全身性塞栓症,肺塞栓,心筋梗塞,死亡,重篤な出血
aspirin(100mg/日未満)や他の抗血小板薬の使用は両群とも同等に許された.
quinidineは最初の2年間は使用が許されていたが,dabigatranとの相互作用の可能性が指摘されてからは禁止された.
2.ランダム割付けされているか?: されている,中央割付け方式(central, interactive, automated telephone system)でconcealmentもされている
3.Baselineは同等か?: 同等.ただし,喫煙,家族歴,脂質異常症の有病率についての検討がされてない
その他,全身血栓症のリスクファクターとして,癌,長期臥床なども検討されていない
4-1.ITT解析か?: ITT解析されている
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: 追跡率は99.9%((18,113-20)/18,113)
5.マスキング(盲検化)されているか?: dabigatranはマスキングしているが,warfarinはオープンラベル,ただし,primary outcomeとsecondary outcomeの評価はマスキングされている.すなわちdabigatranはマスキング,warfarinはPROBE法になっている(論文中には書いてないが)
6.症例数は十分か?: 本研究は非劣性試験であり,相対危険度の97.5%信頼区間の上限が1.46を下回っていればdabigatranの非劣性が証明できると定めて行われた.これは,過去のメタアナリシス(Ann Intern Med 1999;131:492)の結果から算出された.非劣性のマージンは,心房細動患者における抗凝固療法のメタアナリシスを元に,その95%信頼区間の上限を採用した.有意水準は片側で0.025としたが,dabigatran群は用量の異なる2群を設けたため,2つの片側検定のうち,1つのp値が0.025よりも高い場合は,統計学的有意を示すためには,もう1つのp値が0.0125未満とならなければならなかった.このため,サンプルサイズは15,000人とすると検出率は84%と計算された
7.結果の評価:
追跡期間の中央値は2.0年.
メインとなる結果はTable 2にある.

  • primary outcomeについて,非劣性の検定では,dabigatran 110mg群と150mg群の両方で有意差が出たが,優位性の検定では110mg群で有意差が出ず,150mg群で有意差が出た.
    つまり,dabigatran 110mgはwarfarinと同等の効果,dabigatran 150mgはwarfarinよりも優れるという結果である.
    脳梗塞のみで見ると,dabigatran 150mgは年1.01%,warfarinは年1.57%発症と,dabigatran 150mgはwarfarinと比較して相対リスクで34%減少,NNTは1年で179人だった.
  • primary outcomeの脳卒中+全身性塞栓症で有意差が出ているが,個々のoutcomeをみると,脳卒中では有意差があるが,肺塞栓では有意差がない.ところが,脳卒中と肺塞栓それぞれの発症率には,10倍ほどの大きな違いがある.このとき,両者を合わせて1つのoutcomeにすると,肺塞栓の発症率の違いは小さすぎて脳卒中のそれにかき消されてしまうので,肺塞栓に対する効果は評価できなくなる.つまり,この研究のデザインを設定する際に,primary outcomeとして脳卒中と全身性塞栓症を合わせて複合アウトカムにすることは不適切である.別々のoutcomeとして評価することが必要である.
  • 心筋梗塞についてはdabigatranはwarfarinよりもむしろ増える.110mg群では有意差はついていないものの35%,150mg群では38%有意に増える.肺梗塞でも有意差はないものの,dabigatranの方がwarfarinよりも増える傾向にあった.
  • 総死亡については,dabigtranは低用量でも高用量でもwarfarinよりも優れるとは証明できなかった.
<非劣性試験についての解説>
近年のRCTでは,プラセボとの比較試験を行うことが倫理的に許されなくなっており,その場合にその時点で標準的と考えられる治療を対照群として比較し臨床試験が組まれることがある.
その場合,新たな治療法が決して効果の面で優れるわけではないが,副作用が軽減できるとして期待できるものもあるだろう.
そこで用いられるのが,非劣性試験である.
これは,文字通り,介入の効果が対照に劣っていないことを証明するRCTである.
通常のRCTでは,RR=1を跨ぐかどうかで有意差があるかどうかを判定するが,非劣性試験では,RR=1の代わりに,同等性の限界(今回の研究ではRR=1.46の線)を跨がないのが有意差ありと定めて検定を行うのである(難しく言えば,介入が対照よりも劣ることを帰無仮説として,それを棄却することで非劣性を証明する).
言い換えれば,効果の信頼区間の上限がRR=1.46の線を越えなければ非劣性,超えて跨げば劣性と示すことになる.
通常,慣習的に非劣性試験では,効果の信頼区間を97.5%信頼区間で取ることが多い(通常のより厳しい基準になる).

ところで,今回取り上げたRE-LYにおいて,非劣性の検定としてはdabigatran 150mg群では<0.001で有意差ありとしているが,95%信頼区間は0.74-1.11と1を跨いでいるので,矛盾するのではないかと思う人がいるかも知れない.
通常のRCTでは,有意差がある場合は1を跨がないのであるが,非劣性試験では,帰無仮説を両群同等として検定しているので,97.5%信頼区間が同等性の限界(今回の研究ではRR=1.46の線)を跨ぐにもかかわらず,p値が小さくなって有意差が出るという事態が起こる.

非劣性試験では,サンプルサイズが重要である.
通常のRCTでは,有意差が出る場合は症例数が充分であると考えるが,逆に言えば,症例数が不十分の場合に有意差が出なくなってしまう.従って,脱落が多いほど有意差が出やすくなるので,注意が必要になる.また,ITT解析を行うことも,症例数を減らすことになるので,有意差が出やすくなる.非劣性試験では,ITT解析だけでなくper protocol解析でも評価するべきである.

  • Kaplan-Meier曲線では,拡大した場合に違いが分かるが,縦軸の最高位を1.0にすると,ほとんど1本の直線のように思われる.
    dabigatran 150mgにしても,臨床的には効果の差はないとしか思えない.
  • なお,dabigatran 110mgとwarfarinの生存曲線を見ると,20ヶ月頃まではほぼ重なっているのに対し,その後は両者は一旦離れて再度交叉する.
    いまのところ,これをもってして,dabigatran 110mgは長期投与でwarfarinよりも有効であるとする主張は見られないが,この解釈は間違いである.
    20〜30ヶ月の部分まで効果があるというのは,病態生理学的に説明不可能だからである.
    症例数が18ヶ月の時点で3/4になっているのに対し,24ヶ月の時点では半数以下になっているのでこの間の脱落が多く,もはやこの時点では両群の背景因子が同等になっていない.
    したがって,生存曲線の傾きが介入以外の要素も入ってくるため,介入の効果を純粋には表さないのである.


  • 重大な出血は,dabigatran 110mg群ではwarfarin群より有意に少なかったが,150mgでは差がなかった.
    これは,primary outcomeの結果と併せると,dabigatran 110mgでは効果はwarfarinと同様だが出血が少なく,dabigatran 150mgではwarfarinよりも効果は優れているが出血は同等ということである.
  • しかも,その内訳で致死的なものと非致死的なものを比較すると,dabigatranの方は110mgでも150mgでも非致死的なものが致死的なものより3割程度多いのに対し,warfarinではほぼ同数というのは,感覚的に違和感がある.致死的な出血はそんなに多いのか?
    重大な出血全体の年間発症率はdabigatran 110mgで2.71%,150mgで3.11%,warfarinで3.36%であり,primary outcomeである脳卒中+全身性塞栓症と比べると倍程度の発症率である.
  • 致死的な出血ではdabigatranはwarfarinより有意に少ないが,非致死的な出血では差がない.
  • 消化管出血はdabigatran使用で増える.特に150mg使用で有意に増える
    warfarinからdabigatran 150mgに変えたときの脳卒中のNNTは173であるが,これに対して消化管出血のNNHは204であるから,効果と害の大きさはそれほど変わらない.
  • 有意差のあったdabigatran 110mgとwarfarinの比較では,重大な出血はRR 20%減少,NNTは1年で154人である.
  • Net clinical benefit outcomeと全てを寄せ集めて合わせ技のoutcomeにしたのに,効果は大したことなく110mgとwarfarinの比較では有意差が出ていない.

  • 2年後の服薬中止率が,dabigatran 110mg群,150mg群,warfarin群で,20.7%,21.2%,16.6%とwarfarin群で最も少なかった.
    その理由としては,患者の希望と,重篤な副作用や消化器症状というのが,特にwarfarinと比較してdabigatranに多かった.
    warfarinの方が管理に手間がかかるのに,服薬中止率が低いというのは,何とも違和感がある.
    おそらく,マスキングされていない(マスキングされているのはdabigatranの110mgなのか150mgなのかという点だけで,dabigatranとwarfarinのどちらかは分かる)ために,dabigatran群で副作用の恐れがあったものを恣意的に脱落させているものと思われる.
  • 出血を減らすといっても,消化管出血を減らすわけではない.
  • 患者の平均CHADS2 scoreは2.1点だった.
    CHADS2 scoreの元論文(JAMA 2001;285:2864)でも,平均は2.2点なので,本研究での患者は特別ハイリスクの患者とも,ローリスクの患者とも言えないだろう.
  • warfarinのコントロールをINR 2.0〜3.0にするというのは,欧米では一般的なものであろう.
    本邦では,脳卒中ガイドライン2004の抗凝固療法の項には以下のような推奨が記載されている
      1.弁膜症を伴わない心房細動(NVAF)のある脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)の再発予防では、
        ワルファリンが第一であり、international normalized ratio(INR)2.0〜3.0が推奨される(グレードA)。
      2.リウマチ性心臓病、拡張型心筋症などの器質的心疾患を有する症例にはINR2.0〜3.0が推奨される(グレードA)。
        70歳以上のNVAFのある脳梗塞またはTIA患者では、INR 1.6〜2.6が推奨される(グレードB)。
        出血性合併症はINR2.6を超えると急増する(グレードB)。
      3.人工弁を持つ患者では、INR 2.0〜3.0以下にならぬようコントロールすることが推奨される(グレードA)
    日本で70歳以上で1.6〜2.6のコントロールが推奨されるのは,国内の研究で非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞およびTIA患者において低用量warfarin群(INR1.5〜2.1,目標1.9)と常用量群(INR 2.2〜3.5,目標2.5)では脳梗塞の再発率に差がなかったが,常用量群の高齢者で出血の副作用を認めたた比較試験の結果があったからである(もっとも,脳卒中ガイドライン2004もこの文献を根拠にしているが,それでどうして推奨がINR 1.5〜2.1ではなく,1.6〜2.6になるのか理解できない).
    さて,本研究(RE-LY研究)では,対象患者の平均年齢71.4〜71.6歳であり,この年齢の患者を対象としてINR 2.0〜3.0へのコントロールは日本人にとっては高い(本研究では,日本人患者が300例エントリーされている).
    したがって,本研究ではワーファリン群の出血リスクが国内での実際の診療よりも高く出ていると思われる.
  • warfarin群でINRが治療域にあった期間は64%だったとあるが,これは低すぎる.
    INRが低い場合には再発してしまうし,高い場合は出血しやすくなるわけであるから,そういう意味でdabigatranに有利に働くだろう.
    実際にどのようなコントロールになっていたのか知りたいところだが,INRの数値が出されていないので分からない.
(2011.6.26 第2回Student CASP Workshop in Kobeのディスカッションによる記載追加)
  • RE-LYにおける日本人サブ解析の結果(Circ J 2011;75:800)では,研究参加者全体と日本人患者とでは脳卒中+全身性血栓症,主要な出血の発症率は変わらなかった.
    dabigatran 110mg dabigatran 150mg warfarin
    Stroke or systemic embolism 1.38%/年率1.54% 0.67%/年率1.11% 2.65%/年率1.71%
    Major bleeding 5.52%/年率2.87% 3.33%/年率3.32% 3.31%/年率3.57%
    この日本人サブ解析に参加した日本人の平均年齢は71.2歳,平均CHADS2 scoreは2.2と研究参加者全体の本解析と同じだったが,脳卒中,全身性血栓症,TIAの既往は33.1%と本解析の21.8%よりも高かった.INRは他の国の患者と同様2.0〜3.0が目標だったが,70歳以上では,2.0〜2.6のコントロール目標とした.
(2012.5.10 ダビガトランの心筋梗塞に対するRCTのメタアナリシスを受けて記載追加)
  • 7件のRCTのメタアナリシス(Arch Intern Med 2012;172:397)で, OR 1.33 (1.03-1.71)とRE-LYで懸念されたとおり心筋梗塞を増やすという結果だった.対照群がactive controlなので見かけ上増えるように見えるとの主張もあるが,7件のRCTを見てみると,RE-DEEM試験というのだけプラセボ対照試験のようだ.そしてこの結果は1.72 (0.60-4.89)と有意差はついていないものの,増加する傾向である.
結局のところ,この治療法は使えるのか:
  • warfarinは服薬管理が難しく,誤服薬による再発,出血の双方が起こってしまう危険が多く,特に高齢者では使いにくかった.
    この研究の結果が本当に正しく,dabigatranが有用だとしたら,心房細動患者における脳卒中治療の適応が広がるのはメリットとなる.
  • また,INR測定は検体が採血後3時間以内に測定しないと測定誤差が大きくなるという問題点もあり,dabigatranが診療所ではモニタリング不要というのは大きなメリットかも知れない.
  • さらに,半減期はwarfarinが60.0〜132.5時間であるのに対し,dabigatranは12〜17時間であり,warfarin投与患者で行われている手術前のheparin持続投与への置き換えが不要になるというのも嬉しい.
  • しかし,使用に当たっては,以下の5つの点に注意が必要である.
    • 肺塞栓,心筋梗塞は増える可能性がある(warfarinからdabigatran低用量への切り替えで心筋梗塞は有意に増える).
    • 出血は減るとされているが,消化管出血はむしろ増える
    • モニタリング不要ということは,受診間隔が伸びる可能性が大いに考えられ,副作用発見が遅れる可能性も高くなる.また,warfarin使用中の患者では,INRが適正領域に入っていないことで服薬アドヒアランスが不良になっていることを知ることができたが,dabigatranではアドヒアランスのモニターができないことになり,服薬中止の場合の脳梗塞再発率の上昇が懸念される.
    • dabigatranには拮抗薬がないが,これは出血が起こったときに対処不能になることを意味するので,危険である.
    • 2011年8月12日に因果関係が否定できない出血による死亡が5例発生したとのブルーレターが出された.いずれも高齢者や腎障害を合併した患者,またはその両方である.投与量を110mgにしたものもあり,高齢者でも,特に腎障害を有する患者では使用を控えた方がいい
      モニタリングする方法はないとされているが,死亡した5例はいずれもAPTTが80以上に延長していた.採血不要とされているが,APTTを経時的に追った方がいいのではないか.
  • 薬価はプラザキサ75mg 132.6円,110mg 232.7円.1日薬価にすると,300mg2×で530.4円,220mg2×で465.4円である.
    warfarinが,1mg錠で9.7円,5mg錠で11.1円と格安であるので,それにモニタリングのための採血や通院費用が加わるとして,dabigatranの効果が同等で副作用が少ない,あるいは効果が優れて副作用は同等というのに加えて,モニタリングが不要というのに対して,warfarinから乗り換えるのに見合う金額はどれくらいだろうか.

(2011.8.30追記)

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