English version is here.

Contents

EBMについて
   一般向け
   医療従事者向け
各地のEBM勉強会紹介
pES club(学生EBM勉強会)
エビマヨの会(EBM抄読会)
なんごろく(診療のTips)
EBM関連イベント
資料集
管理人プロフィール
リンク集
更新履歴
アンケート
  ↑ご協力下さい!
お問い合わせ先


アンケートにご協力を!

ご感想をお寄せ下さい

このページへリンクを張る際は,
お手数ですが
管理人
までご一報ください

 ホーム > なんごろく >

なんごろく−糖尿病性細小血管障害

糖尿病性網膜症 diabetic retinopathy;DR (最終更新2012/4/26)
 糖尿病性網膜症がある場合の血糖コントロール (最終更新2012/4/26)
糖尿病性腎症 diabetic nephropathy
 糖尿病性腎症の病期分類 (最終更新2014/1/10)
 糖尿病性腎症における尿検査の考え方 (最終更新2011/5/30)
 糖尿病性腎症の治療 (最終更新2010/5/3)
糖尿病性神経障害 diabetic neuropathy
 Italian Society of Diabetologyの神経障害症候質問紙:症状によるスクリーニング法 (最終更新2010/5/6)
 128Hz音叉(振動覚) (最終更新2010/5/6)
 5.07 Semmens-Weinstein monofilament: SWMF(モノフィラメント:圧覚) (最終更新2010/5/6)
 身体所見の組み合わせによるスクリーニング法 (最終更新2010/5/6)
 Michigan Neuropathy Screening Instrument(MNSI):身体所見によるスクリーニング法 (最終更新2011/5/8)

 糖尿病性網膜症 diabetic retinopathy: DR (最終更新2012/4/26)

糖尿病性網膜症の進行度は,福田分類を用いて行います.

A.単純型網膜症 A−T:毛細血管瘤、点状出血
A−U:しみ状出血(少数の硬性白斑を認めるものも含む)
A−V:陳旧狭細化した新生血管
A−W:古い硝子体出血(半年以上再出血がないもの)
A−X:古い増殖性病変(半年以上再増殖を起こさないもの)
B.増殖型網膜症 B−T:静脈内細小血管異常,検眼鏡的に認められる静脈拡張,びまん性網膜浮腫,
     軟性白斑,線状出血(確定診断は蛍光眼底造影による)の多発
B−U:乳頭(視床下部内.以下同様)に直接連絡しない新生血管
B−V:乳頭に直接連絡する新生血管,乳頭及び周囲網膜の広範な浮腫
B−W:新生血管からの硝子体出血(最終出血後半年以内のもの)
B−X:進行性の増殖組織
C.合併症 Y:網膜の分離または剥離
M:黄班部に浮腫,出血,硬性白斑が特に集中したもので,A,Bいずれの型にも合併しうる.
  視力低下が著しい.(黄班症)
G:虹彩ルベオーシス(血管新生),血管新生緑内障N:虚血性視神経症

明らかな網膜症が指摘されていなくても,年1回は眼科専門医に依頼して眼底チェックします.
網膜症が存在するときには,眼科専門医の指示のもと,必要に応じて3〜6ヶ月毎にfollowします.

糖尿病性網膜症がある場合の血糖コントロール (最終更新2012/4/26)

明らかな網膜症が存在する場合は,血糖コントロールを厳格にすると網膜症が増悪するので,最初の1年半は血糖コントロールを甘くした方が良いとされています.
これは,1型糖尿病患者を対象に血糖の厳格なコントロールと従来型の甘いコントロールを比較したDCCT(NEJM 1993;329:977)の結果から示唆されました.
軽度の単純性網膜症(微小動脈瘤と軽度から中程度の網膜出血または硬性白斑)のある患者(Figure 2A)では,最終的に厳格なコントロールを行った方が網膜症の発症は有意に減りますが,最初の1〜2年は厳格なコントロールをすると,かえって網膜症の発症率が上がってしまいました.
一方,網膜症のない1型糖尿病患者(Figure 2B)ではこのような現象は見られず,一貫して血糖の厳格なコントロールを行った方が網膜症の発症率が有意に減りました.
なお,この研究での血糖コントロールは,厳格なコントロール群がHbA1c 7%程度,従来型の甘いコントロール群がHbA1c 9%)程度でした.
これを踏まえて,糖尿病性網膜症がある場合には,最初の1〜2年の血糖コントロールはHbA1c 9.0%に甘くコントロールし,それ以降はHbA1c 7.0%程度に厳格なコントロールをするという戦略が考えられます.
ただ,これはあくまでDCCTの結果を踏まえて採るとよいと考えられる戦略であり,この戦略の通りの血糖コントロールを行って,実際に期待通りに最初の1〜2年は従来型の甘いコントロール群の生存曲線に従い,2年目以降からは厳格なコントロール群の生存曲線に従うかどうかは分かりません.
最初の2年の甘い血糖コントロールの影響が2年目以降に残存しないとは言えないからです.
ただ,これ以外に参考となるエビデンスがないので,現時点では,この戦略を採るのが妥当と言えるでしょう.

 糖尿病性腎症 diabetic nephropathy

糖尿病性腎症の病期分類 (最終更新2014/1/10)

2013年12月,糖尿病性腎症合同委員会は,CKDの概念・CKD重症度分類の普及などを受け,糖尿病性腎症病期分類の改訂を行いました.
主要変更点は下記の通りです.
 1. 分類自体は現行(2013年以前の)の分類を踏襲したが,CKD重症度分類の普及に鑑み,付表を作成した.
 2. 病期分類に用いるGFRをeGFRに変更した.
 3. 現行の分類の3期AとB(顕性腎症前期・後期)の区分は行わないこととした.
 4. 尿アルブミン値の程度に拘らず,GFR 30 ml/分/1.73m2未満を全て腎不全とした.
 5. 括弧内の文言(早期腎症など)を削除する案も検討しましたが,広く認知されていることに鑑み,今回は残すことにした.
 6. いずれの病期も鑑別診断の重要性を強調した.

さらに,これまでは蓄尿でのアルブミン尿,蛋白尿の定量も併記されていましたが,改定後は特に蓄尿と随時尿(スポット尿)の区別がなされなくなりました.正確性を期するならば,蓄尿で測定した値を尿中Crで標準化するのが望ましいことになります.随時尿を用いるならば,早朝第一尿で測定するのが良いです.夜間に膀胱内に溜まる尿量が多いので,平均化されてより正確な値が得られることが期待できるからです.
診断の手順をアルゴリズムにしてみました.

糖尿病性腎症病期分類(改訂)注1
病期 尿アルブミン値(mg/gCr)
あるいは
尿蛋白値(g/gCr)
GFR(eGFR)
(ml/分/1.73m2
第1期
(腎症前期)
正常アルブミン尿(30未満) 30以上注2
第2期
(早期腎症期)
微量アルブミン尿(30〜299)注3 30以上
第3期
(顕性腎症)
顕性アルブミン尿(300以上)
あるいは
持続性蛋白尿(0.5g以上)
30以上注4
第4期
(腎不全期)
問わない注5 30未満
第5期
(透析療法期)
透析療法中
注1: 糖尿病性腎症は必ずしも第1期から順次第5期まで進行するものではない。本分類は、厚労省研究班の成績に基づき予後(腎、心血管、総死亡)を勘案した分類である (URL:http://mhlw-grants.niph.go.jp/, Wada T, Haneda M, Furuichi K, Babazono T, Yokoyama H, Iseki K, Araki SI, Ninomiya T, Hara S, Suzuki Y, Iwano M, Kusano E, Moriya T, Satoh H, Nakamura H, Shimizu M, Toyama T, Hara A, Makino H; The Research Group of Diabetic Nephropathy, Ministry of Health, Labour, and Welfare of Japan. Clinical impact of albuminuria and glomerular filtration rate on renal and ardiovascular events, and all-cause mortality in Japanese patients with type 2 diabetes. Clin Exp Nephrol. 2013 Oct 17.
[Epub ahead of print])
注2: GFR 60 ml/分/1.73m2未満の症例はCKDに該当し、糖尿病性腎症以外の原因が存在し得るため、他の腎臓病との鑑別診断が必要である。
注3: 微量アルブミン尿を認めた症例では、糖尿病性腎症早期診断基準に従って鑑別診断を行った上で、早期腎症と診断する。
注4: 顕性アルブミン尿の症例では、GFR 60 ml/分/1.73m2未満からGFRの低下に伴い腎イベント(eGFRの半減、透析導入)が増加するため注意が必要である。
注5: GFR 30 ml/分/1.73m2未満の症例は、尿アルブミン値あるいは尿蛋白値に拘わらず、腎不全期に分類される。
しかし、特に正常アルブミン尿・微量アルブミン尿の場合は、糖尿病性腎症以外の腎臓病との鑑別診断が必要である。
【重要な注意事項】 本表は糖尿病性腎症の病期分類であり、薬剤使用の目安を示した表ではない。糖尿病治療薬を含む薬剤特に腎排泄性薬剤の使用に当たっては、GFR等を勘案し、各薬剤の添付文書に従った使用が必要である。

(2013年12月 糖尿病性腎症に関する合同委員会)

付表:糖尿病性腎症病期分類(改訂)とCKD重症度分類との関係
アルブミン尿区分 A1 A2 A3
  尿アルブミン定量
尿アルブミン/Cr非
(mg/gCr)
(尿蛋白定量)
(尿蛋白/Cr比)
(g/gCr)
正常アルブミン尿
30未満
微量アルブミン尿
30-299
 顕性アルブミン尿300以上
(もしくは高度蛋白尿)
(0.50以上)
GER区分
(ml/分/1.73m2)  
 ≧90
60〜89
45〜59
30〜44
第1期
(腎症前期)
第2期
(早期腎症期)
 第3期
(顕性腎症期)
15〜29
<15
第4期
(腎不全期) 
(透析療法中)  第5期
(透析療法期)

(2013年12月 糖尿病性腎症に関する合同委員会)

糖尿病性腎症病期分類のフローチャート(改訂病期分類に準拠)

※このフローチャートは日本糖尿病学会のものではなく,管理者が病期分類から作ったものです.
糖尿病性腎症病期分類(旧:参考)
病期 臨床的特徴 鑑別方法 主な治療法 血圧管理
尿アルブミン
尿蛋白
GFR(CCr)
第1期
(腎症前期)
正常 正常 尿中ミクロアルブミン
随時尿<30mg/gCr または
24時間尿<30mg/24hr
血糖コントロール <130/80mmHg
第2期
(早期腎症期)
微量アルブミン尿 正常 尿中ミクロアルブミン
随時尿 30〜299mg/gCr または
24時間尿 30〜299mg/24hr
厳格な血糖コントロール
降圧治療
第3期A
(顕性腎症前期)
持続性蛋白尿 ほぼ正常 尿中ミクロアルブミン
随時尿≧300mg/gCr または
24時間尿≧300mg/24hr
かつ
蛋白<1g/日
厳格な血糖コントロール
降圧治療・蛋白制限食
第3期B
(顕性腎症後期)
持続性蛋白尿 低下 尿蛋白≧1g/日
かつ
eGFR>30ml/分
厳格な降圧治療
蛋白制限食
<125/75mmHg
第4期
(腎不全期)
持続性蛋白尿 著明低下 eGRF≦30ml/分 厳格な降圧治療
低蛋白食・透析療法導入
第5期
(透析療法期)
透析療法中 透析療法中 透析療法
腎移植

(糖尿病性腎症に関する合同委員会報告:日腎会誌2002;44(1)より改変)

糖尿病性腎症における尿検査の考え方 (最終更新2011/5/30)

蓄尿にて尿中ミクロアルブミン,尿蛋白,eGFR,半年毎にfollowします.外来では,スポット尿の尿中ミクロアルブミン,尿蛋白定量で代用してもOKです.
病期分類は上表のようになっていますが,これが分かりにくいです.
「鑑別方法」にある太字をみて判定すれば病期を決めることができると思います.
その判定に必要な検査は以下のものです.
  • 尿中ミクロアルブミン: 外来では随時尿で測定し,同時に測定した尿中クレアチニン値で割ります,入院では蓄尿して24時間量を測定します
  • 尿蛋白: 外来では随時尿で測定し,同時に測定した尿中クレアチニン値で割ります,入院では蓄尿して24時間量を測定します
  • eGFR

糖尿病性腎症は,正常 → hyperflitration(過濾過) → ミクロアルブミン尿 → (顕性)蛋白尿 → 血清Cr上昇 → 透析 の順で進行します.
したがって,糖尿病性腎症が診断されていない患者では,尿中ミクロアルブミン(微量アルブミン)を測定します.30mg/gCr(30mg/24hr)以上で2期と判定します.2期の人は尿中ミクロアルブミンを測定し,300mg/gCr(300mg/24hr)を超えたら3A期と判定します.3A期では尿蛋白を測定します.尿中ミクロアルブミンの測定は不要です.次の3B期に病期が上がるかどうかの判定には尿蛋白を用いるからです.尿蛋白が1g/日を超えたら少なくとも3B期に上がっています.3B期では,4期かどうかの判断をするためにeGFRを評価します.eGFR≦30ml/分で4期です.
それぞれの検査結果での病期判定は,2回基準を超えたら次の病期に移ります.1回だけでは病期は上がりません.

蓄尿検査の代わりに/gCr(クレアチニン補正)で代用できる理由
蓄尿検査は被検者にとってストレスで,特に外来通院中の患者に蓄尿検査を指示するのは可能な限り避けたいものです.
平均的な人では筋肉から1日1g産生されていると考えられています.血清Cr濃度が一定であるのは,産生されたクレアチニンが全て尿中から排泄されているためなので,尿中のクレアチニン排泄は1日1gとなります.したがって,クレアチニン1g当たりの微量アルブミンや尿蛋白濃度を測定すれば,1日排泄量が推定できるわけです(しかも,蓄尿で1日量を測定したのと同じ数値が使える).

ちなみに,尿蛋白の有無を尿定性(試験紙を用いたdip stick)で判定する際には注意が必要です.尿定性の試験紙は,顕性蛋白尿の評価には使えますが,微量アルブミン尿の有無の評価には使えません.ちなみに,尿定性で検出できない蛋白尿は,糖尿病性腎症のミクロアルブミン尿と多発性骨髄腫のM蛋白です.
ですから, 糖尿病患者(特に,合併症の有無が不明な場合)で尿検査を行うときに尿定性だけを検査するのは不適切です.逆に,全ての患者で尿中ミクロアルブミンと尿蛋白の両方を提出するのは過剰と思われます.病期に合った検査のオーダーを心懸けたいものです.

糖尿病性腎症の治療 (最終更新2010/5/3)

ACE阻害薬を使用します.
認容性が優れるからといって,ACE阻害薬を使わずにARBを選択するのはナンセンス.

糖尿病性腎症に対するAE阻害薬とARBの効果についてのコクランレビュー(CDSR 2006:CD006257

ACE阻害薬 vs プラセボ ARB vs プラセボ ACE阻害薬 vs ARB
総死亡 全体 0.91(0.71〜1.17) 0.99(0.85〜1.17) 0.92(0.31〜2.78)
半量以下 1.18(0.41〜3.44)
最大量 0.78(0.61〜0.98)
心血管死亡 1.07(0.85〜1.35)** Totals not selected 0.62(0.10〜3.62)
腎アウトカム
 ESKD* 0.60(0.39〜0.93) 0.78(0.67〜0.91) Not estimable
 クレアチニン倍加 0.68(0.47〜1.00) 0.79(0.67〜0.93) Not estimable
 ミクロアルブミン尿からマクロ
 アルブミン尿への進展
0.45(0.29〜0.69) 0.49(0.32〜0.75) 3.14(0.14〜72.92)****
 ミクロアルブミン尿から正常
 アルブミン尿への回復
3.06(1.76〜5.35) 1.42(1.05〜1.93) 1.22(0.76〜1.94)
副作用
 咳 3.17(2.29〜4.38) 4.93(1.00〜24.35) Not estimable
 高カリウム血症 0.85(0.32〜2.21) 5.41(1.20〜24.28)*** Not estimable
総死亡が減るのは,最大量を使用した場合のACE阻害薬のみです.
ACE阻害薬でも,低用量では死亡率は減らず,ARBに至っては全く減らしません.
腎アウトカムについては,どちらも有意差があるが,ACE阻害薬の方がやや効果は大きい傾向にあります.
しかし,両者の直接比較をした研究がほとんどないため,ACE阻害薬の方がARBよりも優れているとも言いきれません.
副作用については,ACE阻害薬では咳が多く,ARBはそれがないので認容性が高いといわれていますが,このコクランビューを見る限り,両者の間には違いはありません.
むしろ,ARBの方がリスクが高いと言えます.
高カリウム血症についても,ACE阻害薬では有意差はありませんが,ARBでは5倍以上も起こしやすくなっています.
ただ,これらも,直接比較のデータがないため,どちらの方が多いかは結論づけられません.
結論として,ACE阻害薬とARBを比較した場合,ARBはACE阻害薬より同等,ないし劣ることはあっても,優ることはない,と言えます.
ところで,ACE阻害薬のメインの副作用である咳は,どれくらいに起こるのでしょうか.
例えば,ACE阻害薬であるタナトリル(R)の添付文書によると,4.76%とあります.
女性に多いとしても,経験的には1割程度と考えられます.
幸いに咳の副作用は可逆的ですので,まずはACE阻害薬を使用してみて,咳が気になるようならARBに変更してみても良いのではないでしょうか.
いくら認容性が高いからと言って,それほど高くもない,しかも可逆的な副作用を恐れて,始めからACE阻害薬ではなくARBを選択するのは,あまりにも乱暴すぎるのではないでしょうか.
薬価を見ても,ACE阻害薬であるタナトリル(R)錠5mgが78.40円であるのに対し,ARBであるニューロタン(R)錠50mgは155.6円とほぼ倍のコストがかかります(例に挙げたのは何でも良かったので,個々の薬剤であることには意図はない).
それでも,アドヒアランスが悪くて途中で服薬を中断されると困るので,認容性が高いARBを選択すべきと声高に言っている医師が多いのですが,これには,全く説得力がありません.
患者が薬を服用しなくなってしまう理由の1つは,副作用を予告しなかったために,患者が驚いて混乱に陥ることです.
ならば,初回の処方する際に,「この薬の副作用は咳と血中のカリウムが高くなることです.咳は痰を伴わないもので,それ自体で害になることはありません.軽い咳で耐えられるならそのまま飲み続けてもらえればと思いますが,咳が気になるようなら中止してもらって構いません.その際には別の薬に変更します.カリウムについては,採血して定期的にチェックします」と言えば済むことです.
この程度の文言は,1分もあれば話せます.
管理人は,これで,全く支障なくACE阻害薬を処方しています.
あなたは,この程度の労力を惜しんで,効果が劣るかも知れず,コストの高い薬剤を,可逆的で軽微な副作用を避けようとして選ぶのしょうか?
糖尿病性腎症に対する降圧剤使用の推奨
(ARBではなく)ACE阻害薬を用いるべき
咳の副作用が起こった場合に限り,ACE阻害薬の代わりにARBを用いる.
高カリウム血症には留意して,定期的採血する.
ACE阻害薬を試さずに先にARBを用いるようなことはしない.

 糖尿病性神経障害 diabetic neuropathy 

症状としては,足がじんじんしびれる,裸足で歩いているのに,足の裏と床の間に1枚紙が挟まっている感じがする,痛い

糖尿尿病性神経障害のスクリーニングについてのレビューは,JAMA The Rational Clinical ExaminationにDoes This Patient With Diabetes Have Large-Fiber Peripheral Neuropathy?のタイトルで存在します(JAMA 2010;303:1526).
そのまとめの表がTable 3です.
ここでは,その幾つかについて解説します.

Italian Society of Diabetologyの神経障害症候質問紙: 症状によるスクリーニング法 (最終更新2010/5/6)

以下の10項目を各項目0〜2点で評価し,合計20点で判定します.
  1. 手や脚にヒリヒリするような痛み,感覚鈍磨,重い感じを感じたことがありますか?
  2. 脚や腕に灼熱感,刺すような痛みやそれ以外の痛み,こむらがえりを感じたことがありますか?
  3. 歩いているときに,泡や脱脂綿の上を踏んでいたり,地面がでこぼこしていたりするような感じがしたことがありますか?
  4. 焼けたり切ったりした痛みを感じることができないですか?
  5. 階段昇降時に脚の力が弱くなっていると感じたことがありますか?
  6. ベッドから起きあがった時に気が遠くなったり,めまいがしたりしたことがありますか?
  7. 尿の出始めが難しくなったり,膀胱機能を調節できなくなったりしていますか?
  8. 下痢が,特に夜間に起こりますか?
  9. 顔だけから大量の汗が出たことがありますか?
  10. 勃起を維持することが難しいですか?(男性のみ)
Italian Society of Diabetologyの神経障害症候質問紙の診断特性は,20点中4点以上を陽性として,Sn 85%,Sp 79%,LR+ 4.0,LR- 0.19と,スクリーニング目的にはかなり有用(Acta Diabetol 1995;32:7).
  日常診療ですぐに使えるチェックシート: A6版に記入してカルテに貼りつけたら便利かも
A4版 A6版(4 in 1)

128Hz音叉(振動覚) (最終更新2010/5/6)

on-off法と時間法があります.
いずれの方法でも,rule inには使えますが,音叉による振動覚の検査はrule outには使えません
on-off法("on-off" technique)
母趾の背側に当てたり離したりして,振動の有無(”on”と”off”)を患者に話してもらいます.
8回当てて,振動が覚知できない回数が5回以上だとLR 35,2〜4回だとLR 3.9になります(Diabetes care 2001;24:250).
時間法("timed" technique)
患者が音叉の振動を感じなくなってから,検者の母指のMP関節に当て,検者の感じる振動が何秒持続するかを計測します.
各足4回ずつ行って,平均を取ります.
長いほど患者の振動覚が低下していることになりますが,20秒以上だとLR 16になります(Diabetes care 2001;24:250).

5.07 Semmens-Weinstein monofilament: SWMF(モノフィラメント:圧覚) (最終更新2010/5/)

モノフィラメントテストは,5.07 Semmes-Weinstein monofilamentと呼ばれるものを皮膚に垂直にあてて,それが覚知できるかどうかを判定します.
モノフィラメントには,幾つかの太さがありますが,5.07という太さのものを用いるのが一般的とされ,その診断特性について幾つか検討されています.
韓国での研究(J Korean Med Sci 2003;18:103)では,第1趾と第2趾の間の背側,第1,3,5趾腹,第1,3,5中足骨頭(測定で骨の突出している場所),足底の中央と外側,踵の片足計10箇所にランダムに当てて,糖尿病性末梢神経障害の有無を判定する方法の診断特性が検討されました(Fig. 1参照:ただし,この写真では,第5中足骨頭のマークが抜けている).
当てるときの強さは10g,目隠しをして1秒間当てて,覚知できるかを検査します.
10箇所中4箇所以上覚知不能を陽性とした場合,Sn 93,Sp 100,LR+ 16,LR- 0.09でした.
この研究で面白いのは,部位別に診断特性を求めているところです.
これを見ると,特異度はどれもほとんど同じですが,感度が最も良いのは第3中足骨頭です.
そして,実は,第3中足骨頭と第5中足骨頭のいずれかが覚知不能の場合を陽性とした場合でも,Sn 93,Sp 100,LR+ 16,LR- 0.09と全く変わらない結果でした.
ですから,モノフィラメントテストでは,まずこの2箇所に当ててみて判定するのがよいと思います.
また,モノフィラメントは糖尿病性神経障害の有無が分かるだけでなく,足潰瘍の予測ができます.
4.21U以上の太さのmonofilamentで測定し,感じ取れれば,足潰瘍について,Sn 84,Sp 96,LR+ 21,LR- 0.17という結果でした (Diabetes Care 1990;13:1057
ただ,3件のmonofilamentの診断特性を検討した研究のシステマティック・レビュー(Ann Fam Med 2009;7:555,上記研究は含まれていない)では,Sn 41〜93%,Sp 68〜100%と幅が広く,異質性が高かったため,メタ・アナリシスすることができませんでした.
潰瘍を起こしやすいのは足底が床に当たる骨が突出しているところで,母趾の底側,小趾の底側,母趾球,中趾球,小趾球,足腫の6箇所です(UpToDateの"Evaluation of the diabetic foot"に図があります).

身体所見の組み合わせによるスクリーニング法 (最終更新2010/5/6)

先程の質問紙によるスクリーニング法の診断特性を検討した研究では,身体所見の組み合わせによるスクリーニング法の診断特性も検討しています(ただし,原著が確認できないので,何をreference standardにおいているのか不明です).
以下の5項目で判定します.
  • 膝蓋腱反射,アキレス腱反射
  • 下腿(足と母趾の背屈筋)の筋力低下
  • 手に抵抗して両側の下腿を背屈する
  • かかと歩き
  • 足の外観
5項目中3項目以上低下を陽性とすると,Sn 94%,Sp 92%,LR+ 12,LR- 0.07Acta Diabetol 1995;32:7).

Michigan Neuropathy Screening Instrument(MNSI): 身体所見によるスクリーニング法 (最終更新2011/5/8)

以下の4項目で評価し,左右で合計0〜8点で判定します.
  • 足の外観
  • 潰瘍の有無
  • アキレス腱反射
  • 母趾振動覚
2点以上を陽性とすると,Sn 80%,Sp 95%,LR+ 16,LR- 0.2(Diabetes Care 1994;17:1281).
中国での研究でも2点以上を陽性として,Sn 78.15%,Sp 88.43%,LR+ 6.8,LR- 0.2(Zhonghua Yi Xue Za Zhi 2006;86:2707
スコアのcut offによる診断特性の評価をした論文もあります(Clin Neurol Neurosurg 2006;108:477).有病割合68/176=38.6%,末梢神経障害の診断は伝導速度,振幅,遠位潜時,筋電図所見を基に行いました.
MNSS score Sn Sp LR+ LR- 陽性事後確率 陰性事後確率
≧1.5 79 65 2.26 0.32 58.7% 16.7%
≧2.0 65 83 3.82 0.42 71.0% 21.1%
≧2.5 50 91 5.56 0.55 77.3% 25.8%
≧3.0 35 94 5.83 0.69 80% 30.1%
結局のところMNSIの診断特性は,8点中2点以上を陽性とした場合,Sn65〜80%,Sp 83〜95%,LR+ 3.8〜16,LR- 0.2〜0.42になります.
評価方法はミシガン大のMichigan Diabetes Research and Training Centerに解説があります.
最新のMNSIの評価は上記4項目に母趾モノフィラメントを加えた5項目,合計10点で行うように指示されているが,5項目にした場合の感度,特異度については,ミシガン大に問い合わせたところ,2010年4月16日現在で報告がないとのことでした.
評価方法の要約:
評価のために,足を30℃以上に温める.
足の外観
 著明な乾燥肌,胼胝,亀裂,
 変形: 扁平足,槌趾,先天性内反趾,外反母趾,関節亜脱臼,中足骨頭の突出,
     シャルコー足Charcot foot(神経障害性の萎縮で,足の感覚喪失から,突然腫れて赤く熱くなり,
     骨の破壊によって関節が変形してしまう状態),
     切断
  上記が全て異常ない →陰性 0点
  上記のいずれかの異常がある →陽性 1点
潰瘍
  明らかな潰瘍がない →陰性 0点
  明らかな潰瘍がある →陽性 1点
腱反射(アキレス腱反射)
 坐位で足を組んで,力を抜いた状態で誘発する.
 筋が延びやすいように他動的にやや背屈させるとよい.
 アキレス腱はハンマーで直接叩く.
  反射あり →陽性 0点
  患者がJendrassik(イエンドラシック)手技を行った場合のみ反射が誘発 →誘発により陽性 0.5点
  Jendrassik手技を行っても反射がない →陰性 1点
 ※JendrassiK手技: 手指を互いに引っかけて水平に引く
振動覚(母趾振動覚)
 音叉を,両側の母趾のIP関節背側の骨が突出している部位(外顆ではない)に置いて測定する.
 患者は閉眼の状態で,振動している音叉から振動を感じることができなくなったら合図してもらうように指示する.
 検者が音叉を持っている指で感じる振動知覚と患者の母趾の知覚の差が
  10秒未満 →正常 0点
  10秒以上に拡大 →減弱 0.5点
  患者が振動を知覚できない →消失 1点
圧覚(母趾モノフィラメントテスト):(※4項目の評価には含まれていません)
 患者の足が支えられていることが重要である(例えば,平坦で暖かい表面に足底を置く).
 フィラメントは最初に検者の示指の背側に4〜6回垂直に当ててしなやかにしておく
 フィラメントは患者の母趾の背側の爪郭とIP関節の中間に,垂直に一定の圧で1秒未満当てる.
 この時,母趾を直接つかんではならない.
 患者は閉眼の状態で,フィラメントが触れているのを感じるかどうか答えて貰う.
 10回当てて
  8回以上知覚可能 →正常 0点
  1〜7回知覚可能 →感覚低下 0.5点
  正しく知覚できず →感覚消失 1点
  日常診療ですぐに使えるチェックシート(2010.5.6作成,2011.5.8改訂): A6版に記入してカルテに貼りつけたら便利かも
A4版 A6版(4 in 1)
スクリーニング検査で異常があれば神経伝導速度(但し当院では不可能)

※なんごろくの記載内容に間違いをご指摘頂ける方やご意見をお寄せいただける方は,是非,こちらまで御連絡下さい.




Copyrights(c)2004- Eishu NANGO
All rights reserved
禁無断転載