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エビマヨの会−2010年3月24日

 第20回:23価肺炎球菌ワクチンは施設入所者であれば肺炎を減らすが,死亡率は減らさない

Maruyama T, Taguchi O, Niederman MS, Morser J, Kobayashi H, Kobayashi T, D'Alessandro-Gabazza C, Nakayama S, Nishikubo K, Noguchi T, Takei Y, Gabazza EC.
Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial.
BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004.
PubMed PMID:20211953; PubMed Central PMCID: PMC2834887.

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背景: 施設入所者にとって,肺炎は罹患率,死亡率が共に高い疾患であり,その中でも,肺炎球菌は最も多い起炎菌である.それにも関わらず,23価肺炎球菌ワクチンの接種率は低い.また,ワクチン接種によりハイリスク集団における侵襲性肺炎球菌感染症の罹患率は減らせるが,施設入所者を対象とした23価肺炎球菌ワクチンの効果については不明である.
カテゴリー: 予防
研究デザイン:
 ランダム化比較試験
資金源: This study was funded by a grant in aid from the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology of Japan. The funder had no role in study design, data collection, data analysis, data interpretation, or writing of the manuscript.
利益相反: None declared.
1.論文のPECO:
P: 施設入所者
   除外基準: 免疫抑制状態にある患者(骨髄腫,活動性悪性疾患,好中球<1.0×109/L,低γグロブリン血症,HIV感染,固形器官や骨髄の移植,透析中),コンプライアンスの低い可能性のある患者(研究の指示に従えない患者),肺炎球菌ワクチン接種歴のある患者,ワクチン内容物に過敏反応のある患者
E: 23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(Pneumovax, Merck NJ)0.5ml(25microg含有),筋注
C: プラセボ0.5ml,筋注
O: primary: 肺炎(臨床症状と胸部レントゲンでの新規の浸潤影),肺炎球菌肺炎(血培,胸水,喀痰が陽性,または尿中肺炎球菌抗原陽性)
   secondary:肺炎球菌肺炎による死亡,総死亡,他の原因による死亡
肺炎発症の見逃しをなくすために,週1回施設で診察をして評価し,肺炎が疑われたら,関連病院に移送した.
呼吸器科の医師が臨床症状と胸部レントゲンでの新規の浸潤影により肺炎と診断した.
肺炎球菌肺炎は血培,胸水,喀痰が陽性,または尿中肺炎球菌抗原陽性で診断した.
2.ランダム割付けされているか?: されている,研究チームでない統計学者が,乱数表を用いてランダム割り付けを行っており,施設でマスキングしたスタッフにより患者の組み入れが行われているので,concealmentもされている
3.Baselineは同等か?: 本文中に書かれていないが,ほぼ同等
ただし,対象患者の平均年齢が85歳と高齢で,肺炎の原因として嚥下障害が大きな割合を占めるが,その原因となる脳卒中やパーキンソン症候群などの神経疾患の割合についてはTable 1をみてもよく分からない,また肺炎の既往のある患者や喘息患者,アルコール中毒,脾摘後の患者は繰り返しやすいと考えられるが,そのデータもない
4-1.ITT解析か?: はっきり書かれていないが,表の数値から見るに,恐らくITT解析されている
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: Figure 1より,脱落者はいないものとも思われる.したがって,追跡率は100%
5.マスキング(盲検化)されているか?: 四重盲検.患者,医師,outcome評価者,統計学者がマスキングされている
6.症例数は十分か?: 
 有意差があるので,症例数は十分足りている
 計算された症例数: 両群で700人
 治療効果の大きさ: 約50%
 α level: 5%(両側)
 検出力: 80%
7.結果の評価:
観察期間は,ワクチン群で1140人年(平均2.27年),プラセボ群1149人年(平均2.28年).
結果の表はTable 2にある.
肺炎球菌性肺炎と全肺炎が有意に減少した.
 肺炎球菌性肺炎: RR 0.375,RRR 0.625,ARR 0.02/yr,NNT 50/yr
 全肺炎: RR 0.60,RRR 0.40,ARR 0.036/yr,NNT 28/yr
 いずれも,それなりに効果が大きいと思われる.
非肺炎球菌性肺炎には両群で有意差がなかった.


肺炎球菌性肺炎と全肺炎のKaplan-Meier曲線では,両群に有意の差があった.
ただ,縦軸が途中で切れていることに注意.
0〜1.00まで連続して表示すると,どちらのグラフも2つの曲線の差は極めて小さくなる.

総死亡は,ワクチン群で89人(17.7%),プラセボ群で80人(15.9%)で,HR 1.119(0.827〜1.513)で有意差はなかったが,死亡率が上がる可能性がある.

Table 3は,肺炎による死亡に対するワクチンの効果を見たものである.
肺炎による死亡については,肺炎球菌性肺炎でのみ有意差があったが,これは発症数が少ないので,バイアスを含んでいる可能性がある.

ディスカッション:

  • 年齢の分布に群間の差がありそうだが,平均年齢では84.7歳と84.8歳で同じと言えるので,年齢の分布によるバイアスはないだろう.
  • これまでの研究では,肺炎球菌性肺炎は減らせても,肺炎全体は減らせなかった.
    ましてや,総死亡を減らせることは全くなかった.
    本研究で肺炎球菌性肺炎のみならず全肺炎が有意に減ったのは,2009年のメタアナリシス(CMAJ 2009;180:48)など,これまでの研究結果と矛盾する.
    CMAJのメタアナリシスには,死亡のRRについての記載はあるが,死亡率そのものについての記載がない.死亡率についてのデータがある過去のRCT(NEJM 2003;348:1747)を見ると,総死亡は1000人年あたりワクチン群42.0人,プラセボ群50.1人である.
    本研究における総死亡者数は,ワクチン群89人,とプラセボ群80人だったが,曝露期間は1140人年と1149人年なので,1000人年当たりに直すと78人と70人になり,本研究の方がリスクの高い患者を対象としていることが分かる.
    したがって,本研究で全肺炎が有意に減ったのは,死亡率の高いハイリスク患者だったためと考えられる.
    ちなみに,NEJMの研究では,施設入所者は1.9%と2.9%と本研究より少なかった.
    施設入所者は同じ年齢の人より健康状態が悪いと考えられるので,そういう点でも本研究の方が重症患者が集まっていたと考えられる.
  • 肺炎は施設入居者間で感染するものなので,施設内でランダム割り付けをするのではなく,施設ごとにランダム割り付けをしたら,もっと大きな効果が出た可能性がある.

結局のところ,どうすればいいのか:

  • 本論文のintroductionにもあるように,外来に通院してくるような通常の高齢者に肺炎球菌ワクチンを接種しても,肺炎を予防することは期待できないだろう.
  • この程度の効果で,自分から患者に接種を勧めるというのは,難しい.
    情報提供という意味で,肺炎球菌ワクチンというのがありますよと言うことはできるが,自分があまり効果を信じていないのに,それで患者が過度な期待を持ってしまうと,自分の意図と反する結論になる.
  • 比較的肺炎のリスクの高い施設入所者に打つ分には効果を期待できるかも知れない.
    その際は,同一施設入所者全員に接種した方が最大の効果が期待できると考えられる.

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