QLOOKアクセス解析

 


English version is here.

Contents

EBMについて
   一般向け
   医療従事者向け
各地のEBM勉強会紹介
pES club(学生EBM勉強会)
エビマヨの会(EBM抄読会)
なんごろく(診療のTips)
EBM関連イベント
資料集
管理人プロフィール
リンク集
更新履歴
アンケート
  ↑ご協力下さい!
お問い合わせ先


アンケートにご協力を!

ご感想をお寄せ下さい

このページへリンクを張る際は,
お手数ですが
管理人
までご一報ください

 ホーム > エビマヨの会 >

エビマヨの会−2011年1月26日

 第23回:軽度の症状を呈する収縮期心不全患者へのeplerenone(エプレレノン)投与は死亡率を減らす(EMPHASIS-HF)

IZannad F, McMurray JJ, Krum H, van Veldhuisen DJ, Swedberg K, Shi H, Vincent J, Pocock SJ, Pitt B; EMPHASIS-HF Study Group.
Eplerenone in patients with systolic heart failure and mild symptoms.
N Engl J Med. 2011 Jan 6;364(1):11-21. Epub 2010 Nov 14.
PubMed PMID: 21073363.

チェックシートは はじめてトライアルシート6.0

カテゴリー: 予防
研究デザイン: ランダム化比較試験
資金源: Supported by Pfizer.
利益相反: Dr. Zannad reports receiving fees for serving on the board of Boston Scientific, consulting fees from Novartis, Takeda, Astra-Zeneca, Boehringer Ingelheim, GE Healthcare, Relypsa, Servier, Boston Scientific, Bayer, Johnson & Johnson, and Resmed, and speaker’s fees from Pfizer and AstraZeneca and that his institution receives grant support from BG Medicine and Roche Diagnostics on his behalf. Dr. McMurray reports receiving grant support from the Eugene Braunwald Endowment for the Advancement of Cardiovascular Discovery and Care. Dr. Krum reports receiving travel reimbursements from Pfizer. Mr. Shi and Dr. Vincent report being employees of Pfizer and receiving stock options and travel reimbursements from Pfizer. Dr. Pocock reports receiving consulting fees from Servier, Amgen, AstraZeneca, and Novartis and that his institution receives grants from Servier and AstraZeneca on his behalf. Dr. Pitt reports receiving fees for serving on the board of Novartis, consulting fees from Takeda, AstraZeneca, Boehringer Ingelheim, GE Healthcare, Relypsa, BG Medicine, Nile Therapeutics, Merck, Forest Laboratories, and Novartis, grant support from Forest Laboratories and Novartis, and stock options from Relypsa, BG Medicine, Nile Therapeutics, and Aurasenc and that his institution receives grant support from Forest Laboratories on his behalf and he and his institution receive grant support from Bayer. No other potential conflict of interest relevant to this article was reported.
1.論文のPICO:
P: inclusion: 55歳以上で,NYHA機能クラスUの症状を呈する,左室駆出率≦30%(または,30〜35%の場合は,心電図上QRS幅が>130msec)で,ACE阻害薬,ARBのいずれかまたはその両方と,β遮断薬(禁忌でない限り)を推奨される用量か最大耐容用量で使用している患者
   exclusion: 急性心筋梗塞,NYHAクラスV,Wの心不全,血清カリウム>5.0mmol/L,eGFR<30ml/min/1.73m2,カリウム保持性利尿薬を必要としている,他の有意な合併症を持っている
E: eplerenone,25mg 1日1回から開始し,4週後に50mg 1日1回に増量(eGFRが30〜49ml/min/1.73m2の場合は25mg確実から開始し,25mg毎日に増量する),血清カリウムレベルが5.0mmol/L以上にならないようにした
C: placebo
O: primary: 心血管死と心不全による最初の入院の複合アウトカム
   secondary: 心不全による入院と総死亡,総死亡,心血管死,全入院,心不全入院,その他
ランダム割り付けは6ヶ月以内に心血管疾患で入院した場合に行った.
スクリーニングの6ヶ月前に心血管疾患で入院していない場合は,BMPが250pg/ml以上か,N端pro-BNPが男性で500pg/ml以上,女性が750pg/ml以上ある場合に組み入れられた.
2.ランダム割付けされているか?: されている
”computerized randomization system”と単数形なので,中央割り付け方式と思われる.
concealmentもされている.
3.Baselineは同等か?: ほぼ同等.
DMの有病割合が異なるが,これは,eplerenone群が33.7%,placebo群が29.1%なので,eplerenone群に不利な状況である.そのため,eplerenoneの効果は過小評価されるので,特に問題はないと考えられる.
その他に考えるべき因子:他の薬の服薬状況,どれだけ水を飲んでいるか,運動しているか.
4-1.ITT解析か?: ITT解析されている
割り付け時は,eplerenone群1364人,placebo群1373人で,解析時はTable 2にあるように,同数が解析されている.
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: ない.追跡率は(2737-17-15)/2737=98.8%
5.マスキング(盲検化)されているか?: 4重盲検.
患者と医師はマスキングされている.
Outcomeの評価は独立した委員会で予め決められた基準に従い行われている.
統計学的解析は,研究のスポンサーであるPfizer社にいる独立した統計学者によって行われている.
どうして,スポンサーが統計解析を担当しているのか,理解に苦しむ.
6.症例数は十分か?:
 有意差があるので,症例数は十分足りている
 計算された症例数: 2584人
 プラセボ群での年発症率: 18%(CHARM-Addedのサブグループ解析のデータによる)
 治療効果の大きさ: 18%(48ヶ月で813人がprimary outcomeを発症)
 α level: 5%(両側)
 検出力: 80%
本研究では,271人と542人のイベントが発症した時点での中間解析でeplerenoneの優位性が示されたため,中断された.
イベント発症数が500人を越えている場合は,早期中止による効果の過大評価はそれほど大きくないと思われる.
7.結果の評価:
追跡期間は中央値21ヶ月.
高用量(50mg)を投与することができた割合は,eplerenone群60.2%,placebo群が65.3%だった.
治療薬を中断した割合は,eplerenone群が16.3%,placebo群が16.6%と変わらなかった.
メインとなる結果はTable 2にある.
複合エンドポイントであるprimary outcomeで調整済みHR 0.63と有意に減った.
Secondary outcomeとして設定されている個別のアウトカムでも,ほとんどが有意に減っている.

  • サブ解析では,全ての項目で交互作用が見られない.
    しかし,個々の項目を見ると,有意差が見られなくてもハザード比が大きく異なる要素がある.
    ランダム割り付け時にβ遮断薬を使っている人の方がeplerenoneの効果が大きい.
    スクリーニング6ヶ月前に入院の既往のあることで組み入れられた患者よりも,BNPやpro-BNPの基準で組み入れられた患者の方がeplerenoneの効果が大きい.
    これは,最近心不全が増悪した患者よりも,慢性に経過している患者の方が有効であることを示すものかも知れない.

結局のところ,この治療法は使えるのか:
  • 対象患者がLVEF<30%であるのにNYHAクラスU度の症状を呈する程度なので,比較的慢性的に経過した患者での研究だろう.
    本剤を使用する際には,急性心不全ではなく,心不全がある程度コントロールされた状態で使用を開始するべきである.
  • Spinorolactoneとの使い分けはどうすればいいか.
    Spironolactoneの心不全に対する効果は,RALES(N Engl J Med 1999;341:709)によると26% vs 36%で,RRR 28%であるので,単純比較はできないものの,eprelenoneの方が効果が大きいと考えられる.
    しかも,spironolactoneは,男性の10%に女性化乳房が起こる.
    ただし,RALESでは,LVEF<35%のNYHAクラスV,Wの症状を呈する患者を対象としているので,患者が異なる点に注意する必要がある.
    決して,spironolactoneの代用薬ではない.
  • 本研究では,既にACE阻害薬やARBとβ遮断薬を服用している患者を対象に行っている.
    したがって,eprelenoneを使用しようという場合は,ACE阻害薬やβ遮断薬を使用した上で使用を検討するべきである.
    LVFE<35%のNYHAクラスUの患者でRAS系薬剤とβ遮断薬を服用している患者に限定してeplerenoneを使用しようとすると,かなり適応は限定される.
    特に,高カリウム血症の発症率はRALESよりも高いので,注意が必要である.
    心不全患者全般に無差別的に使用されるとSpinorolactoneが濫用されて高カリウム血症が頻発した時の二の舞になるのが危惧される.
  • 薬価は,セララ錠が25mgで47円,50mgで89.5円,100mgで170.7円である.
    これに対して,アルダクトンAが25mg錠で23.4円,50mg錠で48.9円であるので,eprelenoneの方が4倍ほど薬価が高い.

コメント:

※エビマヨの会のディスカッションの内容について,ご意見のある方は,是非こちらまでお寄せ下さい.ご了解が得られれば,ご意見をコメント欄に掲載させていただきます(匿名可).
また,管理者は著作権は保持します.引用は自由ですが出典を明記してください.また,可能でしたら,ご利用前に一度ご連絡をお願いいたします.




Copyrights(c)2004- Eishu NANGO
All rights reserved
禁無断転載