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なんごろく−糖尿病

 批判的吟味(2010.6.12)−PROactive(PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macoroVascular Events)

Dormandy JA, Charbonnel B, Eckland DJ, Erdmann E, Massi-Benedetti M, Moules IK, Skene AM, Tan MH, Lefebvre PJ, Murray GD, Standl E, Wilcox RG, Wilhelmsen L, Betteridge J, Birkeland K, Golay A, Heine RJ, Koranyi L, Laakso M, Mokan M, Norkus A, Pirags V, Podar T, Scheen A, Scherbaum W, Schernthaner G, Schmitz O, Skrha J, Smith U, Taton J;
PROactive investigators. Secondary prevention of macrovascular events in patients with type 2 diabetes in the PROactive Study(PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events): a randomised controlled trial.
Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1279-89.
PMID: 16214598.

チェックシートは はじめてトライアルシート5.5

背景: 疫学研究では,2型糖尿病患者において,糖化ヘモグロビンと心血管イベントには関連性が示されている.
カテゴリー: 予防
研究デザイン:
 ランダム化比較試験
資金源: Takeda Pharmaceutical CompanyとEli Lilly and Company.それぞれ国際運営委員会と実行委員会に投票権のあるメンバーを出していた.
利益相反: J A Dormandy, B Charbonnel, E Erdmann, M Massi-Benedetti, E Standl, R G Wilcox, L Wilhelmsen, J Betteridge, K Birkeland, A Golay, R J Heine, L Koranyi, M Laakso, M Mokan?, A Norkus, V Pirags, T Podar, A Scheen, W Scherbaum, G Schernthaner, O Schmitz, J S?krha, U Smith, and J Taton? have served as consultants to, and received travel expenses and payments for speaking at meetings from, Takeda. D J A Eckland was an employee of, and has served as a consultant to Takeda. I K Moules works for Takeda. M H Tan works for Eli Lilly and Company. A M Skene is the Managing Director of Nottingham Clinical Research Group, which was contracted by Takeda. The University of Liege (International Diabetes Federation account) was compensated for the work done by P J Lefebvre as chairman of the data and safety monitoring committee. The independent statistical group located at the University of Edinburgh Medical School was compensated for the work done by G D Murray, statistician and Director of the independent statistical group.
1.論文のPECO:
P: 食事療法単独または経口血糖降下薬±インスリンで治療していてもHbA1c≧6.5%の以下のいずれかの大血管障害を持つ35〜75歳の2型糖尿病患者
 試験に組み入れ6ヶ月以上前に心筋梗塞または脳卒中
 試験に組み入れ6ヶ月以上前に経皮的冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス術(CABG)を実施
 試験に組み入れ3ヶ月以内に急性冠症候群
 冠動脈疾患や下肢の閉塞性動脈疾患が客観的にあるもの
   客観的な冠動脈疾患: 運動負荷試験で陽性で,冠動脈造影で50%以上狭窄が1箇所以上またはシンチグラフィーが陽性
   客観的な下肢閉塞性動脈疾患: 下肢切断,またはABI 0.9未満を示す間歇性跛行
除外基準: 1型糖尿病
        インスリンのみで治療
        冠動脈血管再建術または末梢動脈血管再建術を予定
        HYHAU度以上の心不全
        虚血性潰瘍,壊疽,安静時下肢痛
        血液透析中
        ALTが正常上限の2.5倍以上
E: pioglitazoneを追加
   最初の1ヶ月15mg,次の1ヶ月30mg,その後45mgと最大認容用量まで増加した
   臨床的に必要な場合は,この範囲で増減した
C: placebo
O: primary(複合): 総死亡,非致死的心筋梗塞(無症候性を含む),脳卒中,急性冠症候群,冠動脈や下肢動脈への治療,膝上での下肢切断のいずれかが最初に起こる
   secondary: "main secondary endpoint: 研究開始時に設定されていない後付け"治療:総死亡,心筋梗塞(無症候性を含む),脳梗塞のいずれかが最初に起こる.
   心血管死
   primary outcomeの個々の項目
2.ランダム割付けされているか?: されている,中央割付け方式(central interactive voice response system)でconcealmentもされている
ランダムに順序を変えた(permuted)ブロックを用いて割り付けた(ブロックの大きさは,プロトコールにも明記されていない).
3.Baselineは同等か?: 同等.
 患者背景:(pioglitazone群 vs placebo群)
   平均年齢: 61.9±7.6歳 vs 61.6±7.8歳
   診断からの年数: 8(4-13)年 vs 8(4-14)年
   BMI: 30.7±4.7 vs 31.0±4.8
   CVD既往: 43% vs 41%
   baseline A1c: 7.8(7.0-8.9)% vs 7.9(7.1-8.9)%
 使用治療薬:
   β遮断薬: 55% vs 54%
   ACE阻害薬: 63% vs 63%
   ARB: 7% vs 7%
   カルシウム拮抗薬: 34% vs 37%
   抗血小板薬: 85% vs 83%
   aspirin: 75% vs 72%
   statins: 43% vs 43%
4-1.ITT解析か?: ITT解析されている
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: ない.脱落は,治療中止も含めるとpioglitazone群で428人,placebo群で439人なので,追跡率は83.4%(4371/5238)
治療中止はplacebo群でやや多い程度だが,副作用での中止はpioglitazone群で235人,placebo群で202人とpioglitazone群の方が多い.
これに対して,治療中止希望をした患者がpioglitazone群で149人,placebo群で167人とplacebo群の方が多い.
また,その他の理由による治療中止もpioglitazone群で43人,placebo群で69人とplacebo群の方が多い.
これら,placebo群の方が多い理由が明らかにされていない.
本研究はマスキングされているが,HbA1cの下がり方を見ればpioglitazone群なのか,placebo群なのか分かってしまうので,意図的に治療中止を希望するように患者に仕向けた可能性は否定できない.
5.マスキング(盲検化)されているか?: double blindと書かれているが,患者,医師,outcome評価者,統計解析者の全てがマスキングされていると思われる
6.症例数は十分か?: 
 primary endpointに有意差はないが,集めた症例は5238人で計算されたサンプルサイズの5000人を超えているので,十分足りている
 計算された症例数: 5000人
 placebo群のイベント発症率: 年率6%
 治療効果の大きさ: 20%減少
 alfa level: 5%(両側)
 検出力: 91%
 ※検出力を維持するために,760人がいずれかのendpointを起こすまで全患者を追跡した
7.結果の評価:
追跡期間は平均34.5ヶ月.
primary endpointの結果はFigure 2にある.

primary endopoint(複合心血管イベント)の効果
19.7%(514/2605) vs 21.7%(572/2633),HR 0.90(0.80〜1.02),p=0.095
有意差はなく,pioglitazoneが心血管イベントを減らすとは言えない.

prespecified secondary endpoints(Main secondary endpoint): 総死亡,心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を除く),脳卒中のいずれかが最初に起こる
 11.6%(301/2605) vs 13.6%(358/2633),HR 0.84(0.72〜0.98),p=0.027
 ARR 13.6−11.6=2.0%
 NNT 50(34.5ヶ月)
有意差はあり,”総死亡,心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を除く),脳卒中のいずれかが最初に起こる”というアウトカムについては,pioglitazoneの服用で有意に減る.

個々のendpointについては,一つとして有意差が出ていない.

副作用については,Table 9にある.
 全ての心不全については,11% vs 8%で,RR 1.375,RRI 37%,ARI 3%,NNH 33(34.5ヶ月),p<0.0001
 心不全での入院については,6% vs 4%で,RR 1.5,RRI 50%,ARI 2%,NNH 50(34.5ヶ月),p=0.007
また,表中にはないが低血糖と浮腫についての副作用は以下の通り.
 低血糖症状: 27.9% vs 20.1%,RR 1.39,RRI 39%,ARI 7.8%,NNH 12(34.5ヶ月)
 心不全を伴わない浮腫: 21.6% vs 13.0%,RR 1.66,RRI 66%,ARI 8.6%,NNH 11(34.5ヶ月)

 HbA1cの変化:
   pioglitazone群: -0.8%
   placebo群: -0.3%

ディスカッション:

  • 本研究では,primary endpointには有意差がみられなかった.
  • secondary endpointも,研究デザイン論文で示されていて予め決められていた個別の項目では,1つとして有意差がみられたものはなかった.
  • ”Main secondary endpoint”では,16%有意に減少という結果が出た.
    primary outcomeや個々のアウトカムで有意差がなくて,”Main secondary endpoint”で有意差があるというのはどういう意味か.
    本文中には,”Main secondary endpoint”という文字はないが,”prespecified secondary endpoints”と書かれており,研究計画段階で予め決められたoutcomeであることが分かる.
    しかし,本研究のデザイン論文(Diabetes Care 2004;27:1647)をみると,このようなoutcomeは設定されていない.
    つまり,論文中にある”prespecified”というのはウソであることが分かる.
    Table 4を見て,有意差が出そうな組み合わせを作ったと考えるのが自然だろう.
    そういう目で見ると,総死亡,心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を除く),脳卒中という組み合わせで,なぜ無症候性心筋梗塞が除かれているのか(糖尿病患者の心筋梗塞では無症状のことも多いのに),不自然な点に気付く.
    結局,”Main secondary endpoint”というこの論文でのみ出てくる奇妙なendopointは,後出しジャンケンで作られた恣意的なものであり,これをもってpioglitazoneが大血管イベント予防に有効とは言えない.
  • 百歩譲って,pioglitazoneが大血管イベント予防に有効と言えたとしても,RRR 16%減,NNT 50に対して,心不全がRRI 37%,NNH 33,心不全による入院はRRI 50%,NNH 50,低血糖はRRI 39%,NNH 12,浮腫はRRI 66%,NNH 11と,効果より重篤な副作用の方が大きく上回っており,pioglitazoneを投与するのは倫理的に問題が大きいと言えよう.
  • さらに,HbA1cが0.5%より下がったにもかかわらず有意差が出なかったということは,純粋にこの論文のデータだけからであれば,placebo群でより使用が多かったインスリンやメトホルミンを増量してpioglitazone群と同じくらい血糖を下げたらoutcomeの発生を減らせるかも知れないといえる.

結局のところ,どうすればいいのか:

  • pioglitazone(アクトス)は臨床的に意味のある効果があると言えず,副作用が強く,費用が高いので,糖尿病治療に使用すべきではない.

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