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なんごろく−糖尿病

 ADVANCE

ADVANCE Collaborative Group, Patel A, MacMahon S, Chalmers J, Neal B, Billot L, Woodward M, Marre M, Cooper M, Glasziou P, Grobbee D, Hamet P, Harrap S, Heller S, Liu L, Mancia G, Mogensen CE, Pan C, Poulter N, Rodgers A, Williams B, Bompoint S, de Galan BE, Joshi R, Travert F.
Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes.
N Engl J Med. 2008 Jun 12;358(24):2560-72. Epub 2008 Jun 6.
PubMed PMID: 18539916.

チェックシートは はじめてトライアルシート5.5

背景: 2型糖尿病患者においては,血糖集中コントロールの血管アウトカムへの影響はよく分かっていない.
カテゴリー: 予防
研究デザイン:
 ランダム化比較試験
資金源: Supported by grants from Servier (the major financial sponsor) and the National Health and Medical Research Council of Australia (211086 and 358395). Servier manufactures gliclazide (modified release) and the fixed combination of perindopril and indapamide.
利益相反: Dr. Patel reports receiving lecture fees from Servier, Pfizer, and Abbott and grant support from Pfizer, Servier, and Sanofi-Aventis; Dr. MacMahon, being a member of advisory boards for Servier, Pfizer, and Novartis and receiving lecture fees from Servier and Pfizer and research grants from Servier, Pfizer, and Novartis; Dr. Chalmers, being a member of an advisory board for Servier and receiving lecture fees from Servier, Pfizer, and Daiichi and grant support from Servier; Dr. Neal, receiving lecture fees from Servier and GlaxoSmithKline and research grants from Pfizer; Dr. Woodward, receiving consulting fees from Pfizer, lecture fees from Servier and Pfizer, and grant support from Pfizer and Sanofi-Aventis; Dr. Marre, receiving lecture fees from Servier and being a member of advisory boards for Servier, Novo Nordisk, and Sanofi-Aventis; Dr. Cooper, receiving consulting fees from Merck, GlaxoSmithKline, Amgen, and AstraZeneca and lecture fees from Servier; Dr. Grobbee, receiving lecture fees from Servier and consulting and lecture fees and grant support from Pfizer, AstraZeneca, Novartis, and Sanofi-Aventis; Dr. Hamet, receiving consulting fees from Servier, Neurochem, Prognomix, Medpharmgene, Novartis, Bristol-Myers Squibb, Pfizer, and Boehringer Ingelheim; lecture fees from Servier, Novartis, Pfizer, and Bristol-Myers Squibb; and grant support from Pfizer; Dr. Harrap, receiving lecture fees from Servier; Dr. Heller, receiving consulting fees from Novo Nordisk, Eli Lilly, and Amylin; lecture fees from Novo Nordisk, Eli Lilly, Servier, and Merck; and grant support from Novo Nordisk and GW Pharmaceuticals; Dr. Mancia, receiving consulting and lecture fees from Servier, Novartis, Bayer, Boehringer Ingelheim, Merck, and Sanofi-Aventis; Dr. Mogensen, receiving lecture fees from Servier; Dr. Pan, receiving lecture fees from Servier, Bayer, Novo Nordisk, Bristol-Myers Squibb, Pfizer, and Sanofi-Aventis; Dr. Poulter, receiving consulting fees from Gilead, Bristol-Myers Squibb, Sanofi-Aventis, Daiichi Sankyo, Merck, Preventicum, and Pfizer; lecture fees from Servier, Novartis, Pfizer, Bristol-Myers Squibb, and Sanofi-Aventis; and grant support from Servier, Pfizer, Mars, and Menarini; Dr. Rodgers, receiving lecture fees from Pfizer and Merck and grant support from Dr. Reddy's Laboratories; Dr. Williams, receiving consulting fees from Pfizer, Merck, and Novartis; lecture fees from Servier, Pfizer, Merck, and Novartis; and grant support from Boehringer Ingelheim and Pfizer; and Dr. Travert, receiving lecture fees from Servier. No other potential conflict of interest relevant to this article was reported.
1.論文のPECO:
P: 30歳以上で2型糖尿病と診断された,研究参加時点で55歳以上の患者
   大血管障害や細小血管障害の既往があるか,1つ以上の血管疾患の危険因子を持つ者
   糖化ヘモグロビン値で組み入れの制限はしなかった
   exclusion:研究で使用する治療薬の絶対適応症例や禁忌症例,研究開始時点で長期間インスリン治療の絶対的適応例
E: 血糖集中コントロール(目標A1c 6.5%以下)
   gliclazide(30〜120mg/dayで調節)を用い,他のSU剤は中止した
   他の治療薬の開始時期,選択,量については,治療プロトコールは示されたが,治療医師の判断で行った
   gliclazideを増量し,その後metformin,thiazolidinediones,acarbose,insulin(最初はbasal insulin,空腹時血糖が改善したにもかかわらず治療目標に達成しなければ,短時間作用型インスリンを毎食前に追加)を追加した
C: 血糖標準コントロール(各国のガイドラインにおける目標糖化ヘモグロビンレベル)
O: primary(複合):複合大血管イベントと複合細小血管イベントの合計とそれぞれ
   大血管イベントは,心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中と定義
   細小血管イベントは,腎症と網膜症の新規発症と悪化
    腎症:マクロアルブミン尿症(尿中アルブミン300microg/mgCr),血漿クレアチニンが2.26mg/dL以上で倍加,腎代替療法を要する,腎疾患死
    網膜症:増殖性網膜症の発症,凹版浮腫,糖尿病に関連する失明,網膜光凝固療法
   secondary:総死亡,心血管死,主要な冠動脈イベント(冠動脈疾患死[突然死を含む],非致死性心筋梗塞),総冠動脈イベント(主要な冠動脈イベント,無症候性心筋梗塞,冠血管再建術,不安定狭心症による入院),主要な脳血管イベント(脳動脈疾患による死亡と,非致死性脳卒中),総脳血管イベント(主要な脳血管イベント,一過性脳虚血発作,くも膜下出血),心不全(心不全死,心不全による入院,NYHA classの増悪),末梢血管イベント,総心血管イベント,腎症の新規発症や増悪,網膜症の新規発症や増悪,ミクロアルブミン尿の発症(尿中アルブミン:クレアチニン比が30〜300microg/ml),視力低下,神経障害の新規発症や増悪,認知機能低下(Mini-Mental State Examinationdeで研究開始時点より3ポイント以上低下),認知症(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th Editionの基準により分類),24時間以上の入院,低血糖(50mg/dL未満や,他の原因がなく,低血糖に典型的な症状や徴候があるもの)
※本研究はACE阻害薬+利尿剤の血圧コントロールの効果と,血糖集中コントロールの効果を同時に見た,2×2 factorial designのRCTである.
本論文は,そのうちの血糖集中コントロールの効果についての報告である.
※研究開始前に,6週のrun-in periodを置いた.
この期間に,個々の患者の血糖コントロール法を継続し,固定量のperindoprilとindapamideを投与した.
この期間に治療薬に認容でき,治療に従えた患者を,最終的に研究に組み入れた.
2.ランダム割付けされているか?: されている,中央割付け方式(Central, computre-based randomization)でconcealmentもされている
研究施設,大血管障害の既往の有無で層別割り付けが行われた
3.Baselineは同等か?: 同等.
 患者背景:(集中治療群 vs 標準治療群)
   平均年齢: 66±6歳 vs 66±6歳
   診断からの年数: 7.9±6.3年 vs 8.0±6.4年
   CVD既往: 32.2% vs 32.3%
   baseline A1c: 7.51±1.57% vs 7.52±1.54%
   BMI: 28±15 vs 28±15
 使用治療薬:
   gliclazide(modefied relaease): 90.5% vs 1.6%
   other SU 1.9% vs 57.1%
   metformin: 73.8% vs 67.0%
   thiozolidine: 16.8% vs 10.9%
   acarbose: 19.1% vs 12.6%
   insulin: 40.5% vs 24.1%
 最終A1c:
   集中治療群: 6.53±0.91%
   標準治療群: 7.30±1.26%

 研究期間中の,降圧剤,脂質調節薬,抗血小板療法は両群で同等だった
4-1.ITT解析か?: ITT解析されている,治療終了時に測定されていない場合は,最後に測定されていたものを解析に使用する
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: ない.追跡率は(4828+4741)/11140=85.9%
5.マスキング(盲検化)されているか?: outcome評価者のみマスキングしている.患者と介入実施者については血圧コントロールについてはマスキングされているが,血糖コントロールについてはオープンで行われた.
6.症例数は十分か?: 
 有意差があるので,症例数は十分.
 計算された症例数: 研究全体で10000例
 治療効果の大きさ: primary outcomeの相対危険度減少が16%
 プライマリアウトカムの推定発症率:対照群の2つのプライマリアウトカムの発症率が,それぞれ年間3%
 alfa level: 5%(両側)
 検出力: 90%
 平均約3年の追跡の時点で,イベント発症率が当初の予想よりも低かったため,さらに血圧コントロールの評価は12ヶ月間,血糖コントロールの評価は18ヶ月間追跡期間を延長した.
7.結果の評価:
追跡期間は平均5.0年.
メインとなる結果はFigure 4にある(集中治療群 vs 標準治療群).
primary endopoint(複合心血管イベント)
 主要な大血管イベントと細小血管イベント: 18.1% vs 20.0%,HR 0.90(0.82〜0.98),p=0.01
 主要な大血管イベント: 10.0% vs 10.6%,HR 0.94(0.84〜1.06),p=0.32
 主要な細小血管イベント: 9.4% vs 10.9%,HR 0.86(0.77〜0.97),p=0.01
  腎症の新規発症と悪化: 4.1% vs 5.2%,HR 0.79(0.66〜0.93),p=0.02
  網膜症の新規発症と悪化: 6.0% vs 6.3%,HR 0.95(0.82〜1.10)
secondary endpoint
 総死亡: 8.9% vs 9.6%,HR 0.93(0.83〜1.06),p=0.28
 新規発症ミクロアルブミン尿: 23.7% vs 25.7%,HR 0.91(0.95〜0.98)
 総入院: 1.1% vs 0.7%,OR 1.52(1.01〜2.28),p=0.04
 重症低血糖: 2.7% vs 1.5%,HR 1.86(1.42〜2.40),p<0.001
 軽微な低血糖: 120イベント vs 90イベント/100人年
糖尿病性腎症のアウトカムの内訳
 マクロアルブミン尿: 2.9% vs 4.1%,HR 0.70(0.57〜0.85),p<0.001
 腎代替療法: 0.4% vs 0.6%,HR 0.64(0.38〜1.08),p=0.09
 血清クレアチニンレベル倍加: 1.2% vs 1.1%,HR 1.15(0.82〜1.63),p=0.42
サブグループ解析の結果は, Figure 5にある.
本文中には,サブグループ間の交互作用はなかったとある.

ディスカッション:

  • 本研究では,primary outcomeである大血管イベントと細小血管イベントの複合エンドポイントで,集中治療群の方が有意に減少した.
    しかし,有意差があったのは細小血管障害の方であり,大血管障害では有意差がなかった.
    さらに,有意差のあった細小血管障害のうち,実際に有意差があったのは腎症であり,網膜症では有意差が出なかった.
    腎症についても,アウトカムが幾つか設定されていたが,実際に有意差があったのはマクロアルブミン尿症だけである.
    したがって,血糖集中治療は,腎症の中の,マクロアルブミン尿症を減らす効果しかなく,今回の研究におけるprimary outcomeの有意差は,これにつられて有意差が出たものと言える.
  • 注意するべき事は,”腎症を減らす”というのは,”マクロアルブミン尿を減らす”という意味に他ならないことである.
    腎症を減らすというと,一般に透析が回避できるとか血漿クレアチニンの上昇を抑制できる事を期待してしまうが,本研究の結果でも,血糖の集中的なコントロールに,そういう事実は全く証明できなかった.
  • サブグループ解析で,交互作用の検定では有意差はなかったが,大血管障害,細小血管障害がないものでは,血糖集中コントロールの効果が期待できた.
    これは,まだ合併症が起こっていないような糖尿病歴の短い人では,血糖を集中的にコントロールすると合併症が減らせるかも知れないことを意味する.
  • 死亡率に有意差はなかった.

結局のところ,どうすればいいのか:

  • 糖尿病歴の長い患者に厳格な血糖コントロールをしても,大血管障害,網膜症は防げない.
  • 糖尿病歴の長い患者に厳格な血糖コントロールをすると,腎症の進展は防げる可能性があるが,それはマクロアルブミン尿だけでの話である.
  • 合併症の起こっていない患者には,血糖の厳格なコントロールが合併症を減らす可能性がある.
  • 糖尿病歴の長い患者では,血糖コントロールをA1c 6.5%(日本の測定系JDS値ではHbA1c 6.1%)にするのは危険で,A1c 7.3%(日本の測定系JDS値ではHbA1c 6.9%)が良い.

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