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なんごろく−糖尿病

 UKPDS80

Holman RR, Paul SK, Bethel MA, Matthews DR, Neil HA.
10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes.
N Engl J Med. 2008 Oct 9;359(15):1577-89. Epub 2008 Sep 10.
PubMed PMID: 18784090.

チェックシートは はじめてトライアルシート5.5

背景: UKPDSにおいて,2型糖尿病患者が集中血糖治療を行うと,細小血管障害のリスクが減らせた.
試験後の経過観察で,この血糖コントロール改善
が持続するか,また大血管アウトカムに関して長期的効果を持つか調べた.
カテゴリー: 予防
研究デザイン:
 ランダム化比較試験
資金源: Supported for the first 5 years of post-trial monitoring by the U.K. Medical Research Council, U.K. Department of Health, Diabetes UK, the British Heart Foundation, and the U.K. National Institute for Health and for the final 5 years by Bristol-Myers Squibb, GlaxoSmithKline, Merck Serono, Novartis, Novo Nordisk and Pfizer. The original UKDPS interventional trial was supported by the U.K. Medical Research Council, British Diabetic Association, U.K. Department of Health, U.S. National Eye Institute, U.S. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases, British Heart Foundation, Wellcome Trust, Charles Wolfson Charitable Trust, Clothworkers' Foundation, Health Promotion Research Trust, Alan and Babette Sainsbury Trust, Oxford University Medical Research Fund Committee, Novo Nordisk, Bayer, Bristol-Myers Squibb, Hoechst, Lilly, Lipha, and Farmitalia Carlo Erba, with consumables or logistical support from Boehringer Mannheim, Becton Dickinson, Owen Mumford, Securicor, Kodak, Cortecs Diagnostics, Glaxo Wellcome, SmithKline Beecham, Pfizer, Zeneca, Pharmacia, Upjohn, and Roche.
利益相反: Dr. Holman reports receiving grant support from Asahi Kasei Pharma, Bayer Healthcare, Bayer Schering Pharma, Bristol-Myers Squibb, GlaxoSmithKline, Merck, Merck Serono, Novartis, Novo Nordisk, Pfizer, and Sanofi-Aventis, consulting fees from Amylin, Eli Lilly, GlaxoSmithKline, Merck, and Novartis, and lecture fees from Astella, Bayer, GlaxoSmithKline, King Pharmaceuticals, Eli Lilly, Merck, Merck Serono, Novo Nordisk, Takeda, and Sanofi-Aventis, and owning shares in Glyme Valley Technology, Glyox, and Oxtech; Dr. Paul, receiving consulting fees from Amylin; Dr. Bethel, receiving grant support from Novartis and Sanofi-Aventis and lecture fees from Merck and Sanofi-Aventis; Dr. Matthews, receiving lecture and advisory fees from Novo Nordisk, GlaxoSmithKline, Servier, Merck, Novartis, Novo Nordisk, Eli Lilly, Takeda, and Roche and owning shares in OSI Pharmaceuticals and Particle Therapeutics; and Dr. Neil, receiving consulting fees from Merck, Pfizer, Schering-Plough, and Solvay Healthcare. The Oxford Centre for Diabetes, Endocrinology and Metabolism (OCDEM) has a Partnership for the Foundation of OCDEM, with Novo Nordisk, Takeda and Servier. No other potential conflict of interest relevant to this article was reported.
本研究は,UKPDS33,UKPDS34の試験終了後長期追跡研究である.
UKPDS33は,発症早期の2型糖尿病患者が,SU剤とinsulinを中心とする集中的な血糖コントロールを行うと,標準治療と比較して,大血管障害は予防できなかったが,細小血管障害が予防できたという研究.
UKPDS34は,発症早期の肥満2型糖尿病患者が,metforminを中心とする集中的な血糖コントロールを行うと,標準治療と比較して,大血管障害は予防できたが,細小血管障害が予防できなかったという研究.
1.論文のPECO:(UKPDS33,UKPDS34)
P: 空腹時血糖108mg/dL以上が2回記録され2型糖尿病と診断された25〜65歳
   exclusion: ケトン尿,血漿クレアチニンレベルが2.0mg/dL以上,組み入れ前年に心筋梗塞,現在狭心症や心不全を合併,
           大血管イベントの既往のあるもの,レーザー治療の必要な網膜症,悪性高血圧,未補整の内分泌疾患,
           インスリン治療ができない職業,生存期間が制限されている重症疾患を合併,研究のプロトコールを十分理解できない,
           研究への参加を希望しない
E: 集中的な血糖コントロール(SU剤やinsulin,または理想体重の120%を超えるならmetformin)
C: 従来通りの血糖コントロール(食事療法)
O: primary(複合):複合大血管イベントと複合細小血管イベントの合計とそれぞれ
   大血管イベントは,心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中と定義
   細小血管イベントは,腎症と網膜症の新規発症と悪化
    腎症:マクロアルブミン尿症(尿中アルブミン300microg/mgCr),血漿クレアチニンが2.26mg/dL以上で倍加,腎代替療法を要する,腎疾患死
追跡期間は,SU-insulin群が10.0年,metformin群が10.7年
1.論文のPECO:(本研究)
P: 1997年9月30日に生存していた全てのUKPDS33,UKPDS34の患者(最初の研究参加者の78%)
E/C: 可能な限りの治療(両群で治療法を変えない)
O: 糖尿病関連エンドポイント(突然死,高血糖や低血糖による死亡,致死性と非致死性心筋梗塞,狭心症,心不全,致死性と非致死性脳卒中,腎不全,下肢切断,硝子体出血,網膜光凝固,片目の失明,白内障除去)
   糖尿病関連死(突然死や,心筋梗塞,脳卒中,末梢血管疾患,腎疾患,高血糖,低血糖による死亡)
   総死亡
   心筋梗塞(突然死や,致死性と非致死性心筋梗塞)
   脳卒中(致死性と非致死性脳卒中)
   末梢血管疾患(一趾以上の切断か末梢血管疾患による死亡)
   細小血管障害(硝子体出血,網膜光凝固,腎不全)
2.ランダム割付けされているか?: されている,中央割付け方式でconcealmentもされている
3.Baselineは同等か?: 同等.
 患者背景:(SU-insulin群:標準治療群 vs 集中治療群,metformin群:標準治療群 vs 集中治療群)
   平均年齢: 63±9歳 vs 63±9歳(p=0.78),63±9歳 vs 64±9歳(p=0.56)
   診断からの年数: UKPDS33,UKPDS34では新規発症糖尿病患者を対象としており,それぞれ10.0年,10.7年追跡したので,UKPDS80開始時は,発症から10年経過していることになる.
   CVD既往: 32.2% vs 32.3%
   baseline A1c: 8.5% vs 7.9%(p<0.001),8.9% vs 8.4%(p=0.12)
   BMI: 28.7±5.6 vs 29.3±5.5(p=0.005),32.2±5.7 vs 31.7±5.4(p=0.34)
 最終A1c:(本文中に数値が書かれていないので,Figure 2から読みとった値)
   SU-insulin群: 標準治療群も集中治療群も7.8%程度
   metformin群: 標準治療群も集中治療群も8.0%程度

4-1.ITT解析か?: ITT解析されている
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: ない.脱落率が3.5%なので,追跡率は96.5%
5.マスキング(盲検化)されているか?: outcome評価者のみマスキングしている.
6.症例数は十分か?: 
 有意差があるので,症例数は十分.
 本研究は,UKPDS33とUKPDS34の試験終了後長期追跡研究なので,本研究のためには症例数の計算は行われていない.
7.結果の評価:
追跡期間はSU-insulin群は8.5年(UKPDS33からは16.8年),metformin群は8.8年(UKPDS34からは17.7年).
メインとなる結果はTable 2にある(集中治療群 vs 標準治療群).
SU-insulin群(UKPDS33の長期追跡)
 糖尿病関連エンドポイント: 1000人年中 48.1人 vs 52.2人,RR 0.91(0.83〜0.99),p=0.04
 糖尿病関連死: 1000人年中 14.5人 vs 17.0人,RR 0.83(0.73〜0.96),p=0.01
 総死亡: 1000人年中 26.8人 vs 30.3人,RR 0.87(0.79〜0.96),p=0.007
 心筋梗塞: 1000人年中 16.8人 vs 19.6人,RR 0.85(0.74〜0.97),p=0.01
 脳卒中: 1000人年中 6.3人 vs 6.9人,RR 0.91(0.73〜1.13),p=0.39
 細小血管障害: 1000人年中 11.0人 vs 14.2人,RR 0.76(0.64〜0.89),p=0.001
metformin群(UKPDS34の長期追跡)
 糖尿病関連エンドポイント: 1000人年中 45.7人 vs 53.9人,RR 0.79(0.66〜0.95),p=0.01
 糖尿病関連死: 1000人年中 14.0人 vs 18.7人,RR 0.70(0.53〜0.92),p=0.01
 総死亡: 1000人年中 25.9人 vs 33.1人,RR 0.73(0.59〜0.89),p=0.002
 心筋梗塞: 1000人年中 14.8人 vs 21.1人,RR 0.67(0.51〜0.89),p=0.005
 脳卒中: 1000人年中 6.0人 vs 6.8人,RR 0.80(0.50〜1.27),p=0.35
 細小血管障害: 1000人年中 12.4人 vs 13.4人,RR 0.84(0.60〜1.17),p=0.31
各群の血糖の動きは,Figure 2にある.
これによると,SU-insulin群ではUKPDS33終了後,長期追跡開始時点で標準治療群と集中治療群の間にA1c値に違いがあったが,1年後には差がなくなっていた.
その後も,両群間にA1cの違いはなかった.
metformin群の方は,UKPDS34終了後,長期追跡開始時点で標準治療群と集中治療群の間にA1c値に違いがなく,その後も違いが生じることはなかった.

ディスカッション:

  • 非肥満患者を対象としたUKPDS33では,SU剤とinsulinによる血糖集中治療を行うと大血管障害は減らさず,細小血管障害を減らせたが,その後長期追跡調査を行うと,両群でA1cの性消失するにもかかわらず,細小血管障害の減少効果はそのまま維持され,さらに大血管障害も減らせるようになった.
    つまり,発症初期の10年を厳格に血糖コントロールしさえすれば,10年以降に多少血糖コントロールが甘くなっても,効果は持続する.
    この,発症初期に厳格な血糖コントロールを行ったものが,その後も効果が持続することをLegacy effect(持ち越し効果)と呼んでいる.
  • 肥満患者を対象としたUKPDS34では,metforminによる血糖集中コントロールを行うと大血管障害は減り,細小血管障害は減らなかったが,その後長期追跡調査を行うと,両群でA1cの違いがないにもかかわらず,大血管障害の減少効果はそのまま維持された
    ただ,細小血管障害は有意に減らすことができなかった
    こちらの方でも,Legacy effectの存在が確認できた.
  • アウトカムの中では,両群とも心筋梗塞が有意に減ったにもかかわらず,脳卒中と末梢血管疾患の発症は減らなかった.
    これは,本当に心筋梗塞だけが減るということではなく,発症率が高いものだけに有意差が生じたとと思われる.

結局のところ,どうすればいいのか:

  • 発症初期の糖尿病患者には,最初の10年間は厳格な血糖コントロールが達成できるように努力し,それ以降は,多少手を抜いてもよい.
  • 発症10年目以降の血糖コントロールは,本研究ではA1c 8%(日本の測定系JDS値ではHbA1c 7.6%)程度であるが,それより厳しくコントロールしたらもっと転帰が良くなるかどうかは不明である.

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