QLOOKアクセス解析

 


English version is here.

Contents

EBMについて
   一般向け
   医療従事者向け
各地のEBM勉強会紹介
pES club(学生EBM勉強会)
エビマヨの会(EBM抄読会)
なんごろく(診療のTips)
EBM関連イベント
資料集
管理人プロフィール
リンク集
更新履歴
アンケート
  ↑ご協力下さい!
お問い合わせ先


アンケートにご協力を!

ご感想をお寄せ下さい

このページへリンクを張る際は,
お手数ですが
管理人
までご一報ください

 ホーム > エビマヨの会 >

エビマヨの会−2010年3月17日

 第19回:心房細動患者では脈拍コントロールは甘くしても厳格にしても予後は変わらない(RACEU)

Isabelle C. Van Gelder, M.D., Hessel F. Groenveld, M.D., Harry J.G.M. Crijns, M.D., Ype S. Tuininga, M.D., Jan G.P. Tijssen, Ph.D., A. Marco Alings, M.D., Hans L. Hillege, M.D., Johanna A. Bergsma-Kadijk, M.Sc., Jan H. Cornel, M.D., Otto Kamp, M.D., Raymond Tukkie, M.D., Hans A. Bosker, M.D., Dirk J. Van Veldhuisen, M.D., Maarten P. Van den Berg, M.D., for the RACE II Investigators
Lenient versus Strict Rate Control in Patients with Atrial Fibrillation
N Engl J Med. 2010 Apr 15;362(15):1363-73.
PubMed PMID: 20231232

チェックシートは はじめてトライアルシート5.5

カテゴリー: 予防
研究デザイン: ランダム化比較試験,非劣性試験
資金源: Netherlands Heart Foundation (2003B118),unrestricted educational grants from AstraZeneca, Biotronik, Boehringer Ingelheim, Boston Scientific, Medtronic, Roche, and Sanofi Aventis France (paid to the Interuniversity Cardiology Institute of the Netherlands).
利益相反: Dr. Van Gelder reports receiving consulting fees from Sanofi-Aventis, Boehringer Ingelheim, and Cardiome, grant support from Medtronic, Biotronik, and St. Jude Medical, and lecture fees from Sanofi-Aventis, Boehringer Ingelheim, and Medtronic; Dr. Crijns, consulting fees from Boehringer Ingelheim, Sanofi-Aventis, and AstraZeneca, grant support from St. Jude Medical, Boston Scientific, Boehringer Ingelheim, Sanofi-Aventis, Medapharma, and Merck, and honoraria from Medtronic, Sanofi-Aventis, Medapharma, Merck, Boehringer Ingelheim, and Biosense Webster; Dr. Alings, consulting fees from Boehringer Ingelheim and Sanofi-Aventis; and Dr. Van Veldhuisen, board membership fees from Amgen and Pfizer, consulting fees from Medtronic, Biotronik, and Biosite-Inverness, lecturefees from Merck, Menarini, and Medtronic, and travel reimbursement from Pfizer. No other potential conflict of interest relevant to this article was reported.
1.論文のPECO:
P: 12ヶ月未満持続した持続性心房細動があり,安静時心拍数が80bpm以上で,経口抗凝固薬を服用中(または,血栓塞栓合併症の危険因子を持っていない場合はaspirin)の80歳以下の患者
E: lenient-control(寛容コントロール): 目標安静時心拍数<110pbm
C: strict-control(厳格コントロール): 目標安静時心拍数<80pbm,目標中等度運動時<110bpm
O: primary: 以下の複合アウトカム:心血管死,心不全による入院,脳卒中,全身血栓症,重篤な出血,失神,持続性心室頻拍,心停止を含む不整脈,脈拍調節薬の致死的副作用,ペースメーカーや除細動器植え込み術
   secondary: primary outcomeの各要素,総死亡,症状,機能的状態
   other: 心筋梗塞,肺塞栓,一過性脳虚血発作,入院
安静時心拍数は,両群とも仰臥位で2〜3分安静にしたあと12誘導心電図を取って測定した.
strict-control群では,自転車運動試験で達する最長時間の25%に相当する時間の中等度運動を行い,その運動時心拍数を測定した.心拍数が目標に達したあとは,徐脈の有無を確認するために,24時間ホルターモニタリングを行った.
strict-control群のみ,脈拍コントロールの薬剤が調節されたときには,24時間ホルターモニタリングを行って徐脈の有無のチェックを繰り返した.
2.ランダム割付けされているか?: されている,中央割付け方式(central, interactive, automated telephone system)でconcealmentもされている
さまざまなサイズの順序を変えたブロックで割り付けも行われている
3.Baselineは同等か?: ほぼ同等.
ただし,baselineの表であるTable 1では,lenient-control群の方が冠動脈疾患が多く,拡張期血圧がやや高く,CHADS2 scoreが重い
冠動脈疾患が多いことに関連すると思われるが,ACE-I/ARBとスタチンの使用量もlenient-control群の方が多い
4-1.ITT解析か?: ITT解析されている
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: Figure 1によると,outcomeの評価ができなかったのは,lenient-control群では同意撤回1人+研究終了時に受診せず11人+同意撤回1人の合計13人が,strict-control群では,同意撤回3人+研究終了時に受診せず4人+同意撤回3人+研究終了時に受診せず5人の合計15人が脱落と考えられる.したがって,追跡率は(614-28)/614=95.4%
5.マスキング(盲検化)されているか?: オープンラベル.primary outcomeイベントについては,ランダム割り付け内容を知らされていない独立した裁定委員会が判断した.つまり,PROBE試験
6.症例数は十分か?: 本研究は非劣性試験であり,primary outcomeの期待発症率が両群とも2.5年間で25%,lenient-control群において2.5年間でprimary outcomeの発症率が10%絶対増加するのを排除するために,検出率80%,片側αレベル0.05とした.期待イベント発症率の試験前の推定は,RACE trialの(lenient)rate-contorol群で観察されたイベント発症率を基にした.
中央値2.5年の追跡で,脱落率5%以下として,統計学的に満足するために各群250例のサンプルサイズを設定した.試験中に,primary outcomeの頻度が期待してたよりも少ないことが判明したので,各群300例に増やし,最長追跡期間を3年に延ばした.
非劣性の基準は,2つの治療群の絶対差の90%信頼区間の上限が10%未満とした.
7.結果の評価:
追跡期間は3年.
dose-adjustment phaseにおいて,目標脈拍数に到達した患者の割合は,lenient-control群で97.7%,strict-control群で67.0%だった.
研究終了時において,目標脈拍数に到達した患者は,lenient-control群で265人,strict-control群で122人だった.
strict-control群では,1/3しか目標脈拍数に達成しなかったことになる.
メインとなる結果はTable 3にある.

  • composite primary outcomeは,ハザード比の95%信頼区間こそ1を跨いでいるものの,lenient-control群の方が良いという結果になっている.
    しかし,これは理論的に考えにくい.
    同様に,脳卒中については,唯一有意差をもってlenient-control群の方が良いという結果になっているが,これも理論的に説明しがたい.
    ただ,Table 2を見ると,strict-control群の方がrate-control medicationが多いので,より血圧が下がって脳梗塞に対しては不利になっている可能性はある.
  • 最悪シナリオ解析をすると,lenient-control群は38+13=51人がcomposite primary outcomeを発症し,16.4%となるので,strict-controlよりも多くなる.
    RI 16.4/14.9=1.10,RRIが10%,ARI 16.4-1.49=1.5%,NNH 66になる.
  • strict-controlにすると,失神や起立低血圧などが増えそうだが,そのような結果は出ていない.
  • 持続性心房細動というけれど,Table 1では,Duration of permanent atrial fibrillationが3ヶ月程度であるのは,組み入れ時にある心房細動の発症からの期間が3ヶ月程度ということで,比較的心房細動の期間の短い患者が対象になっている.
  • 発症数が少なく,両群に違いが出なくても当たり前である.
    追跡期間が短くないか?もっと延ばせば差が出る可能性もあるだろう.
  • 結局,strict-control群でも最終的に1/3しか 脈拍コントロールが達成されていない状態での結果なので,脈拍コントロールされた患者だけを見たら,outcomeは良くなっている可能性は否定できない.
結局のところ,この治療法は使えるのか:
  • この研究からは,少なくとも,脈拍コントロールを無理して厳格にはやらなくても良いと考えられる.
    ただし,厳格にコントロールできる人はやった方がいいかも知れない.

コメント:

※エビマヨの会のディスカッションの内容について,ご意見のある方は,是非こちらまでお寄せ下さい.ご了解が得られれば,ご意見をコメント欄に掲載させていただきます(匿名可).
また,管理者は著作権は保持します.引用は自由ですが出典を明記してください.また,可能でしたら,ご利用前に一度ご連絡をお願いいたします.




Copyrights(c)2004- Eishu NANGO
All rights reserved
禁無断転載