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エビマヨの会−2009年12月16日

 第15回:脂質異常症の治療において,併用療法はスタチン単独療法よりも死亡率を下げない

Sharma M, Ansari MT, Abou-Setta AM, Soares-Weiser K, Ooi TC, Sears M, Yazdi F,
Tsertsvadze A, Moher D.
Systematic review: comparative effectiveness and harms of combination therapy and monotherapy for dyslipidemia.
Ann Intern Med. 2009 Nov 3;151(9):622-30.
PubMed PMID: 19884623.

チェックシートは はじめてレビューシート3.4

背景: スタチン治療は血管疾患の予防に効果的であるが,しばしば治療目標は到達していない
カテゴリー: 予防
研究デザイン:
 システマティック・レビュー,メタ・アナリシス
資金源: Agency for Healthcare Research and Quality.
利益相反: Honoraria: M. Sharma (Merck & Co., Schering-Plough), T.C. Ooi (Oryx Pharmaceuticals, Fournier Pharma, AstraZeneca, Merck Frosst, Solvay Pharma, Schering-Plough).
1.論文のPECOは何か?:
P: 冠動脈疾患が高リスクの成人
E: 併用療法
C: 高用量スタチン単独療法
O: main outcome: 総死亡,血管死
   other clinical outcome: 心筋梗塞,急性冠症候群,脳卒中,一過性脳虚血発作,血管再建術
   surrogate outcome: ATP IIIのLDLコレステロール目標達成,LDLコレステロール値,HDLコレステロール値,頚動脈と冠動脈の動脈硬化
   harm: 重篤な副作用,癌,副作用による脱落,1つ以上の副作用イベントの発生,血清AST値,肝炎,筋肉痛,CK値が正常上限の10倍以上,横紋筋融解症
2.全ての研究を網羅的に集めようと努力したか?: 
 @検索に用いた文献データベースは?: MEDLINE(1966〜2009年5月),EMBASE(1980〜2009年5月),the Cochrane library(2008年第3版),Scupus(8つの専門家が推薦した論文が引用されている参考文献を検索するため),the U.S. Food and Drug Administration statistical and medical reviews of drug applications,インターネット.
 Aどのような検索語で,どの期間の研究を調べたか?: 
   検索語: はっきりと明示されていない.これはfull technical reportである参考文献14でも示されていない.ただ,検索されたと考えられる薬剤はstatin,bile-acid sequestrants,fibrates,ezetimibe,niacin,ω-3 fatty acids.さらにRCTのみに限定している.
   期間: 一部のデータベースに関しては,各データベースの項に記載.それ以外は不明.
 B個々の論文の参考文献まで追跡して調べたか?:不明.
 C個々の研究者や専門家に連絡を取ったか?: 取った.鍵となる質問に関連する追加の未出版データについては,関係する著者に連絡を取った.
 D出版されていない研究も探したか?: 探した.出版されている情報もいない情報も,Oregon Evidence-based Practice Center's Scientific Resource CenterからAbbott,AstraZeneca,Merck/Schering-Plough Pharmaceuticalsに請求された.
 E同じ研究が複数報告されていないか?: 同じ研究が報告されたかどうかの記載はないが,統合する際に,同じ研究を複数でカウントすることは避けたと明記されている.
 F英語以外で書かれた研究も探したか?: 英語のみを対象.
3.全ての研究が網羅的に集められたか?: 評価されていない.Funnel plotも示されていない.
4.集められた研究は,複数の評価者によって評価されたか?: 2名の評価者で独立に評価され,結果が食い違う場合は,話し合いで合意を形成した.
5.集められた研究は,明確な基準を持って妥当性を評価されたか?: 研究の質は,予め決められた基準によってgood,fair,poorに評価されたが,その基準については書かれていない.さらに,Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation approachを用いて,総死亡,血管死,Adult Treatment Panel III (ATP III) 目標達成,重篤な副作用についてのエビデンスの強さを評価した.
6.集められた研究は同質か(異質性heterogeneityが低いか)?: heterogeneityがない場合に結果を統合した.
7.集められた研究の結果は統合されたか(Meta-analysis)?: heterogeneityがない場合に結果を統合した.
8.結果の評価:

死亡: statin−ezetimibeとstatin-fibrateと高用量statin単独療法を比較した,3件の質がfiarとpoorのRCTでは高リスク患者での総死亡を報告していたが,血管死については検討されていなかった.死亡は稀であり,治療による違いは分からなかった.
14件の短期間の質がfairの試験のメタアナリシスでは,さまざまな用量と種類のstatinとezetimibeの組み合わせとstatin単独療法の比較を,高リスク患者で行ったが,OR 0.61(0.22-1.71)で有意な違いはみられなかった.
患者のリスクと用量で制限をしない解析では,質がfairの3つの試験のメタアナリシスで,statinとω-3 fatty acidsの組み合わせは,OR 1.08(0.91-1.28)で有意な違いは見られなかった.

他の臨床アウトカム: 強力な脂質低下療法が必要となる患者で,心筋梗塞,脳卒中,一過性脳虚血発作,血管再建術について,複合治療と高用量statin単独療法を比較した研究はなかった.
2件のstatin−ω-3 fatty acidsの研究では,致死的なMIはOR 0.73(0.34-1.58)で有意な違いがなかった.

重篤な副作用: statin−ezetimibeと高用量statin単独療法を比較した3つの短期間の質がfairな試験では,重篤な副作用は5%で生じたが群間では有意な違いはなかった(OR 1.64(0.85-3.19)).
27件の質がfairの試験のメタアナリシスでは,statinの用量を制限しなければ,副作用の発生率に有意な違いはなかった(OR 1.08(0.88-1.33)).

癌発生: 質がfiarの5年間のstatin−ω-3 fatty acidsの試験では,癌発生は3%だったが,群間では有意な違いはなかった.
2件の24〜48週のstatin−ezetimibeの試験では,癌発生率は1%だったが,群間では有意な違いはなかった.

ATP III LDLコレステロール目標達成: 厳格なLDL低下療法が必要な患者を対象とした,2件の質がfairのstatin−ezetimibeと高用量statin単独療法を比較した研究のメタアナリシスでは,併用療法で目標達成率が有意に高かった(OR 7.21(4.30-12.08)).

LDLコレステロールレベル: 厳格なLDL低下療法が必要な患者を対象とした,2件の質がfairのstatin−ezetimibe試験では,いずれも併用療法群で10〜20%の追加の低下がみられた.
低用量statinでの比較研究では,6件の質がfairのstatin-ezetimibe研究で高用量statin単独療法と比較して3〜20%のLDL追加低下効果が得られた.
各研究のまとめはFigureにある.
35件の質がfairの患者のリスクとstatin用量で制限をしなかったstatin−ezetimibe試験のほとんどでは,4〜27%のLDL追加低下効果が得られた.

HDLコレステロール値: 5件の質がfairのRCTのメタアナリシスでは,statin−ezetimibeと高用量statin単独療法のHDLコレステロール値の変化の違いは0.31%(-0.89-1.52%)で有意な違いはなかった.

動脈硬化の測定: 1件のsimvastatin−ezetimibeと同用量のsimvastatin単独療法を比較した試験では,頚動脈の内膜厚(IMT)の変化の差は0.01mm(-0.01-0.02)だった.
厳格な脂質低下療法が必要な患者を対象とした,さまざまなstatinとniacinを併用した別の試験では,IMTに有意な違いはなかった(閉僅差-0.03mm(-0.06-0.003)).

治療のアドヒアランスと害: 併用療法と高用量statin単独療法を比較したエビデンスは,statin−ezetimibeの5つの短期間の試験のみで,副作用とAST値が正常上限の3倍以上による脱落において,群間に有意な違いはなかった.
さまざまなstatinの種類と用量による10件の試験のメタアナリシスでは,statin−niacineの方がstatin単独療法よりも副作用による早期脱落の率が有意に高かった(OR 2.38(1.63-3.47)).
1つ以上の副作用が起こった患者はstatin−bileacid equestrantの複合でより多かった(OR 2.19(1.28-3.75)).
あらゆる併用療法とstatin単独療法の間で,AST値の上昇,肝炎,CK値上昇,筋肉痛は違いがなかった.
27件の試験で横紋筋融解症は発生しなかった.
ディスカッション:
  • この論文は,普通のSR/MAの論文と書き方が違っていて,読みにくい.
  • 集められた研究の質が,全体的に低い.
  • 網羅的に集められたか不明であるのが気になる.
  • 論文に唯一載っているFigureがLDLコレステロール低下効果についてのものというのは,statin-ezetimibe併用療法の効果を良く見せる意図があるように思わせられる.
  • 効果だけでなく,害についても有意差はないが,ORの点推定値が1を超えているので,どちらかというと併用療法で害が増える傾向にあるといえる.
    一般的に害は発生率が低いので,もっと症例数を増やせば有意差が出る可能性がある.

結局のところ,このレビューは使えるのか:

  • LDLコレステロールを下げるという効果しかなくて,患者にとって真のアウトカムは何も変えないなら,併用療法を行う必要性はない.
  • むしろ,害は増える可能性があるので,避けるべきだろう.
  • 脂質低下療法は,statin単独療法の一辺倒が良い.
  • そういった意味では,これまでの診療行動を変えるようなものではない.

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