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なんごろく−ポリファーマシーpolypharmacy

Beers criteria,STOPP,START (最終更新2017/11/29)
減薬プロトコルdeprescribing protocol (最終更新2017/11/29)

 Beers criteria,STOPP,START (項目新設2017/11/29,最終更新2017/11/29)

Beers criteria
介護施設入所者を対象として有害となる可能性のある薬剤をリストアップしたもの.
1991年に初版が発表されたが,1997年の改訂版で65歳以上のすべての高齢者に対象を拡大し,その後2003年2012年2015年と改訂されています.2003年版まではコンセンサスステートメントという形で推奨が示されていましたが,2012年版からは診療ガイドラインを作成する方法に則り,システマティックレビューを行って推奨を作成しています.
わが国では,2003年の改訂版を元に,日本版Beers criteriaが2008年に作られ,その後,日本老年医学会から「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」も発表されました. しかしどちらもシステマティックレビューを行っておらず,単一研究に基づくのみで推奨を作成するなど,不適切な作成方法が取られています.その結果,臨床現場で使用されることがほとんどない薬剤が含まれていたり,注意しながらであれば使用することが望ましい薬剤が使用すべきでないとされたりするなど,現場で混乱を生じる可能性があります.
STOPP/START
2008年には,STOPP/START criteriaが発表されました.
STOPP criteriaは潜在的に不適切な薬剤をスクリーニングするための基準であり,START criteriaは本来使用すべき薬剤が使用されていないことをスクリーニングするための基準です.STOPP/START criteriaは2015年に改訂されました.
ただ,これらの基準では,抗菌薬やNSAIDsやPPIの濫用や動脈硬化性疾患に対する過度な治療に対する注意喚起がされていません.その一方で,心血管疾患の既往のない患者にアスピリンやスタチンを推奨したり,低リスク慢性心房細動患者へワーファリンやアスピリンを推奨したりするなど,疑問を感じる部分もあります.
STOPP/START criteriaで処方整理を行った効果については,2016年に4件のRCTのシステマティックレビューが示されており,転倒,せん妄,入院期間,受診,薬剤費は減りましたが,QOLと死亡は改善しませんでした.
STOPP/STARTの日本語訳のある栃木医療センター矢吹先生のブログはこちら(STOPP)こちら(START)

 減薬プロトコルdeprescribing protocol (項目新設2017/11/29,最終更新2017/11/29)

Beers criteria,STOPP,STARTなどの個々の薬剤の減薬基準は重要ではありますが,実際に減薬する際に,一度に減らすか,1つずつ減らすか,どれから減らすか,悩みます.ポリファーマシーの患者は必然的に多疾患・多問題を抱えるmultimorbidity患者ですので,もっと包括的なアプローチが必要になります.では,実際に減薬を試みようと思った場合にどのように行えばいいでしょうか.そのために減薬の手順を示したものが減薬プロトコルdeprescribing protocolです.2015年のJAMA Intern Med(JAMA Intern Med 2015;175:827)にその方法が提唱されました.

これは,高齢者の薬物有害事象のもっとも重要な予測因子が薬剤数であることから,薬剤数をなるべく減らすことを目的として開発されたプロトコルです.プロトコルは5つのkey stepからなり,

@全薬剤の服薬理由を明らかにし
A有害作用がどれくらい起こりうるかを考え
B各薬剤の潜在的な利益と害を評価し
C中止の優先順位を決め
D減薬の実施とモニタリングを行う

という順序で行います.詳細を以下の表1と図に示しますが,このような手順で減薬を進めていけば,容易に服用している薬剤の数が減らせることが期待できます.
この図表のpdfファイルはこちら




実際の診療現場での減薬にあたってのどの薬剤を減らすかの決め方

1)多く処方されている薬剤について重点的に中断を検討する
国内で処方されている医療用医薬品の売上高ランキング(年によってどんどん変わり,リンク切れが起こるので,Googleで検索してみて下さい)によれば,ランキングの上位に来ているのは,以下の薬剤です.
・ARB
・抗血小板薬
・NSAIDs
・DPP-4阻害薬
・抗リウマチ薬
・抗認知症薬
・PPI
・抗癌薬
・スタチン
・エリスロポエチン製剤
・抗ヒスタミン薬
・抗精神病薬
・喘息・COPD吸入薬
・免疫抑制薬
・抗鬱薬
・睡眠薬
・抗菌薬
・骨粗鬆症薬
・NOAC
・H2ブロッカー

もちろん,患者数が多いというのもあるが,この中には,漫然と使用されて処方目的がわからなくなっている慢性疾患治療薬も少なくないです.まずは,このように使用頻度の多い薬剤が不必要に使われていないかマークすることが大事です.
2)患者にとっての真のアウトカムは何かを同定する
Multimorbidityな患者は問題が多岐にわたるため,木を見て森を見ずの状態になりやすいです.したがって,どの問題をより優先するべきかを検討します.服用している薬の期待される効果を1つずつ明らかにし,そのうちのどの効果が患者にとっての真のアウトカムになるのかを考えます.どのアウトカムを重視するのかは人によって,状況によって変わりますので,医療者が患者の真のアウトカムを予測するのではなく,患者や家族との対話を通じて,患者にとっての真のアウトカムを見出します.
3)患者の余命はどれくらいかを見積もる
薬剤中断の可否を判断する際には,その患者の平均余命がどれくらいかを見積もることも大事です.その人の残りの人生における,その薬剤を使用する意味を考えると,自ずと継続するべきか中断するべきかが見えてくると思います.その際に,前段で述べた,患者にとっての真のアウトカムが何かが重要になるのです.
日本人の性別年齢別の平均余命は厚生労働省の簡易生命表で確認することができ,こちらにまとめてあります.
逆に,高齢であっても十分な余命が期待でき,慢性疾患の治療や予防を行うことが患者にとってメリットが大きいと考えられる場合には,副作用の発現に注意しながら必要な薬剤を開始します.副作用が出た場合には中止を原則とし,それを別の薬剤で対処する処方カスケードになることを極力避ける努力をします.また,高齢者で必須となる薬剤はそれほど多くはないですが,対症療法のための薬は積極的に使用するべきと思われます.
ポリファーマシーへの対処は,1人の医療者の意思ではなかなか困難です.全体を取り扱う総合診療医と,「疑義照会」という武器に持つ薬剤師や,患者に一番近いところで状況をよく把握している看護師の多職種連携が鍵です.エビデンスをコミュニケーションツールとして,地域全体での取り組みを行うことが有効です.

※なんごろくの記載内容に間違いをご指摘頂ける方やご意見をお寄せいただける方は,是非,こちらまで御連絡下さい.




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