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エビマヨの会−2010年1月6日

 第16回:良くある疾患のリスクに対して家族歴は感度が低く特異度が高い

Wilson BJ, Qureshi N, Santaguida P, Little J, Carroll JC, Allanson J, Raina P.
Systematic Review: Family History in Risk Assessment for Common Diseases.
Ann Intern Med. 2009 Dec 15;151(12):878-85.
PubMed PMID: 19884616.

チェックシートは はじめてレビューシート3.4

背景: プライマリケア診療の現場において,ルーチンで家族歴を聴取することの有用性についてはよく分かっていない
カテゴリー: 病因,診断
研究デザイン:
 システマティック・レビュー,メタ・アナリシス
資金源: Agency for Healthcare Research and Quality.
利益相反: Honoraria: B.J. Wilson (McMaster Evidence-based Practice Center), N. Qureshi (McMaster Evidence-based Practice Center), J. Little (McMaster Evidence-based Practice Center), J.C. Carroll (McMaster Evidence-based Practice Center), J. Allanson (McMaster Evidence-based Practice Center).
1.論文のPECOは何か?:
P: 一般人
E: 家族歴を聴取する
C: 家族歴を聴取しない
O: 利益,害,それぞれの疾患を予測,患者の申告の正確度
本レビューでは,the National Human Genome Research Instituteとthe Office of Medical Applications of Research of the National Institutes of Healthのパネルが作成した6つのリサーチクエスチョンのうち,以下の4つを扱った.
question 1.家族歴を聴取することが患者や家族の健康アウトカムを改善するという直接のエビデンスは何か
question 2.家族歴を聴取することが患者や家族の害のアウトカムを引き起こすという直接のエビデンスは何か
question 3.プライマリケアの現場で良くある疾患のリスクを評価するために鍵となる家族歴の要素は何か
question 4.家族歴はどれくらい正確か,またどのような状況で正確度が変わるか
2.全ての研究を網羅的に集めようと努力したか?: 
 @検索に用いた文献データベースは?: MEDLINE,EMBASE,CINAHL,Cochrane Central Register of Controlled Trials,PsycINFO.
 Aどのような検索語で,どの期間の研究を調べたか?: 
   検索語: 
   question 1,2に対しては,ランダム化比較試験,非ランダム化試験,前後試験に制限した
   question 3に対しては,後ろ向きと前向きのコホート研究と横断研究に制限し,乳癌,結腸直腸癌,卵巣癌,前立腺癌,肺癌,冠動脈疾患,脳卒中,糖尿病に制限した
   question 4に対しては,研究デザインの制限をしなかった.
   期間: 1995年〜2009年3月2日.
 B個々の論文の参考文献まで追跡して調べたか?:調べた.
 C個々の研究者や専門家に連絡を取ったか?: 不明.
 D出版されていない研究も探したか?: 不明.
 E同じ研究が複数報告されていないか?: 不明.
 F英語以外で書かれた研究も探したか?: 英語のみを対象.
3.全ての研究が網羅的に集められたか?: 評価されていない.Funnel plotも示されていない.
4.集められた研究は,複数の評価者によって評価されたか?: 1名以上で評価したとしか書かれていない.
5.集められた研究は,明確な基準を持って妥当性を評価されたか?: question1,2では,RCTにはJadad scales,それ以外の介入研究では決まった妥当性のある評価基準がないので抽出とアウトカムのバイアスについて批判的吟味した.question 3該当する既存のスケールが見つからなかったため,選択と情報バイアスの妥当性を評価する質問のチェックリストを作成して評価した.question 4はQUADASを用いて研究の質を評価した.
6.集められた研究は同質か(異質性heterogeneityが低いか)?: heterogeneity
7.集められた研究の結果は統合されたか(Meta-analysis)?: 統合しなかった.その理由は以下の通り.
    question 1,2については研究数が十分ではなかった.question 3については多くの観察が独立ではなかった.question 4については研究間の異質性が高く,幾つかの疾患群では研究が不十分であり,変数の測定漏れがあった.
8.結果の評価:

question 1: 家族歴を聞くことで,行動変容に繋がった.乳房の自己診察率と診察受診率が上がったが,マンモグラフィー施行率は上がったものの有意差がなかった.

question 2: 家族歴を聞くことで,1,2週後の不安スコアは上昇したが,3ヶ月後には違いはなくなった.癌を心配するのは全体では違いがなかったが,ハイリスク患者(その後の専門家の評価で低リスクとなった)では癌を心配するスコアが上昇した.

question 3: 疾患のリスクを見つけるためには感度0〜0.51,特異度0.66〜1.00,現在の疾患を見つけるためには感度0〜0.83,特異度0.48〜1.00だった.

question 4: 癌の家族歴の特異度は0.91〜1.00だったが,感度は癌の種類によって違いが大きく,信頼区間も広かった.糖尿病,高血圧,心血管疾患の家族歴は,感度が0.18〜0.89,特異度は0.76〜0.98だった.正確度は年齢,性別,教育レベルでは関係なかった.
ディスカッション:
  • 重要な情報は論文の本文中になく,webにあるSupplementary Materialに載っている
  • 本研究では,1親等では家族歴がないというのが正確度が高いとしているが,Framingham off spiring study(Ann Intern Med 2004;140:434)では,家族歴は感度が低く,特異度が高いと報告しており,概ね一致する.
  • 動脈硬化性疾患は,癌と比較して感度も特異度も低い傾向にあるが,これは実際の診療での印象に一致する.
    家族が癌と言われたら大抵は覚えているだろうが,家族が糖尿病だったかどうか覚えていないことも多いだろう.
    驚くべきことは,動脈硬化性疾患の家族歴は,特異度も癌よりも低い傾向にあることである.
    つまり,家族歴聴取で父親が糖尿病だったと言っても,実はなかったということがありうるのである.
  • AbstractのData Synthesisのところの最後には,”Twenty-three studies suggested that absence of disease in relatives was mor accurately reported than presence of disease (23の研究では,疾患がないことは疾患があることよりも正確に家族歴を導き出す)”と示されているが,一見これが分かりにくい.
    これは感度が低く特異度が高いことの説明だが,私たちは”普段家族歴聴取の結果(検査結果に相当)からみて,家族歴ありといわれたら実際にその家族に既往がある可能性が高いが,家族歴無しといわれても本当に既往がないのか分からない”と説明するのが一般的である.
    恐らく研究者の視点での説明の方法なのだろう.

結局のところ,このレビューは使えるのか:

  • 家族歴は感度が低く,特異度が高いので,繰り返し,できれば複数の人から家族歴を聴取するべきである.
  • 家族歴を聞くことが,病気に対する意識を高める可能性はあるが,一方では一時的に不安を引き起こすことにも留意すべきである.

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