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なんごろく−脳卒中

 脳血栓症急性期におけるオザグレルの効果

大友英一,沓沢尚之,小暮久也,平井俊策,後藤文男,赫彰郎,田崎義昭,荒木五郎,伊藤栄一,藤島正敏,中島光好
脳血栓症急性期におけるOKY-046の臨床的有用性−プラセボを対象とした多施設二重盲検試験−
臨床医薬1991;7(2):353-388

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カテゴリー: 治療
研究デザイン:
 ランダム化比較試験
資金源: 発売元の小野薬品,キッセイ薬品の関与は論文中には記載されていない
利益相反: 全く記載がないので不明
1.論文のPECO:
P: 以下の選択基準に合致する脳血栓症
   選択基準:
     1)発症後5日以内の新鮮例で,脳循環障害に基づく運動麻痺(四肢脱力・倦怠感等)を有する患者
     2)意識障害が3-3-9度方式でT度の患者
     3)出血性素因または出血症状(頭蓋内出血,胃・十二指腸潰瘍等)のない患者
     4)入院可能な患者とし,年齢・性別は問わない
   除外基準:
     1)今回の発作前より運動麻痺があり,評価困難な患者
     2)意識障害が3-3-9度方式でU℃以上の患者
     3)脳塞栓症の疑われる患者
     4)臨床症状の同様が激しく,薬効評価の困難な患者
     5)重篤な心疾患,腎疾患,肝疾患などの合併症を有する患者
     6)妊婦または妊娠している可能性のある女性
     7)その他,試験成績に影響を及ぼす可能性のある要因を有する患者
E: A群:OKY-046(オザグレル)朝夕80mgずつ(160mg/日)
C: P群:プラセボ
O: primary/secondaryの区別はない
   投与3,7,14(または投与中止時),28日後に以下の項目を判定
   1)全般改善度: 運動障害および四肢脱力・倦怠感の推移に重点をおき,5段階(1:著明改善,2:改善,3:やや改善,4:不変,5:悪化)で判定
   2)概括安全度評価: 副作用および一般臨床検査値の変動を総合して,4段階(1:安全である(副作用なし),2:ほぼ安全である(副作用はあるが,投与継続可能),3:安全性に疑問あり(投与中止で副作用消失),4:安全でない(投与中止後副作用の治療が必要))で判定
   3)有用度判定: 全般改善度判定および概括安全度判定を総合して,5段階(1:極めて有用,2:有用,3:やや有用,4:有用とは思われない.,5:好ましくない)で判定
aspirin(100mg/日未満)や他の抗血小板薬の使用は両群とも同等に許された.
quinidineは最初の2年間は使用が許されていたが,dabigatranとの相互作用の可能性が指摘されてからは禁止された.
2.ランダム割付けされているか?: されている.
A群は140例,P群は143例に割り付けられた.多施設で行われているが,割り付け方式についての記載はないので,concealmentについてはされているかどうか不明,4人ブロックで割り付けした.
3.Baselineは同等か?: 本文「U成績 2.患者の背景」と表4より,両群のBaselineは同等.
ただし,喫煙,家族歴,脂質異常症の有病率についての検討がされてない.個々の項目を見てみると,発作から投与開始までの時間も全体では有意差はないが,その分布を見てみると,A群とP群でそれぞれ,24時間以内が33例と27例,25〜48時間が36例と47例,49〜72時間が20例と23例と,A群の方がより発作から投与開始までの時間が短い症例の方が多いことがわかる.
症候別重症度をみると,神経症候に有意差があり,A群の方がより障害が高度な患者が多い.また他のものでは有意差はなかったが,意識障害,自覚症状,日常生活動作をみても,同様にA群の方がより高度な患者が多いと言える.
全般的に,A群に割り付けられた患者の方が重症であったと言えよう.
4-1.ITT解析か?: いいえ.
まず,ITT解析とは明記されていない.また,図2の投与時最終判定の症例構成を見ると,A群140例,P群143例を割り付けたにもかかわらず,全般改善度の評価をしているのがA群132例,P群131例のみであり,ITT解析されているとは言えない.
4-2.結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか?: ない.
総投与例数はA群140例,P群143例の合計283例.対象外疾患だったA群の脳塞栓症1例,ヒステリー・筋収縮性頭痛1例,P群の脳塞栓症1例とプロトコール違反のあったP群の2例を除外し,最終的に278例を解析(A群138例,P群140例).したがって,追跡率は98.2%(278/283).
5.マスキング(盲検化)されているか?: 二重盲検法とあるので,マスキングしているとされている.
ただし,ここで言う二重盲検法では,患者と治療者がマスキングされているものと考えられるが,アウトカム評価者と統計解析担当者がマスキングされているかどうかは不明.
6.症例数は十分か?: 有意差があるので,症例数は十分.
ただし,症例数の計算はされていない.
7.結果の評価:
メインとなる結果は図3,4,表5にある.
本文の記述から改善度について作表すると以下のようになる.
改善以上 やや改善以上
A群(オザグレル) P群(プラセボ) A群(オザグレル) P群(プラセボ)
3日後 8.2% 2.2% 39.6% 23.7%
7日後 20.3% 8.6% 69.5% 53.1%
14日後 52.8% 25.4% 83.7% 66.7%
投与時最終 50.0% 24.4% 78.8% 64.9%
28日後 62.3% 37.2% 92.6% 77.7%

  
  • 上記の図表を見ると,A群の方が改善しており,オザグレルが脳梗塞の治療に有効とされている.
    しかし,baselineの特徴を見る限り,A群の患者の方が重症であり,P群の方は症状がないか軽度であるのが多いので,本研究ではA群に有利になっている.
    一方,outcomeとして,”最終的な神経障害の程度”を見ているのではなく,”改善度”(すなわち”変化”)を用いているので,始めから軽症の患者よりもある程度症状がある患者の方が治療効果は出やすい(始めから症状や神経学的所見がない患者は,改善しようがない).
  • また,有意差がないものの,リハビリテーションを行っている患者がオザグレル群ではプラセボ群の2倍多く(71% vs 36%),これもオザグレル群に有利なバイアスとなる.
  • 本研究に参加した患者は,年齢は60〜79歳が69%(192/278)で,初発の脳梗塞が78%(218/278),心房細動合併なしが98%(269/274)で,梗塞部位は中大脳動脈領域が,責任病変は穿通枝が多かった.
    つまり,本研究では,初発のラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞を対象としていた.
    また,JCSが一桁の患者がほとんどであり,重症度はNIHSSでは評価されていないが,軽度〜中等度の患者が多い.
結局のところ,この治療法は使えるのか:
  • 本研究では,もともとオザグレル群に割り付けられた患者の方が重症で,かつ治療が早期から開始されており,さらにoutcomeが”改善度”というより症状のある患者の方に有利な指標を用いたため,オザグレルに有利な結果が出た.
    したがって,本研究はもともとA群の方が治療効果が出やすいという重大なバイアスがあり,この研究の結果を以てオザグレルに脳梗塞の治療効果があるとは言い難い.
  • 本研究の他に,オザグレルの効果を検討したRCTはないため,オザグレルを脳卒中急性期治療に用いることは,推奨されない.

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