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なんごろく−感染症

敗血症と敗血症性ショックの新しい診断基準(Sepsis-3) (最終更新2016/3/1)
インフルエンザ治療にラピアクタ(R)(ペラミビル)を使うべきか (最終更新2016/1/28)
ワクチンを打つときのテクニック (最終更新2012/12/29)
食中毒発病までの時間・症状 (最終更新2009/8/6)

 敗血症

敗血症と敗血症性ショックの新しい診断基準(Sepsis-3) (項目新設2016/2/23,最終更新2016/3/1)

European Society of Intensive Care MedicineとSociety of Critical Care Medicineが提唱する新しい敗血症の診断基準が発表された(JAMA 2016;315:801).

これまでは,感染+SIRS(体温,心拍数,呼吸数,白血球数)で診断されていたが,これでは非特異的すぎて,over diagnosisが問題になっていた.今回はSOFA scoreをベースしていて,3段階で判定するアルゴリズムになっている.臓器障害があることを重視した診断基準となっている一方,判定が容易になるように,検査をせずに判定できる項目で最初にスクリーニングをするようになっている.また,Severe Sepsisはなくなる.

1.まず,感染があることを確認.そして,qSOFA(Quick SOFA)Criteriaでスクリーニング.以下の2つ以上該当すれば次に進む.

 呼吸数≧22/分
 意識変容(指示に従えない)
 収縮期血圧≦110mmHg

2.次にSOFAで臓器障害の有無を評価.SOFA score(0〜24点)≧2点で敗血症と診断(一般病院では2点以上で死亡率10%).

      SOFA score
 0  1  2  3  4
 呼吸器  PaO2/FiO2比  >400
(RAでは>84)
 ≦400
(RAでは≦84)
 ≦300
(RAでは≦63)
 ≦200
呼吸器補助下
 ≦100
呼吸器補助下
 中枢神経  GCS  15  13〜14  10〜12  6〜9  <6
 心血管  平均動脈圧(mmHg)
 昇圧剤使用
 なし  <70 mmHg  ドパミン≦5γ or
ドブタミン投与
 ドパミン>5γ or
エピネフリン≦0.1γ or
ノルエピネフリン≦0.1γ
 ドパミン>15γ or
エピネフリン>0.1γ or
ノルエピネフリン>0.1γ
 腎機能  血清クレアチニン(mg/dL)
尿量(mL/日)
 <1.2
 1.2〜1.9
 2.0〜3.4
 3.5〜4.9
or <500
 >5.0
or <200
 肝機能  ビリルビン(mg/dL)  <1.2  1.2〜1.9  2.0〜5.9  6.0〜11.9  >12.0
 凝固  血小板(×103/mm2  >150  ≦150  ≦100  ≦50  ≦20
RA:room air

3.敗血症性ショックになっているかどうかを判定.十分な補液後に以下の2つとも満たすならば,敗血症性ショック

 平均動脈圧≧65 mmHgを保つために昇圧剤が必要
 血清乳酸値>2 mmol/L
 

SOFA scoreはベースラインが0であることが前提であるので,基礎疾患があってはじめからスコアが高い人ではそこからの2点以上の上昇があるかどうかで判定するとされている.
特に,今回敗血症性ショックの診断基準を作成するのに,Delphi法を用いて合意形成したとある.これは診療ガイドラインの推奨決定などで用いられる合意形成と同じ方法である.

ちなみに,同じ号に掲載されたスコアを評価した論文(JAMA 2016;315:762)では,qSOFAの各項目の院内死亡に対する調整済みオッズ比が示されており,呼吸数≧22/分は3.18(95%CI 2.89〜3.50),収縮期血圧≦100 mmHgは2.61(95%CI 2.40〜2.85),意識変容GCS≦13は4.31(95%CI 3.96〜4.69)と,意識変容が最も院内死亡と相関が高かった.

一方,今回の号の別の論文(JAMA 2016;315:775)によると,血清乳酸値が>2 mmol/Lをcut offとした時,院内死亡に対して感度82.5%,特異度22.4%,陽性尤度比1.06,陰性尤度比0.78であり,必ずしも識別能が高いわけではない.

新しい診断基準が発表されたのち,それに対する賛否両論が出ている.例えば,以下のような指摘がある.

新しい敗血症定義の10の問題
問題#1.Sepsis-Vは主観的な判断が残っている.
問題#2.qSOFAとSOFAは死亡予測であり,敗血症の検査ではない.
問題#3.Spesis-VはSepsisU(感染+SIRS)と比較して特異度が低い.
問題#4.qSOFAは死亡予測においてSIRSと同じような特性を持つ.
問題#5.qSOFAは低血圧,頻呼吸,せん妄を直接起こす疾患ではより特異的ではなくなるだろう.
問題#6.qSOFAは検証された予後モデル(CURB65)と矛盾する.
問題#7.qSOFAとSOFAスコアの組み合わせはICU外の患者ではエビデンスに基づかない.
問題#8.qSOFA+SOFAの組み合わせの死亡への特性は報告されていない.
問題#9.敗血症に対するSepsis-Vの全般的な感度はICU外では50%未満になるだろう
問題#10.Sepsis-Vは米国においてコンセンサスガイドラインではない.

 インフルエンザ

インフルエンザ治療にラピアクタ(R)(ペラミビル)を使うべきか (項目新設2016/1/28)

ラピアクタ(R)といえば,2014年にタレント教育学者を担いで露骨な宣伝CMを打ったことで,私の中では印象が悪いです.おそらく同様に悪い印象を持っている医療者は多いと思います.

ラピアクタは単回投与するもの思っていましたが,症状によって連日反復投与できるようです.添付文書の記載は以下のようになっています.

用法・用量
成人:通常,ペラミビルとして300mgを15分以上かけて単回点滴静注する。
合併症等により重症化するおそれのある患者には,1日1回600mgを15分以上かけて単回点滴静注するが,症状に応じて連日反復投与できる。
なお,年齢,症状に応じて適宜減量する。

そして,「用法・用量に関連する使用上の注意」には,1回投与量の目安として,「重症化する恐れのある患者の場合」には腎機能に応じて倍量投与するよう定められています.

DynaMedを見ると,peramivirは発症24時間以内に使用しないと意味が無いとして,peramivirについてのRCTのサブ解析の結果(Antimicrob Agents Chemother 2010;54:4568)が根拠として挙げられています.
300人の生来健康な20〜64歳のインフルエンザ成人患者に対するperamivir 300mg,600mg,プラセボの比較で,全体ではプラセボと比較してperamivir投与で有意に有症状期間が短くなりました.その差は300mgと600mgのどちらも22時間ほど.投与量を増やしたからといって有症状期間が短くなるわけではありません.
ウイルスサブタイプについては,A/H3で600mgを使用した場合に一番効果がありそうな結果でしたが,症例数が少ないので,なんとも言えません.
薬剤投与開始までの罹病期間については,DynaMedの記載に反して,発症24時間以内でも24〜48時間でも有意差は見られませんでした.発症24時間以内に使用したほうが短くなりそうな感じではありますが,おそらく症例数不足による検出力不足だと思います.

健康インフルエンザ患者の有症状期間に対するperamivirの効果
Subgroup Peramivir 300 mg
(n = 99)
Peramivir 600 mg
(n = 97)
Placebo
(n = 100)
Overall 59.1時間
p = 0.0092
59.9時間
p = 0.0092
81.8時間
ウイルスサブタイプ   
A/H1 52.5時間
p = 0.1458
62.6時間
p = 0.5384
81.4時間
A/H3 76.1時間
p = 0.0556
50.5時間
p = 0.0008
81.0時間
研究前の有症状期間 
発症0〜24時間(n = 158) 57.2時間
p = 0.0516
56.1時間
p = 0.0516
86.7時間
発症24〜48時間(n = 138) 69.1時間
p = 0.1118
64.7時間
p = 0.1118
79.8時間
p値は調整済みの検定で,すべてプラセボとの比較

一方UpToDateには,FDAの文書として,297人のインフルエンザ患者をプラセボ,peramivir 300mg,600mgで比較したRCTの結果が示されていて,600mg投与はプラセボと比較して症状を平均21時間,解熱を12時間早かったとしています.しかしなぜか300mgの効果は示されておらず,また入院が必要となるようなインフルエンザ患者では効果はわからなかったと書かれていました.
もう1つ,oseltamivir(タミフル(R))との比較の1091人のインフルエンザ成人を対象したRCT(Antimicrob Agents Chemother 2011;55:5267)があり,こちらは,peramivir 300mg,600mg,oseltamivirの有症状期間が78時間,81時間,82時間でperamivir両群ともoseltamivirとの非劣性が証明されたとしています.この研究では300mgと600mgで効果に違いはないとされていましたが,37例のハイリスク患者(免疫抑制状態,慢性呼吸器疾患,糖尿病)でのサブ解析(Antimicrob Agents Chemother 2011;55:2803)では600mgの方が300mgよりも良かったことを示していました.しかも,有症状の中央値は42時間vs 114時間であり,HR 0.50(0.25〜0.98)となって劇的な効果であることを示しています(ただし,oseltamivirとの比較のデータはない).

健康インフルエンザ患者の有症状期間に対するperamivirの効果
Subgroup Peramivir 300 mg
(n = 364)
Peramivir 600 mg
(n = 362)
Oseltamivir
(n = 365)
Overall 78.0時間 81.09時間 81.8時間
ウイルスサブタイプ   
A/H1 80.2時間 83.6時間 88.8時間
A/H3 69.9時間 70.6時間 75.1時間
B 55.3時間 92.8時間 92.7時間
B型のperamivir 300 mgのみ,oseltamivirと比較して有意な減少あり,他は非劣性

Peramivirの効果と安全性についてのレビュー(Drug Des Devel Ther 2014;8:2017)があり,11件の臨床試験のうち,2件がoseltamivirとの比較で,残り9件中7件が用量反応関係にあったと結論付けられていました.ただ,その結果はメタアナリシスされておらず,そもそもこのレビューはシステマティックレビューではないので,本当に用量反応関係があるかどうかは不明です.

Peramivirの副作用は,oseltamiirと異なるところでは,下痢の副作用が多く(ただし,プラセボと変わらず15%程度),また稀ながらStevens-Johnson症候群や多形性紅斑などの重篤な皮膚または過敏性反応があるので,特別に注意する必要があります.

ちなみに薬価は,以下のとおりです.治療にかかる薬剤費はラピアクタ(R)はタミフル(R)と比較して300mgで倍,600mgで4倍になります.これは単回投与での話なので,連日投与になるともっとコストがかかることになります.

薬価
商品名 単価 使用方法 治療費
Oseltamivir タミフルカプセル75 317.9円/カプセル 1日2回,5日間  3,179円
タミフルドライシロップ3% 244円/g
Peramivir ラピアクタ点滴静注液バイアル150mg15mL 3,338円/瓶 単回 300mg単回投与で6,676円
600mg単回投与で13,352円
ラピアクタ点滴静注液バッグ300mg60mL 6,216円/袋 300mg単回投与で6,216円
600mg単回投与で12,432円

結論として,ペラミビルがオセルタミビルよりも有効するデータはありませんでした.薬価がとても高いので,インフルエンザ治療のルーチンでラピアクタ(R)(ペラミビル)を用いるのは厳に慎むべきであり,重症例だからより大きな効果を期待してペラミビルを用いるというのも論理的ではありません.経口摂取困難の患者の場合に限り,しかも(600mgではなく)300mgを単回投与とするべきだと思います.

 ワクチン

ワクチンを打つときのテクニック (項目新設2012.12.29)

小ネタですが,乳児や小児にワクチンを打つときには,以下のようにする方が痛みが少ないようです(Clin Ther 2009;3:S48).
  • 臥位よりも,座位もしくは親が抱っこした状態で打つ(SMD -0.4〜-0.8,p<0.05)
  • ワクチンを打つ前や打っている間に刺入部の近くの皮膚を叩いたり,抑えたりする(SMD -0.53,p=0.03)
  • 筋注をする際には,一度陰圧にしてからゆっくりと注入するより,陰圧にせずに急速に注入する(SMD -0.62〜-0.97,p<0.05)

 食中毒

食中毒発症までの時間・症状 (項目新設2009.8.6)

病因物質名 主な感染経路など 発病までの時間 主な症状
シアン化合物 工業用用途(メッキなど),化学繊維の燃焼でガスが発生 数秒から1分程度 失神,痙攣,呼吸麻痺
有機リン 農薬・殺虫剤・除草剤など 数分 縮瞳,痙攣,失禁,嘔吐
トリカブト 鑑賞用の花・漢方薬にも使う 数十分 嘔吐,下痢,呼吸困難
貝毒 二枚貝(ホタテガイ・ムラサキガイ・アサリ・カキ) 30分から数時間 麻痺,水様下痢,嘔吐,嘔気,腹痛
セレウス菌 肉類,スープ類,焼き飯,ピラフなど中途半端な加熱料理など 嘔吐型は1〜5時間
下痢型は8〜15時間
嘔吐型は黄色ブドウ球菌食中毒に類似
下痢型ははウエルシュ菌食中毒に類似
黄色ブドウ球菌 常在菌・化膿した手などによる調理 1〜5時間(平均3時間) 嘔気,嘔吐,腹痛(下痢)
フグ毒 ふぐの肝臓・卵巣 5〜45分 嘔吐,しびれ,麻痺(呼吸筋)
リステリア 乳製品・食肉加工品など 数時間〜概ね3週間 発熱,頭痛,悪寒,嘔吐
ウエルシュ菌 多種多様の煮込み料理(カレー,煮魚,麺のつけ汁,野菜煮付け)など 8〜12時間 下痢,腹痛(通常は軽症で1日で回復)
ボツリヌス菌 缶詰,瓶詰,真空パック食品,レトルト類似食品など 8〜36時間 めまい,頭痛,言語障害,嚥下障害,呼吸困難,乳児では便秘
サルモネラ属菌 卵,またはその加工品,食肉(牛レバー刺し,鶏肉)など 8〜48時間 嘔気,嘔吐,腹痛,下痢,発熱
腸炎ビブリオ 魚介類(刺身,寿司,魚介加工品)とその二次汚染など 平均12時間 腹痛,激しい下痢,嘔気,嘔吐,発熱
病原性大腸菌(下痢原性大腸菌) 牛肉の加熱不足(牛レバー刺し,ハンバーグ,牛角切りステーキ,牛タタキ),牛の糞を堆肥に使った野菜など 12〜72時間(菌種により異なる) 下痢(血性を含む),腹痛,発熱,嘔吐
ノロウイルス 貝類(二枚貝),調理による食品の汚染(二次汚染) 24〜48時間 嘔気,嘔吐,激しい下痢,腹痛,頭痛
カンピロバクター 食肉(鶏刺し,生レバー等の生食など),飲料水,生野菜,牛乳など 平均2〜3日と長い 腹痛,激しい下痢,発熱,嘔吐,筋肉痛
エルシニア 食肉,サンドイッチ,野菜ジュース,井戸水など 平均2〜5日と長い 腹痛,下痢,発熱,その他虫垂炎様症状など多様な症状
キノコ毒 ツキヨタケ,クサワラベニタケ,カキシメジなど 毒性の種類により異なる 嘔吐,腹痛,下痢,痙攣,昏睡

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