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なんごろく−感染症

 インフルエンザに対するゾフルーザ(R)(バロキサビル)の効果

Hayden FG, Sugaya N, Hirotsu N, Lee N, de Jong MD, Hurt AC, Ishida T, Sekino H, Yamada K, Portsmouth S, Kawaguchi K, Shishido T, Arai M, Tsuchiya K, Uehara T, Watanabe A; Baloxavir Marboxil Investigators Group.
Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents.
N Engl J Med. 2018 Sep 6;379(10):913-923. doi: 10.1056/NEJMoa1716197.
PubMed PMID: 30184455.

批判的吟味日時:2018年11月14日,2019年2月11日更新
チェックシートは はじめてトライアルシート6.2

カテゴリー: 治療
研究デザイン:
 ランダム化比較試験
資金源: シオノギ
利益相反: Dr. Hayden reports receiving consulting fees, paid to the Robert Ford Haitian Orphanage and School Foundation, from Shionogi, Seqirus, and PrEP Biopharm, receiving fees for serving on a data and safety monitoring board, paid to the University of Virginia, from GlaxoSmithKline, receiving fees for serving as chair of a data and safety monitoring board, paid to the University of Virginia, from Celltrion and Vaccitech, receiving travel support from Shionogi, and serving as an unpaid consultant to Cocrystal Pharma, Farmak, Fujifilm/Toyama Chemical/MediVector, GlaxoSmithKline, Janssen, MedImmune, Regeneron, resTORbio, Roche/Genentech, Vir Biotechnology, and Visterra; Dr. Sugaya, receiving lecture fees from Chugai Pharmaceutical, Daiichi Sankyo, Merck Sharp & Dohme, Astellas Pharma, and Denka Seiken and consulting fees and lecture fees from Shionogi; Dr. Hirotsu, receiving consulting fees and lecture fees from Shionogi; Dr. Lee, receiving consulting fees, lecture fees, and travel support from Seqirus and Janssen Pharmaceuticals; Dr. de Jong, serving on an advisory board and receiving travel support and fees for serving on an independent data and safety monitoring board, paid to his institution, from Janssen, serving on an advisory board and receiving travel support, paid to his institution, from MedImmune, serving on an advisory board and receiving travel support from Shionogi, and serving on an independent data and safety monitoring board and receiving travel support, paid to his institution, from GlaxoSmithKline and Vertex Pharmaceuticals; Dr. Sekino, receiving grant support from Daiichi Sankyo; Dr. Portsmouth, Ms. Kawaguchi, Dr. Shishido, Mr. Arai, and Dr. Uehara, being employed by Shionogi; Mr. Tsuchiya, being employed by and holding stock in Shionogi; and Dr. Watanabe, receiving consulting fees and lecture fees from Chugai Pharmaceutical, GlaxoSmithKline, Mitsubishi Tanabe Pharma, Janssen Pharmaceuticals, and Sumitomo Dainippon Pharma, grant support, consulting fees, and lecture fees from Daiichi Sankyo, grant support and lecture fees from Shionogi, grant support and consulting fees from Toyama Chemical, and grant support from Fujifilm Pharmaceuticals, Meiji Seika Pharma, and Kyorin Pharmaceutical. No other potential conflict of interest relevant to this article was reported.
1.論文のPICO:
Phase 2 trial
P: 2015年12月〜2016年3月に急性インフルエンザに罹患した20〜64歳の日本人成人
   腋窩温で38℃以上の発熱と,1つ以上の全身症状と1つ以上の中等度以上の呼吸器症状があり,48時間を越えない
   rapid antigen testで陽性
   除外基準:
    1.入院治療が必要となる重度のインフルエンザウイルス感染患者
    2.以下のリスクファクターを有する患者
     ・妊婦か出産2週以内の女性
     ・施設入所者(高齢者福祉施設やナーシングホームなど)
     ・喘息を含む慢性呼吸器疾患
     ・神経疾患,神経発達疾患(脳,脊髄,末梢神経,筋肉を含む)
      例:脳性麻痺,てんかん,脳卒中,知的障害,中等度〜重度の発達遅延,筋ジストロフィー,脊髄損傷
     ・心疾患(他の心臓関連症状のない高血圧を除く)
     ・血液疾患
     ・内分泌疾患(糖尿病を含む)
     ・腎疾患
     ・肝疾患
     ・代謝疾患
     ・免疫不全(免疫抑制薬を投与されている患者や癌やHIV感染患者を含む)
     ・重度の肥満(BMI≧40)体重40 kg未満,入院するような疾患を合併
    3.抗菌薬治療が必要な感染の合併(皮膚感染症は除く)
    4.組み入れ前7日以内にペラミビル(ラピアクタ(R)),ラニナミビル(イナビル(R)),
      オセルタミビル(タミフル(R)),ザナミビル(リレンザ(R)),アマンタジン(シンメトレル(R))を服用している患者
    5.組み入れ時に妊娠,授乳,妊娠検査陽性の女性.ただし,以下の女性には組み入れ時の妊娠検査は不要
     ・閉経後女性(2年以上規則的な月経がなく,卵胞刺激ホルモン試験で確認されていることで定義)
     ・子宮摘出術,両側卵巣摘出術,または卵管結紮による外科的に不妊である女性
    6.重度の基礎疾患のある患者
     重度の定義は,“Seriousness Classification for Adverse Reactions to Pharmaceutical Products
     etc.”でGrade 3に定義されている重症度
    7.組み入れ前90日以内に試験薬に暴露された患者
    8.過去にS-033188を服用した患者
    9.研究者や副研究者より研究に参加することが不適切と考えられた患者

I/C: バロキサビル10 mg,20 mg,40 mg,プラセボに1:1:1:1で割り付け

Phase 3 trial
P: 2016年12月〜2017年3月にインフルエンザ様症状を呈した米国と日本の12〜64歳の外来患者
   腋窩温で38℃以上の発熱と,1対所の全身症状と1つ以上の中等度以上の呼吸器症状があり,48時間を越えない
   rapid antigen testは行わない
   除外基準:
    妊婦,体重40 kg未満,入院するような疾患を合併
I/C: 20〜64歳は以下を2:2:1で割り付け
     ・バロキサビル(体重<80 kgが40 mg,≧80 kgが80 mg)1回
     ・オセルタミビル75 mg 1日2回5日間
     ・プラセボ
     12〜19歳は以下を2:1で割り付け
     ・バロキサビル
     ・プラセボ

O: primary efficacy end point:症状緩和までの時間,試験レジメンの開始から全7つのインフルエンザ関連症状が少なくとも21.5時間ない(0)か軽度(1)と患者が評価した
   7つのインフルエンザ関連症状:咳,咽頭痛,頭痛,鼻閉,発熱または悪寒,筋痛または関節痛,倦怠感
                      4ポイントスケール:0無症状,1軽度症状,2中等度症状,3重度症状
   secondary clinical end point:解熱までの時間
                     通常の健康状態に戻るまでの時間
                     抗菌薬を使用する新たな合併症が発生
   virologic end point:ウイルスとウイルスRNA力価のベースラインからの変化
               ウイルス検出の期間
               バロキサビルの感受性減少と関連するアミノ酸変化の出現頻度
   safety end point:有害事象の頻度と重症度
アセトアミノフェンは使ってもよい.
それ以外の対症療法,インフルエンザ治療抗ウイルス薬,抗菌薬の使用は許可しなかった.
ただし,組み入れ後に細菌感染が疑われた場合の治療は除く.
2.ランダム割付けされているか?: されている.
詳細は付録のprotocolに記載されており,interactive web response system (IWRS)を用いてランダム割り付けされているので,concealmentもされている.ランダム割り付けの際にstochastic minimization method(確率的最小化法)を用いて7つのインフルエンザ症状の合計スコア(≦11か≧12)と現在の喫煙状態の2つの因子が同等になるようにしている.
3.Baselineは同等か?: Phase 2 trial,Phase 3 trialとも,両群のBaselineは同等と本文には書かれている.
ただし,Phase 3 trial(Table 1)のBaselineを見てみると,オセルタミビル群が喫煙者が多かったり(primary outcomeは症状が7つのインフルエンザ関連症状がすべて4段階の0と1になることなので,喫煙者はprimary outcomeを達成しにくい),より発症から治療開始までの時間が長い人が多かったり,(抗ウイルス薬が効きにくいとされる)B型が多かったり,ウイルス力価が高かったりしており,バロキサビル群に有利な分布になっているように見える.さらに,Phase 3 trialの20〜64歳だけを取り出したbaselineの比較であるTable S2では,バロキサビル群とオセルタミビル群は376名と377名で比較しているが,ここでも,両群の喫煙者の差は(成人例に限っているので)小さくなるが,それでも25.0 % vs 27.3 %とやはりオセルタミビル群のほうが多いし,発症から治療開始までの時間もオセルタミビル群の方が長いことには変わらない.
Phase 2 trialと異なり,Phase 3 trialでは迅速診断を行わずインフルエンザ様症状を呈する患者を組み入れ,解析時にrtPCR陽性の患者だけを解析対象としている.そのため,せっかくランダム割付けしているのに,baselineの特徴が異なってしまっている.組み入れ時に迅速診断を行うべきだったと考えられるが,発症早期では迅速診断の感度が低いためインフルエンザ症例を見逃してしまうことを恐れたものと思われる.発症からなるべく早く抗ウイルス薬の使用を開始したほうが効果が期待されるので,このようにしたのだろう.
4-1.ITT解析か?: いいえ.
方法のstatistical analysisの項に”intention-to-treat”という文字はあるが,これは,intention-to-treat infected patientsでありphase 2 trialの抗原陽性とphase 3 trialのrtPCR陽性患者を指すものである.Intention-to-treat analysis(ITT解析)とは異なるものである.
フローチャートのFigure 1(Phase 3 trial)を見ると,割り付けは,バロキサビル群/プラセボ群/オセルタミビル群が612/310/514人であるのに対して,解析したのが456/231/377人であり,始めの割り付けの人数が保持されていない(インフルエンザに罹患している患者だけを取り出しているので当たり前である).
実際に解析結果であるKaplan-Meier曲線のあるFigure 2の解説にはバロキサビル群455人,プラセボ群230人,Figure S4の解説にもバロキサビル群507人,オセルタミビル群514人と書かれており,いずれも割り付け時の人数になっていない.したがって,ITT解析ではない.Phase 2 trialでも同様である.
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: いいえ.
Phase 3 trialの脱落はバロキサビル群/プラセボ群/オセルタミビル群で34/20/16人であり,追跡率は1366/1436=95.1 % である.
しかし,本研究のprimary outcomeは「intention-to-treat infected populationにおける症状緩和までの時間」である(そのようにはっきり書かれていないが,症例数設計の根拠がその様になっていることから推測される).Intention-to-treat infected populationでの解析人数では,各群からRT-PCR assayでインフルエンザと診断されなかった患者だけを除くとすると,除外する人数は154+78+136=368人なので,追跡率は,(1366-368)/(1436-368)=998/1068=93.4 % である.ただ,脱落した患者の中にもらRT-PCR assayでインフルエンザと診断されない患者がいるはずなので,実際のintention-to-treat infected populationにおける追跡率は厳密にはこの値からずれる(追跡率はより高くなるはずである).
5.マスキング(盲検化)されているか?: double blindと書かれている.
Phase 3 trialは,トリプルダミーでマスキングされている.
6.症例数は十分か?: 有意差があるので,症例数は十分.
症例数の計算はされており,条件は以下の通り.
Phase 2 trial(Protocol)
 プラセボ群のインフルエンザ症状改善までの時間の中央値が100時間
 効果:プラセボ群と比較したハザード比が,40 mg群は0.65,20 mg群は0.7,10 mg群は0.8
 α:両側検定0.05
 検出力:80 %
 症例数:400人
Phase 3 trialでインフルエンザ陽性患者は65%
 効果:中央時間28時間早く治る
 α:両側検定0.05
 検出力:90 %
 症例数:1494人
7.結果の評価:
7-1.インフルエンザ症状改善効果
Phase 2 trialのインフルエンザ症状の改善効果の結果はSupplementary AppendixのFigure S2にある.
バロキサビルはプラセボと比較して有意に中央値1日ほど早く症状を改善させるが,10 mgでも,20 mgでも40 mgでもほぼ同じである.
  
Phase 3 trialの結果では,バロキサビルはプラセボと比較して,26.5時間(53.7時間 vs 80.2時間)早く治した(Figure 2).
解析は,インフルエンザに感染したintention-to-treat infected population,すなわちバロキサビル群は455名,プラセボ群は230名で行っている.Figure 1には,バロキサビル群とプラセボ群はそれぞれ456名と231名と書かれているので,各群1名ずつ減っているが,理由はよくわからない.
オセルタミビルとの比較では,効果はほぼ変わらないが,120時間(5日目)以降,バロキサビル群の治りが悪くなっているように見える(Figure S4).
こちらは,バロキサビル群507人,オセルタミビル群514人で解析を行っている.上記バロキサビル vs プラセボの比較とは解析方法が異なっていることに注意が必要である.intention-to-treat infected populationで解析した場合にどうなるかが知りたいところであるが,結果が載っていない.
また,バロキサビル群に分が悪い結果を本論文ではなく,付録に載せていているという点にも注意が必要である.
7-2.ウイルス力価に対する効果
ウイルス力価は,オセルタミビルと比較してバロキサビルは2日目と3日目のウイルス抗体価が低いが,それ以外では変わらない(Figure 3).
こちらは再びintention-to-treat infected populationでの解析となっている.
7-3.Secondary clinical end pointsについての効果
Secondary clinical end pointsの結果については以下の通りである.
   バロキサビル群  プラセボ群  オセルタミビル群  p値
 解熱までの時間  24.5時間  42.0時間    <0.001
 通常の健康状態に戻るまでの時間  129.2時間  168.8時間    0.06
 抗菌薬治療を要した合併症  2.5%  4.3%  2.4%  −
解熱までの時間と通常の健康状態に戻るまでの時間について,バロキサビル群とオセルタミビル群の比較結果が欲しいところだが,データは示されていない.
7-4.解析人数についてのまとめ
本研究は多様な解析をしているので,理解が難しい.難しい理由は,インフルエンザに罹患している患者と罹患していない患者が混じっていること,オセルタミビルは12〜19歳では使用されていないので,20〜64歳だけ取り出した解析があるからである.ここに,各解析の解析人数をまとめる.
 図表番号    内容  バロキサビル群  プラセボ群  オセルタミビル群  備考
 Figure 1     A  Baseline比較:合計  612  310  514  
 B  ITT safety population*  610  309  513  =Table 2
 C  ITT infected population*  456  231  377  
 D  インフルエンザにかかっていない患者(A-C)  156  79  137  
 Table 1     Baseline比較:Influenza-Positive  456  231  377  Cと同じ
   Baseline比較:Influenza-Negative  150  74  132  Dと違う!?
 Figure 2    TTAS**=primary outcome(バロキサビル vs プラセボ)  455  230    Cより各群1名ずつ少ない?
 Figure 3A    IIVLT(バロキサビル vs プラセボ)***  427  210    
 Figure 3B    IIVLT(バロキサビル vs オセルタミビル)***  352    359  20〜64歳
 Table S2    Baseline比較,20〜64歳  376    377  Cのうち20〜64歳だけ取り出した
 Figure S4    TTAS=primary outcome(バロキサビル vs オセルタミビル),20〜64歳  507    514  インフルエンザに罹患していない患者も含まれている
 Figure S5A    Influenza virus RNA loads(バロキサビル vs プラセボ)  456  231    Cと同じ
 Figure S5B    Influenza virus RNA loads(バロキサビル vs オセルタミビル)  376    377  Cのうち20〜64歳だけ取り出した
 Figure S6A    Time to cessation of infectious virus detections(バロキサビル vs プラセボ)  426  209    Cから症例が減っている
 Figure S6B    Time to cessation of infectious virus detections(バロキサビル vs オセルタミビル)  351    357  Cから症例が減っている
*ITT: Intention-to-treat
**TTAS: Time to Alleviation of Influenza Symptoms
***IIVLT: Influenza Infectious Viral Load over Time
7-5.薬剤耐性を示す変異ウイルスの発生について
活性エンドヌクレアーゼ部位(I38T/F)の特定のアミノ酸置換(ポリメラーゼ酸性蛋白PA変異)は,細胞培養における代表的なインフルエンザAウイルスのバロキサビルに対する感受性を11〜57倍低下させるとされている.Phase 2 trialのバロキサビル群の患者(すべてインフルエンザA(H1N1)pdm09感染)の2.2 %およびPhase 3 trialの患者(すべてインフルエンザA(H3N2)感染)の9.7 %で,バロキサビルに対する感受性の低下をもたらすI38T/M/F置換を有する変異型ウイルスが検出された.5日目のウイルス検出率は,I38T/M変異のないウイルスのバロキサビル群患者では7%,I38/T/M変異のあるバロキサビル群患者では91%,プラセボ群患者では31%と,変異型の場合にバロキサビルを使用してもウイルスが高率に残存した.9日目には,それぞれ2%,17%,6%と同様の傾向だった.また,I38T/M変異があるとない場合と比較して症状消失までの時間が長かった(63.1時間 vs 49.6時間)
7-6.副作用について
副作用についてはTable 2にある.オセルタミビルは過去の研究では1割程度に嘔気や嘔吐が出ているが,本研究のPhase 3 trialでは,わずか1.6 %しか発生していない.バロキサビルでは,嘔気は0.3 %しかない.薬剤によると思われる副作用はプラセボ群0.3 %に対して,バロキサビル群で0.3 %,オセルタミビル群で8.4 %と,バロキサビルはプラセボと同等の薬剤関連有害事象発生率となっている.しかし,有害事象全体の発症率では,プラセボ群が24.6 %に対して,バロキサビル群が20.7 %,オセルタミビル群が24.8 %となっており,プラセボを使用したほうがバロキサビルを使用するよりも有害事象が多いという奇異な現象が起こっている
7-7.B型インフルエンザについて
本研究におけるB型インフルエンザ患者は8〜9%程度しかいない.そのため,B型インフルエンザに対する効果は不明である.しかし,製薬会社のパンフレットには,ウイルス型別のウイルス放出抑制作用についての表があり,バロキサビルはオセルタミビル同様にA型と比較してB型のほうがウイルス力価が高くなっている.これは,オセルタミビルと同様にバロキサビルもB型インフルエンザには有効性がA型に劣ることが考えられる
季節性インフルエンザウイルスに対する増殖抑制作用(in vitro)
A型およびB型インフルエンザウイルス実験室株に対する各薬剤のウイルス放出抑制作用(EC90
 型/亜型  株  バロキサビル  オセルタミビル
 A/H1N1  A/WSN/33  0.79±0.13  161.12±186.18
 A/H1N1  A/WSN/33-NA/H274Y  0.46±0.14  >400
 A/H1N1  A/PR/8/34  0.79±0.12  180.50±73.86
 A/H3N2  A/Victoria/3/75  0.98±0.20  64.61±44.97
 A/H3N2  A/Hong Kong/8/68  0.64±0.30  44.15±25.68
 B  B/Maryland/1/59  3.08±1.16  245.75±165.74
 B  B/Hong Kong/5/72  2.21±0.65  537.50±211.21
 B  B/Lee/40  3.40±1.27  371.77±152.75
方法:5株のA型及び3株のB型インフルエンザウイルス実験室株をMDCK細胞に感染させ,種々の濃度の化合物存在下で培養し,翌日(A型およびB型ウイルスの培養期間はそれぞれ24及び30時間)の培養上清中に放出されたウイルス力価(50%組織培養感染量:TCID50)を測定した.化合物非存在下の条件に比べ,力価を1/10に抑制するために必要な各薬剤の濃度をEC90として算出した
結局のところ,この治療法は使えるのか:
  • 本研究はリスクの高くない患者に対してバロキサビルを使用するとウイルス力価が治療後2〜3日にオセルタミビルより下がるが,症状の改善までの期間は変えず,むしろ,120時間(5日目)後の以降は,バロキサビル群の治りが悪くなっているのではないかと疑われる (Phase 3 trial)
  • インフルエンザ様症状を呈する患者が組み入れられ,解析時にrtPCR陽性患者だけに限定して解析をしているため,両群の背景因子のバランスが崩れている(Phase 3 trial)
  • バロキサビルの効果は投与量と無関係である(Phase 2 trial)
  • 耐性ウイルスの発現率が高く,その場合バロキサビル投与によってもウイルス力価が下がらず症状が遷延する(Phase 3 trial)
  • プラセボ群のほうがバロキサビル群よりも有害事象発現率が高いという奇異な現象が起こっている(Phase 3 trial)
  • インフルエンザ様症状を呈する患者を組み入れて,解析時にインフルエンザに罹患した患者を選んでいるので,患者の背景因子がバロキサビル群のほうに有利に分布している(Phase 3 trial)
  • 糖尿病や喘息,脳卒中を持つ患者や妊婦などは治療対象に含まれない.すなわちこれらハイリスクの患者では,バロキサビルの効果は本研究からは不明である(Phase 2 trial,Phase 3 trial)
  • B型インフルエンザにはオセルタミビル同様効果が弱い可能性がある
  • 半減期が長く,1回服用で効果が持続するため,服薬アドヒアランスの向上が見込める一方,副作用発現時には休薬する手立てがなく,症状が遷延すると考えられる
以上より,バロキサビルはオセルタミビルよりも優れるとは言えず,むしろ劣っている可能性がある.
バロキサビルに関する情報はこちら.一般的な見解についてはこちら

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