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なんごろく−脳卒中

脳卒中ガイドライン (最終更新2011/10/7)
治療
 抗血小板薬 (最終更新2010/1/14)
 非心原性脳梗塞急性期に対する抗血小板療法 (最終更新2010/5/3)
 非心原性脳梗塞慢性期に対する抗血小板療法 (最終更新2010/5/3)
 脳梗塞急性期治療にキサンボン,カタクロット,ノバスタン,スロンノン,ラジカットを使用しない理由 (最終更新2012/10/12)
 脳卒中急性期の血圧管理 (最終更新2010/2/20)
 心房細動患者における抗凝固療法〜DOACの時代でいいのか? (最終更新2017/5/12)
 脳梗塞再発予防に対する抗血小板療法と抗凝固療法の併用 (最終更新2013/2/21)

 脳卒中ガイドライン (最終更新2011/10/7)

国内

海外

  • AHA/ASA:Update to the AHA/ASA Recommendations for the Prevention of Stroke in Patients With Stroke and Transient Ischemic Attack(Stroke 2008;39:1647):2008年5月版(2006年版のupdate),無料公開
  • AHA/ASA:Guidelines for the Early Management of Adults With Ischemic Stroke(Stroke 2007;38:1655):2007年4月版,無料公開
  • ESO(欧州脳卒中機構):Guidelines for Management of Ischaemic Stroke and Transient Ischaemic Attack 2008(Cerebrovasc Dis 2008;25:457):2008年5月版,無料公開

 治療

よく知られているように,心原性脳塞栓症では抗凝固薬が,非心原性脳梗塞では抗血小板薬が用いられます.
つまり,一般的に脳梗塞はラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓症,その他の型の脳梗塞に分けらますが,臨床的には,心原性脳塞栓症とそれ以外の2分類で分けるのが,理解しやすいです.

抗血小板薬 (最終更新2010/1/14)

現在,本邦で使用できる抗血小板薬は,以下の通りです.

商品名 一般名 製薬会社 添付文書での脳梗塞での使用量 薬価
バイアスピリン
バファリン81
アスピリン(アセチルサリチル酸) バイエル
ライオン
100mg1×
81mg1×
6.1円
6.1円
後発品あり
後発品あり
プラビックス クロピドグレル サノフィ・アベンティス 75mg1× 110.6円/25mg,279.4円/75mg
パナルジン チクロピジン サノフィ・アベンティス 200mg2×〜300mg3× 67.1円
ペルサンチン
アンギナール
ジピリダモール 日本ベーリンガー
長生堂
記載なし 6.9円/12.5mg,9.5円/25mg,27.4円/100mg,46.4円/Lカプセル150mg
6.2円/12.5mg,6.2円/25mg
後発品あり
プレタール シロスタゾール 大塚製薬 200mg2× 115.9円/50mg,208円/100mg
ドルナー
プロサイリン
ベラプロスト 東レ
科研
記載なし
記載なし
76.7円/20microg
75.4円/20microg
オパルモン
プロレナール
リマプロストアルファテクス 小野
大日本住友
記載なし
記載なし
85.2円/5microg
79.6円/5microg
エパデール イコサペントエン散エチル(EPA) 持田 記載なし 52.2円/カプセル300mg,53.8円/S300mg,103.7円/S600mg,152.7円/S900mg
アンプラーグ サルボグレラート 田辺三菱 記載なし 98.6円/50mg,170.3円/100mg
ロコルナール
エステリノール
トラピジル 持田
高田
記載なし
記載なし
15.7円/50mg,29.6円/100mg
7.3円/50mg,14.1円/100mg

後発品あり

非心原性脳梗塞急性期に対する抗血小板療法 (最終更新2010/5/3)

本邦の脳卒中治療ガイドライン2009には,脳梗塞の急性期治療の抗血小板療法の項に,以下のような記載があります.
そして,この推奨は,脳卒中治療ガイドライン2004から変更はなく,全く同じ推奨でした.
[推奨]
1.オザグレルナトリウム160mg/日の点滴投与は,急性期(発症5日以内)の脳血栓症(心原性脳塞栓症を除く脳梗塞)患者の治療法として推奨される(グレードB)
2.アスピリン160〜300mg/日の経口投与は,発症早期(48時間以内)の脳梗塞患者の治療法として推奨される(グレードA).

オザグレルナトリウム投与の是非については,次の項で詳しく述べます.

非心原性脳梗塞では,抗血小板薬が治療に用いられるが,2007年のAHA/ASA虚血性脳卒中急性期治療ガイドライン(Stroke 2007;38;1655)では,発症24〜48時間以内にアスピリン(初期投与量325mg)を経口投与することが推奨されていますが,その一方でクロピドグレルの単独またはアスピリンとの併用投与は,データが不十分なため推奨されていません.
2002年のAAN(American Academy of Neurology)のガイドライン(Neurology 2002;59:13)では,発症から48時間以内にアスピリン160〜325mgを投与すると死亡率を減らしますが,他の抗血小板薬の効果は,十分なデータがないとしています.
2008年のNICEガイドライン(NICE 2008 Jul:CG68)では,発症24時間以内の可及的早期にアスピリン160〜300mgを投与し,少なくとも2週間は継続すると推奨されています.

胃腸障害がある場合は,PPIを併用すること,アスピリンアレルギーがある場合は,クロピドグレルやジピリダモールなどの他の抗血小板薬を用いることも推奨しています.

これらを踏まえて,脳梗塞急性期治療は,以下のように行うべきと考えられます.

脳梗塞急性期治療の推奨
非心原性脳梗塞と考えられる症例では,以下で治療開始
発症24〜48時間以内にバイアスピリン200mg1×(もしくはバファリン81 162mg1×)

抗血小板薬は他にもパナルジン,プレタールなどが市販されていますが,エビデンスに乏しく,副作用や薬価を考慮して総合的に考えると,使用すべきではありません.
脳梗塞は,
初発でも,再発でも,急性期治療は同じです.
つまり,もともとアスピリンを服用している患者では200mgに増量,もともとクロピドグレルを服用している患者ではバイアスピリン200mgに変更します.

なお,以下の場合は,アスピリン投与は禁忌.
  • アスピリンアレルギー →クロピドグレル75mg1×を投与します
  • 消化管出血
  • tPA治療後
NICEガイドラインでは,嚥下障害で内服できいない場合は以下のオプションを考慮するよう書かれています.
  • 直腸投与
  • 経鼻胃管 経鼻胃管での投与は,腸溶錠でないアスピリンを用いることになるので,胃腸障害に注意するべきです.
    ガスターD 40mg2×など,H2RAと併用するのが無難でしょう.

抗血小板薬のオプションとしては,以下の3つが挙げられています.

  • アスピリン
  • 低用量アスピリン+徐放性ジピリダモール
  • クロピドグレル

急性期非心原性脳梗塞におけるアスピリンの効果

2008年のコクランレビュー(Cochrane Database Syst Rev 2008 Jul 16;(3):CD000029)で以下のような効果が示されています(最大治療期間6ヶ月).
outcome Aspirin Control OR NNT p値
死亡または寝たきり 45% 46.2% 0.95(0.91-0.99) 79(43-400) 0.01
総死亡 12.1% 12.9% 0.92(0.87-0.98) 108(66-436) 0.01
治療期間中の肺塞栓症 0.34% 0.48% 0.71(0.53-0.97) 693(427-6,700) 0.03
治療期間中の虚血性・原因不明の脳卒中再発 2.4% 3.1% 0.77(0.69-0.87) 140(104-248) 0.000024
症候性頭蓋内出血 1% 0.82% 1.22(1.00-1.50) NNH 574(254-126,010) 0.054
主要な頭蓋外出血 0.96% 0.56% 1.69(1.35-2.11) NNH 245(153-481) <0.00001
脳卒中からの完全な回復(後付け) 27.3% 26,2% 1.06(1.01-1.11) 89(49-523) 0.014

過去に行われたアスピリンの効果を検討した大規模RCTはIST(International Stroke Trial)と,CAST(Chinese Acute Stroke Trial)の2件あります.

・IST(International Stroke Trial)(Lancet 1997;349:1569

48時間以内にアスピリン300mgを内服開始し,14日まで継続したのと,プラセボを比較した.
14日死亡率,出血性脳卒中は有意差なし.
14日以内の虚血性脳卒中の再発は,2.8% vs 3.9%(p<0.001,RRR 28%,NNT 91)と有意に減少.
死亡または脳卒中の再発も,11.3% vs 12.4%(p=0.02,RRR 8.9%,NNT 84)と有意に減少.
6ヶ月後の死亡または寝たきりは,62.2% vs 63.5%(p=0.07)と有意差はなかったが,ベースラインの予後を調整すると有意差がみられた(p=0.03,RRR 2%,NNT 72).
この研究における脳梗塞の病型は,ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞,心原性塞栓症では分類されておらず,Total anterior 24%,Partial anterior 40%,Posterior circulatior 12%,Lacunar 24%という内訳だった.サブ解析の結果はグラフで示されており,ラクナ梗塞では死亡や寝たきりの抑制効果はないように見えるが,交互作用の検定はされておらず,病型間の違いがあるかどうか不明である.
Afを持つ患者の割合は16%.
また,この研究ではヘパリンの効果も検討されており,脳梗塞再発抑制効果も,死亡や寝たきりを抑制する効果もなかった.

・CAST(Chinese Acute Stroke Trial)(Lancet 1997;349:1641

48時間以内にアスピリン160mgを内服開始し,4週間継続したのと,プラセボを比較した.
4週間後の死亡率は,3.3% vs 3.9%と有意に減少(p=0.04,RRR 15%,NNT 167).
虚血性脳卒中の再発も,1.6% vs 2.1%と有意に減少(p=0.01,RRR 24%,NNT 200).
退院時の死亡と寝たきりは,30.5% vs 31.6%で,有意差はなかった(p=0.08).
出血性脳卒中にも有意差はなかった.
この研究における脳梗塞の病型もIST研究と同様,ラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞,心原性塞栓症では分類されておらず,Total anterior 9%,Partial anterior 54%,Posterior circulation 7%,Lacunar infarct 30%という内訳だった.サブ解析の結果はグラフで示されており,死亡や脳梗塞再発抑制効果は,交互作用の検定はされていないものの,点推定値は殆ど変わらず,病型間の違いはないと思われる.
Afを持つ患者の割合は7%.
以上から,アスピリンの効果は,脳卒中再発を1/4(25%)減らす程度と考えられる.
また,両研究とも心原性塞栓症を含むものと思われるため,脳梗塞急性期の治療では病型によらずアスピリンを使用して良いと思われる.

非心原性脳梗塞慢性期に対する抗血小板療法 (最終更新2010/5/3)

本邦の脳卒中治療ガイドライン2009には,脳梗塞慢性期の再発予防のための抗血小板療法の項に,以下のような記載があります.
[推奨]
1.非心原性脳梗塞の再発予防には,抗血小板薬の投与が推奨される(グレードA).
2.現段階で非心原性脳梗塞の再発予防上,最も有効な抗血小板療法(本邦で使用可能なもの)はアスピリン75〜150mg/日,クロピドグレル75mg/日(以上,グレードA),シロスタゾール200mg/日,チクロピジン200mg/日(以上,グレードB)である.
3.心原性脳梗塞のうち,ラクナ梗塞の再発予防にも抗血小板薬の使用が奨められる(グレードB).ただし十分な血圧のコントロールを行う必要がある.
つまり,本邦での非心原性脳梗塞慢性期(二次予防)の抗血小板療法のオプションとしては,以下の4種類が挙げられます.
  • アスピリン75〜150mg/日 (1日薬価 6.1円)
  • クロピドグレル75mg/日 (1日薬価 279.4円)
  • シロスタゾール200mg/日 (1日薬価 416円)
  • チクロピジン200mg/日 (1日薬価 134.2円)

これらを踏まえて,脳梗塞慢性期治療は,以下のように行うべきと考えられます.

脳梗塞慢性期治療の推奨
非心原性脳梗塞では,以下で治療
発症15日目以降,もしくは退院時からのいずれか早い時点から
バイアスピリン100mg(もしくはバファリン81 81mg1×)に減量して継続投与


急性期に投与したバイアスピリン200mg1×(もしくはバファリン81 162mg1×)から減量する.

もともとアスピリンを服用している患者が脳梗塞を起こした(再発した)場合は,アスピリンでは脳梗塞の再発予防はできないことが示されてしまったわけですので,同じ治療では予防できないと考えられます.
発症15日目以降,もしくは退院時からのいずれか早い時点から
クロピドグレル75mg1×投与


アスピリンアレルギーの場合も,クロピドグレル75mg1×を投与

脳梗塞急性期治療にキサンボン,カタクロット,ノバスタン,スロンノン,ラジカットを使用しない理由 (最終更新2012/10/12)

脳梗塞急性期治療にキサンボン,カタクロット(オザグレルナトリウム)を使用しない理由
本邦の脳卒中治療ガイドライン2009には,脳梗塞の急性期治療の抗血小板療法の項に,以下のような記載があります.
そして,この推奨は,脳卒中治療ガイドライン2004から変更はなく,全く同じ推奨でした.
[推奨]
1.オザグレルナトリウム160mg/日の点滴投与は,急性期(発症5日以内)の脳血栓症(心原性脳塞栓症を除く脳梗塞)患者の治療法として推奨される(グレードB)
2.アスピリン160〜300mg/日の経口投与は,発症早期(48時間以内)の脳梗塞患者の治療法として推奨される(グレードA).
「グレード」というのは,同ガイドラインの解説によれば,「推奨のグレード」であり,「グレードA」は「行うよう強く勧められる(少なくとも1つのレベルTの結果)」,「グレードB」は「行うよう勧められる(少なくとも1つのレベルUの結果)」を意味します.
「レベルTの結果」というのは,エビデンスのレベルが,RCTのメタアナリシス(RCTの結果がほぼ一様)が存在する「レベルTa」と少なくとも1つのRCTが存在する「レベルTb」を併せたものです.
付帯事項として,「※レベルTの結果が1つあっても,そのRCTの症例数が十分でなかったり,企業主導型の論文が1つのみしか存在せず再検討がいずれ必要と委員会が判定した場合は,グレードを一段階下げてBとする」とあります.
この推奨を見て,素直に思うのは,どうして推奨グレードBのオザグレルが,推奨グレードAのアスピリンより前に記載されているか理解できない,ということです.
推奨の根拠として,その下のエビデンスの欄に「オザグレルナトリウム160mg/日の点滴投与は,発症5日以内の脳血栓症患者の転帰改善に有効である1)(Tb)」とあります.
なるほど,Tbだったら通常はグレードAになるはずですが,これは付帯事項に該当するために「グレードB」とされているわけね,と分かります.
そして,参考文献1)は日本で行われた臨床試験(臨床医薬1991;7:353)で,グレードが下げられるような理由があるはずです.
簡単に言うと,オザグレルを検討したこの参考文献1)では,オザグレル群の患者がより重症であり,プラセボ群の方は症状がないか軽度であるのが多いにもかかわらず,outcomeに残存障害ではなく障害の”改善度”を用いているため,オザグレル群が有利になるような重大なバイアスを含んでいます.
また,有意差がないものの,リハビリテーションを行っている患者がオザグレル群ではプラセボ群の2倍多く(71% vs 36%),これもオザグレル群に有利なバイアスです.
したがって,オザグレルがラクナ梗塞,アテローム血栓性脳梗塞急性期治療に有効とする結論は正しくないと言えます.
参考文献1)の詳細な批判的吟味の結果は以下を参照のこと.
【原著論文の批判的吟味】
大友英一,沓沢尚之,小暮久也,平井俊策,後藤文男,赫彰郎,田崎義昭,荒木五郎,伊藤栄一,藤島正敏,中島光好
脳血栓症急性期におけるOKY-046の臨床的有用性−プラセボを対象とした多施設二重盲検試験−
臨床医薬1991;7(2):353-388
なお,オザグレルの薬価は,以下の通り.
薬価 1日使用量 5日間投与の場合の薬剤費
キサンボン注射用40mg 先発品 2,610.00円 160mg(4V) 52,200円
注射用カタクロット40mg 先発品 2,685.00円 53,700円
オキリコン注80mg 後発品 1,315.00円 13,150円
(参考)バイアスピリン100mg 先発品 6.1円 200mg(2T) 61円

脳梗塞急性期治療にエダラボンを使用しない理由

本邦の脳卒中治療ガイドライン2009には,脳梗塞の急性期治療の脳保護薬の項に,以下のような記載があります.
そして,この推奨は,脳卒中治療ガイドライン2004から変更はなく,全く同じ推奨でした.
[推奨]
脳保護作用が期待されるエダラボンは脳梗塞(血栓症・塞栓症)患者の治療法として推奨される(グレードB)。
脳卒中治療ガイドライン2009中のエダラボンの推奨の根拠として,以下のような記述があります.
●エビデンス
 脳保護作用が期待される薬剤について、脳梗塞急性期の治療として用いることを正当化するに足る臨床的根拠は、現在のところエダラボンに関するわが国からの報告1、2)のみである。
 エダラボン(抗酸化薬)の静脈内投与は、国内第V相試験において、脳梗塞急性期(発症72時間以内)患者の予後改善に有効性が示され、層別解析でより有効性が高かった発症24時間以内の脳梗塞患者の治療法として、本邦での使用が認可された1)(Tb)。市販後調査にて、感染症の合併、高度な意識障害(Japan Coma Scale 100以上)の存在、脱水状態では、致命的な転帰を辿ったり、腎機能障害や肝機能障害・血液障害など複数の臓器障害が同時に発現したりする症例が報告されており、投与中の腎機能、肝機能、血液検査の頻回な実施が必要とされている。
上記を見て,どのような印象を持つでしょうか.エダラボンは非常に危険性の高い薬剤で,使用には細心の注意が必要と感じるでしょう.推奨文では,エダラボンはグレードBで推奨されています.つまり「レベルIbの結果が1つ以上あっても、そのRCTの症例数が十分でなかったり、論文が1つのみしか存在せず再検討がいずれ必要と委員会が判定した」ためにグレードAではなく,グレードBとされているということです.
ガイドラインのエビデンスの項に引用されている参考文献1)は,日本で行われたRCTです.その内容を簡単に言うと,Edaravoneを検討したこの参考文献1)ではEdaravoneが神経学的転機を良くするという結果でしたが,baselineでEdaravone群の患者の方がより軽症であり,outcomeに「神経学的状態」を用いているため,Edaravone群が有利になるような重大なバイアスを含んでいます.また,この研究では,研究期間中にOzagrelを使用しないように定めているので,この研究結果を見る限り,OzagrelとEdaravoneを併用することでどのような効果が生まれるのか不明です.したがって,この研究結果を基にして,OzagrelとEdaravoneを併用することはできません.詳細な批判的吟味の結果は以下を参照のこと.
【原著論文の批判的吟味】
Edaravone Acute Infarction Group.
Effect of a novel free radical scavenger, edaravone (MCI-186), on acute brain infarction. Randomized, placebo-controlled, double-blind study at multicenters.
Cerebrovasc Dis 2003;15:222-229
もう一つの引用文献である参考文献2)(Cerebrovasc Dis 2009;27:485)は,EdaravoneとOzagrelを比較して効果に差がなかったため,Edaravoneは少なくともOzagrelと同等の効果を持つという結果でした.しかし,前述のとおり,Ozagrelの効果が怪しいため,Edaravoneが同等だったからといって,Edaravoneに効果があるとはいえません.
Edaravoneの効果については,2011年にコクランレビュー(Cochrane Database Syst Rev. 2011;(12):CD007230)が出されました.
これによると,3件のRCTのメタアナリシスでEdaravoneは神経学的転機をRR 1.99(05%CI 1.60〜2.49)倍改善させるというものでした.一方,総死亡はRR 0.80(95%CI 0.22〜2.91)と差がありませんでした.
しかし,この結果を信じていいでしょうか.
このコクランレビューの根拠になっている3件のRCTのうちの1つは先に批判的吟味をした日本からのRCTでした.既に述べたように,baselineの性質に群間の差があり,Edaravone群の方が軽症患者が多かったために,効果が過大評価されていました.ですから,この結果をうのみにするわけには行きません.
残りの2つの研究(Zhang 2007, Chinese Journal of New Drugs and Clinical Remedies 2007;26:105Zhou 2007, Modern Preventive Medicine 2007;34:966)は,いずれも中国語の論文で原文の入手が困難でしたが,コクランレビューに質の評価がされています.いずれも研究の質はそれほど低くはなく,outcomeは神経学的所見の改善度でした.やはり,気になるのはbaselineの性質の群間の違いですが,そこまでは知ることができませんでした.
以上の結果から,いずれにしても現時点でEdaravoneは脳梗塞急性期の治療として有効とはいえず,明確にEdaravoneを使用したら転機改善に至るとはいえないと思います.
なお,エダラボンの薬価は,以下の通り.
薬価 1日使用量 14日間投与の場合の薬剤費
ラジカット注30mg20mL 8,136.00円 60mg(2V) 227,808円
ラジカット点滴静注バッグ注30mg100mL 8,228.00円 60mg(2V) 230,384円

脳卒中急性期の血圧管理 (最終更新2010/2/20)

脳梗塞急性期には,それまで内服していた降圧剤は3日程度休薬して病状が悪化しないことを確認してから再開し,新たな降圧薬は,発症から2週間後以降(どんなに早くても1週間以降)に開始するのが良いと思われます.
詳しくは,「なんごろく−高血圧症>脳卒中急性期の血圧管理」の項を参照.

心房細動における抗凝固療法〜DOACの時代でいいのか? (最終更新2017/5/12)

脳梗塞再発に対するアスピリンの効果はRRR 25%,ワルファリンは5〜7割減らす程度です.決して完全に防いでくれるわけではありません.
ワルファリンの方が再発予防効果が高いなら,脳梗塞予防には全例ワルファリンを使用すればよいのではないかと考えてしまいます.ところが,アスピリンにせよ,ワルファリンにせよ,出血という重大な合併症があるので,効果ばかりで決めるわけにはいきません.そこで大事になるのが,再発率の予測です.

CHADS2 score と CHA2DS2-VASc score

非弁膜症性心房細動患者における脳梗塞発症率予測のPrediction rule(臨床予測ルール)がCHADS2 scoreとCHA2DS2-VASc scoreです.当初CHADS2 scoreが開発されましたが,その後より低リスクでの発症予測を正確にするために開発されたのが,CHA2DS2-VASc scoreです.
CHADS2 score:非弁膜症性心房細動を合併している患者における脳梗塞発症率の予測(JAMA 2001;285:2864
CHADS2 score項目 点数   合計点数 脳梗塞年間発症率
(事前割合4.4%)
心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)での推奨 
C: 心不全
H: 高血圧
A: 年齢(≧75歳)
D: 糖尿病
S2: 脳卒中またはTIAの既往
1点
1点
1点
1点
2点
  0
1
2
3
4
5
6
1.9%
2.8%
4.0%
5.9%
8.5%
12.5%
18.2%
→無治療
→ワルファリン(考慮可) or ダビガトラン(推奨)
→ワルファリン(推奨) or ダビガトラン(推奨)
→ワルファリン(推奨) or ダビガトラン(推奨)
→ワルファリン(推奨) or ダビガトラン(推奨)
→ワルファリン(推奨) or ダビガトラン(推奨)
→ワルファリン(推奨) or ダビガトラン(推奨)
非弁膜症性心房細動患者では,脳梗塞再発予防の治療でアスピリンは推奨されていないことに注目すべきです.

CHA2DS2-VASc score: 非弁膜症性心房細動を合併している患者における脳卒中発症率の予測 .CHADS2 scoreよりも細かく,特に低スコアでの脳卒中発症率の予測に優れるとされる(BMJ 2011;342:d124).
CHA2DS2-VASc score項目 点数   合計点数 血栓塞栓症*による入院と
死亡の年間発生率
 年間総死亡率
C: 心不全
H: 高血圧
A2: 年齢(≧75歳)
D: 糖尿病
S2: 脳卒中またはTIAの既往
V: 血管疾患
A: 年齢(65〜74歳)
Sc: 性別(女性)
1点
1点
2点
1点
2点
1点
1点
1点
  0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
0.66%(0.57〜0.76)
1.45%(1.32〜1.58)
2.92%(2.76〜3.09)
4.28%(4.10〜4.47)
6.46%(6.20〜6.74)
9.97%(9.53〜10.43)
12.52%(11.78〜13.31)
13.96%(12.57〜15.51)
14.10%(10.90〜18.23)
15.89%(7.95〜31.78)
2.29%(3.12〜2.47)
5.33%(5.09〜5.58)
12.93%(12.59〜13.27)
18.52%(18.16〜18.89)
22.23%(21.76〜22.71)
28.16%(27.45〜28.88)
32.52%(31.37〜33.71)
37.98%(35.76〜40.33)
48.98%(43.02〜55.77)
62.40%(44.59〜87.33) 
                 *末梢動脈塞栓症,虚血性脳卒中(脳梗塞),肺塞栓症を含む

CHA2DS2-VASc scoreの不思議なところは,女性であるとリスクが上がることです.

日本人のCHADS2 score,CHA2DS2-VASc score,HAS-BLED score
日本人のCHADS2,CHA2DS2-VASc,HAS-BLEDのデータが2014年に出ました.

Okumura K, Inoue H, Atarashi H, Yamashita T, Tomita H, Origasa H; J-RHYTHM Registry Investigators.
Validation of CHA2DS2-VASc and HAS-BLED scores in Japanese patients with nonvalvular atrial fibrillation: an analysis of the J-RHYTHM Registry.
Circ J. 2014;78(7):1593-9.
PubMed PMID: 24759791.


そのデータを抜粋します.
まず,日本人のリスクはオリジナルのリスクよりも全体的に低いのがわかります.
また,ワルファリン使用と非使用でリスクがどうなるか分けられています.これは,オリジナルのCHADS2 scoreやHAS-BLED scoreでは分けられていなかったので,臨床上有用です.ワルファリンを使用しない場合と使用した場合とで,塞栓と出血のリスクがどのように変わるのかを計算してみると良いと思います.
日本人のリスク評価には,日本人のデータを利用しましょう.





mCHA2DS2-VASc scoreとmHAS-BLED scoreの定義

日本の心房細動治療ガイドラインの推奨

日本循環器学会の心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)での推奨は以下の通りになっています.
CHADS2スコアが1点以上で抗凝固療法を推奨しています.
抗凝固療法の選択はオリジナルのCHADS2スコアを元に決められていますが,上記の日本人のデータが出たのはこの診療ガイドラインが発行された1年後の2014年であることに注意が必要です.

DOACの効果〜システマティック・レビューの結果
DOACとワルファリンの効果を比較した最新のシステマティック・レビューは2012年に出版されたもの(Circulation 2012;126:2381)で,12研究,54,875人のデータを解析しています.GRADE approachは採用していません.結果は以下のとおりです.

アウトカム RR(95%CI) 異質性(I2)
総死亡 0.89(0.83〜0.96) 0%
心血管死亡 0.89(0.82〜0.98) 0%
脳卒中と全身性塞栓症 0.77(0.70〜0.86) 0%
虚血性脳卒中 0.92(0.81〜1.04) 22%
大出血 0.86(0.80〜0.93) 57%
頭蓋内出血 0.46(0.39〜0.56) 34%
心筋梗塞 0.99(0.89〜1.15) 55%

DOACはワルファリンと比較して「脳卒中と全身性塞栓症」は23%有意に減少するが虚血性脳卒中(=脳梗塞)と心筋梗塞は減らせない.出血のリスクも減るとなれば,これはつまりDOAC効力不足と考えられます.DOACの効果はワルファリンをしっかり使った場合に及ばないといえます.








DOACの効果〜日本人リアルデータの結果
2017年に発表された日本人での3,731人を対象としたコホート研究(Fushimi AF Registry,Circ J 2017 Apr 19)の結果では,研究開始時にDOACを使用していた人はワルファリンを使用していた人と比較して脳卒中/全身性塞栓症(p=0.70)も大出血(p=0.34)も減っていませんでした(Figure 5).また,経過中のDOAC/ワルファリン使用で見ても,DOAC使用はワルファリン使用と比較して,脳卒中/全身性塞栓症(HR 0.95,0.59〜1.51)も大出血(HR 0.82,0.50〜1.36)のどちらも減らしませんでした.
注目するべきは,服薬していたDOACの用量です(Figure 4).ダビガトランで36%,リバーロキサバンでは48%,アピキサバンでは59%もの患者が推奨されていない低用量のDOACが服用されていました.つまり,用量不足で脳卒中/全身性塞栓症も減らせていないのです.にもかかわらず,大出血が減らせていないという点にも注目する必要があります.
また,出血のリスクとなる因子の解析(Table 3)では,脳出血の既往がある患者でリスクが高い(HR 3.46,2.04〜5.85)であるのは当然として,次にリスクが高いのは腎機能障害であり,HR 2.87(1.67〜4.95)倍大出血が起こりやすくなることを示しています.つまり,これだけ低用量のDOACが使用されているにも関わらず腎機能障害の患者では出血のリスクは上がっているので,腎機能障害の患者には(減量ではなく)原則としてDOACを使用するべきではないといえます.
少なくとも現時点での日本での使い方では,DOACがワルファリンよりも有効で,かつ安全とはいえないのです.
加えて,薬価を比較すれば,DOACがワルファリンよりも優れているとはいえず,安易なDOAC使用は慎むべきです.古くから使われているワルファリンの方が使い慣れており,どのようにすれば安全に使えるかわかっていますので,塞栓予防にはDOACではなくワルファリンを使用することを強くお勧めします

アウトカム HR(95%CI) p値
脳卒中と全身性塞栓症 0.95(0.59〜1.51) 0.82
大出血 0.82(0.50〜1.36) 0.45




DOACの薬価

DOACの薬価は1日薬剤費にするといずれも同じ値段になり,ワルファリンの10倍以上の薬剤費になる.
薬剤名
(商品名)
薬価 1日の薬剤費 1年間の薬剤費
ダビガトラン
(プラザキサ(R)カプセル75mg)
136.4円 545.6円 199,144円
リバーロキサバン
(イグザレルト(R)錠15mg)
545.6円 545.6円 199,144円
アピキサバン
(エリキュース(R)錠5mg)
272.8円 545.6円 199,144円
エドキサバン
(リクシアナ(R)錠60mg)
546.6円 545.6円 199,144円
(参考)ワルファリン
(ワーファリン(R)錠1mg)
9.6円 48円
(5mgで)
17,520円
(5mgで)
ワーファリンは,5mg錠の薬価が9.6円で1mg錠と等価

今回の脳梗塞はラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞だったが,心房細動を合併していて,CHADS2 scoreが高い場合

判断に困るのは,ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の患者が心房細動を合併していて,CHADS2 scoreが高い場合です.この場合,ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の予防にはアスピリンが,心房細動に対してはワルファリンが推奨されているので,どちらを使おうか迷います.再発予防の選択肢として考えられる治療法は,以下の3つです.
  • アスピリン単独投与
  • ワルファリン単独投与
  • アスピリンとワルファリンの併用投与
では,どれにするべきでしょうか.
まず,先に述べたように,心房細動患者では,日本循環器学会の声明にもあるように,脳梗塞再発予防の目的でアスピリンを使用するべきではありません.したがって,心房細動を合併している以上,アスピリン単独投与という選択肢は取れません.では,ワルファリンは使用するとして,今回の脳梗塞がラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞であった場合,アスピリンを併用した方がいいのでしょうか.

脳梗塞再発予防に対する抗血小板療法と抗凝固療法の併用 (最終更新2013/2/21)

ワルファリン使用中に脳梗塞を再発した例でアスピリンを併用したらいいのではないかと思うのは自然なことです.しかし,そうも単純には行かないようです.

抗血小板薬と抗凝固薬の併用

脳梗塞発症予防のための抗血小板薬と抗凝固薬の併用についてのコホート研究(Arch Intern Med 2010;170:1433)の結果があります.
Figure 3は,非致死的出血と致死的出血のリスクを見たもので,ワルファリン単独投与を基準として,アスピリン単独投与がリスクはHR 0.93(95%CI 0.88〜0.98)と有意に減り,クロピドグレル単独投与はワルファリン単独投与と変わらず,併用療法はいずれも出血リスクが有意に高くなるというものでした.特に,3剤併用するとリスクがHR 3.70(95%CI 2.89〜4.76)倍にもなります.
これに対して,Figure 4は非致死的脳梗塞と致死的脳梗塞のリスクを見たもので,ワルファリン単独投与と比較して,アスピリン単独投与とクピドグレル単独投与は脳梗塞発症リスクが有意に高いのは想定範囲内だとして,ワルファリン+アスピリンでもワルファリン単独よりも脳梗塞の発症リスクがHR 1.27(95%CI 1.14〜2.10)倍に有意に増やしていることには驚きです.
つまり,出血はおろか,予防目的である脳梗塞についても,併用療法の方がリスクが高くなるのです.皆,併用の方が単独よりも予防効果が高い可能性を信じていますが,現実はそうではありません.したがって,「今回の脳梗塞はラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞だったが,心房細動を合併していて,CHADS2 scoreが高い場合」は,アスピリン単独投与でも併用でもなく,ワルファリン単独療法を行うべきです.

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