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なんごろく−脂質異常症

診断・リスク評価  
 いつ,誰に脂質異常症のスクリーニングをするべきか (最終更新2016/3/15)
 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版 (最終更新2013/1/7)
 心血管リスク評価 (最終更新2016/3/15)
治療  
 多くの場合,冠動脈疾患一次予防には脂質異常症治療薬の適応はない (最終更新2016/3/15)
 スタチンの選び方 (最終更新2016/4/7)
 スタチンは糖尿病を増やす (最終更新2010/3/3)
 中性脂肪は放っておけ,フィブラートは使わない (最終更新2012/8/28)
 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブezetimibe) (最終更新2016/4/7)

 診断・リスク評価

いつ,誰に脂質異常症のスクリーニングをするべきか (項目新設2016/3/15)

健康診断で当たり前のように測定されている脂質異常症ですが,スクリーニングの目的は最終的な心筋梗塞の予防とか,死亡率低下であるはずです.ところが,スクリーニングによって脂質異常症を拾い上げて治療して,それがそういった目的を達成できるかどうかは確かめてみるまでわかりません.脂質異常症に対するスクリーニングの目的が「早期に脂質異常症に対する治療介入をすることが動脈硬化性疾患を減らし,生命予後を改善すると期待できる無症状の患者群を発見すること」であるならば,その対象と方法をはっきりとさせる必要があります.
診療ガイドラインにおいてスクリーニングの推奨を作る際には,まずanalytic frameworkと呼ばれるものを作成します.これは,ある介入行為の推奨を作る際に,どのような疑問が明らかになればそれが可能になるかを分析したものです(下図).例えばスクリーニングの場合,単に検査法の感度・特異度が優れているというだけではその検査をやろうということにはなりません.脂質異常症を発見して治療をしても予後を改善させることが出来ないようなリスクの低過ぎる,または高すぎる患者群では、脂質異常症をスクリーニングする必要がないと考えられます。
また,スクリーニングは拾い上げですから,一般的に見逃しを減らすために感度が高い検査やcut off値を用いますが,その分トレードオフで特異度は下がります.特異度が下がるということは偽陽性が増えることになりますから,過剰診断が増えます.あまり過剰診断が多くなると,そのために余計な検査や不必要な治療を受ける人が出てきますから,コストがかさむことになります.
以上のように,スクリーニングを行うべきかを考える際には,analytic frameworkで各部分の疑問をkey questionという形で表し,最終的に誰に行えば予後が改善するかを検討していくことになります.
各国の診療ガイドラインにおける脂質スクリーニングの推奨
日本動脈硬化学会の動脈硬化疾患予防ガイドライン2012年版(以下,JAS 2012),米国のUSPSTFが2008年に発表した推奨,カナダで2013年に発表されたCCS(Canadian Cardiovascular Society)の脂質異常症についての診療ガイドライン,欧州のESC(European Society of Cardiology)/EAS(European Atherosclerosis Society)の2011年の診療ガイドライン英国NICEが2014年に発表した診療ガイドラインにある脂質異常症スクリーニングの推奨を以下にまとめます.結構,国によって推奨が異なるのがわかります.
 国  診療ガイドライン名  推奨内容
 日本  JAS 2012 ・本項(スクリーニング)の対象には,主に動脈硬化危険因子に関し「精査が必要」とされた初診患者が含まれるが,冠動脈疾患など動脈硬化性疾患の既往を有する場合、あるいはすでに脂質異常症、糖尿病、高血圧などの治療や経過観察を受けている患者についても、定期的に本項に従いスクリーニング検査を施行し、リスクとその管理状況の再評価を経時的に行うべきである。
 米国  USPSTF (2008) ・男性≧35歳ではルーチンでのスクリーニングを強く推奨する(Grade A)
・冠動脈疾患のリスクのある女性≧45歳ではスクリーニングを強く推奨する(Grade A)
・冠動脈疾患のリスクのある20〜35歳男性と20〜45歳女性ではスクリーニングを推奨する(Grade B)
・冠動脈疾患のリスクのない20〜35歳男性と20〜45歳女性ではルーチンでのスクリーニングをどうするか推奨を付けない(Grade C)
・脂質異常症のスクリーニング検査としては,総コレステロールとHDL-Cを空腹時に測定する 
 カナダ  CCS (2013)  男性では40歳以上、女性では50歳以上または閉経後の患者に対して推奨する。ただし冠動脈疾患リスク因子を持つ患者については年齢に限らず推奨する
 欧州  ESC/EAS (2011)  40歳以上の男性と50歳以上または閉経後の女性がスクリーニングのラインとして設定されており、糖尿病など冠動脈疾患のリスク因子がある場合や、若年発症の冠動脈疾患の家族歴を有する場合などには、年齢に限らずスクリーニングを施行する
 英国  NICE (2014)  ・プライマリケアにおける心血管疾患の一次予防には,40〜74歳でハイリスク患者を拾い上げるための包括的戦略を行うべきである.
・10年心血管疾患リスク≧10%であれば,正式なリスク評価を行う.
・すでに冠動脈疾患が存在する場合と家族性高コレステロール血症患者では(すでにハイリスクなので)リスク評価は行わない.
最初にも書いた通り,スクリーニングの対象となるのは,それを発見して治療した場合に治療の利益がある(利益が害やコストを上回る)場合に限ります.
 脂質異常症スクリーニングの対象:
・スクリーニングの対象は,糖尿病脳梗塞CKD患者と,糖尿病以外の動脈硬化リスクが全て揃っている(60〜75歳の喫煙男性で,収縮期血圧が180 mmHg以上)患者
・一度測定して基準範囲であれば,次のスクリーニングは原則として5年以上後

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版 (最終更新2013/1/7)

本邦の脂質異常症のガイドラインは2012年に改定され,「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」(無料公開されていない)でのコレステロールのコントロール目標は以下の通りになっています.


図1.LDLコレステロール管理目標設定のためのフローチャート





図2.冠動脈死亡絶対リスク評価チャート(一次予防)
高リスクは 5% 以上10% 未満 と 2% 以上 5% 未満
中リスクは 1% 以上2% 未満 と 0.5% 以上1% 未満
低リスクは 0.5% 未満


表.リスク区分別脂質管理目標値
治療方針の原則 管理区分 脂質管理目標値(mg/dL) 
LDL-C HDL-C TG  non HDL-C
一次予防
まず生活習慣の改善を
行った後,薬物療法の
適用を考慮する
カテゴリーT
<160 ≧40 <150  <190
カテゴリーU <140 <170
カテゴリーV <120 <150
二次予防
生活習慣の是正ととも
に薬物治療を考慮する
冠動脈疾患の既往 <100 <130

・家族性高コレステロール血症については9章を参照のこと.
・高齢者(75歳以上)については15章を参照のこと
・若年者などで絶対リスクが低い場合は相対リスクチャートを活用し,生活習慣の改善の動機づけを行うと同時に絶対リスクの推移を注意深く観察する.
・これらの値はあくまでも到達努力目標値である.
・LDL-Cは20〜30%の低下を目標とすることも考慮する.
・non HDL-Cの管理目標は,高TG結晶の場合にLDL-Cの管理目標を達成した後の二次目標である.TGが400mg/dL以上および食後採血の場合は,non HDL-Cを用いる.
・いずれのカテゴリーにおいても管理目標達成の基本はあくまでも生活習慣の改善である.
・カテゴリーTにおける薬物療法の適用を考慮するLDL-Cの基準は180mg/dL以上とする.

日本動脈硬化学会(編):動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版,日本動脈硬化学会,2012

以上のように,リスク評価が2007年版と異なって大変煩雑になっています.しかも,重要なことは,これがNIPPON DATA 80という疫学データ(観察研究)を元に作られていることであり,絶対リスクの推定を行うように促していることは評価できますが,絶対リスクが高い人だからといって強力にLDL-Cを下げたら死亡リスクが減らせるかどうかは別問題です.(これほど細かい)絶対リスク別にコレステロールを下げた程度(管理目標を変えたこと)によってどのような効果が得られるのかについては,過去の臨床試験でもほとんど明らかにされていません.そのためか,このガイドラインでも,「これら(管理目標)の値はあくまでも到達努力目標値である」や,「LDL-Cは20〜30%の低下を目標とすることも考慮する」などと歯切れの悪い記述になっています.
また,NIPPON DATA 80では10年間の冠動脈疾患による死亡確率が示されているのであって,総死亡や冠動脈疾患発症率,脳卒中発症率は考慮されていないことにも注意するべきです(NIPPON DATA 80による10年間の心疾患による死亡リスクの算出ツールがwebで公開されています).
もう1つ,このフローチャートでは,40〜69歳の患者だけを対象としています.「高齢者(75歳以上)については15章を参照のこと」と書かれていますが,70〜75歳でもこのフローチャートではコントロール目標を決められません.
このフローチャートを用いてコントロール目標を決める際には,こういった点に注意する必要があります.

心血管リスク評価 (項目新設2016/3/15)

各国の診療ガイドラインでは,それぞれ自国の心血管リスク評価ツールを用いています.
以下に日米英のリスク評価ツールを紹介します.
リスク評価には,自国のツールを用いるのが原則です.
 国  診療ガイドライン  心血管リスク評価ツール  ハイリスクの定義(10年間で)
 日本  JAS 2012  NIPPON DATA 80  冠動脈疾患死亡率 2%以上
 米国  ACC/AHA 2013  Pooled Cohort Equations CV Risk Calculator  動脈硬化性疾患発症率が 7.5%以上
 米国    フラミンガムのリスク評価ツール  
 英国  NICE 2014  QRISK2  動脈硬化性疾患発症率 10%以上

 治療

多くの場合,冠動脈疾患一次予防には脂質異常症治療薬の適応はない (項目新設2016/3/15)

健診で脂質異常を指摘される患者は後を絶たず,閉経後中年女性に限ってもその数は大変多いです.こういった患者は治療をするべきでしょうか.
冠動脈疾患の既往のある患者ではスタチンは必須薬ですが,冠動脈疾患の既往のない患者では同じようにはいかないようです.
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」(無料公開されていない)にあるNIPPON DATA 80によるリスク評価で治療対象を決めるのは一見リーズナブルな方法ですが,毎回NIPPON DATA 80のリスクチャートと照らし合わせて治療の適否を決めるのは煩雑です.もっと覚えやすい方法はないのでしょうか.
低リスク患者に対するスタチン治療の効果を検証したCholesterol Treatment Trialists'(CTT)のメタアナリシス(Lancet 2012;380:581,BMJ 2013;347:f6123)によれば,5年間の主要血管イベント(major vascular events: MVE)のリスクが10%未満では死亡率はRR 0.90(0.81〜1.01)と有意には減らず,5%未満ではRR 1.05(0.86〜1.28)と逆に増える可能性すらありました.一次予防であっても,リスクによって治療効果は変わってくるのです.
ここで主要血管イベント(MVE)と呼んでいるものには,主要冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞または冠動脈死亡)と脳卒中と冠血管再建術を含んでいます.
ところで,NIPPON DATA 80によるリスク評価で,日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」では,冠動脈死亡の絶対リスクが最高でも10年間で10%未満となっています.カテゴリーはカテゴリーT(0.5% 未満),カテゴリーU(0.5% 以上 2.0% 未満),カテゴリーV(2.0% 以上)の3つに分かれています.
ここで,カテゴリーVである「10年間の冠動脈疾患による死亡確率が2.0% 以上」というのは,先のMVEではどれくらいに相当するのでしょうか.実は,残念ながらNIPPON DATA 80ではMVEがどれくらい起こるのかというデータが公表されていません.
冠動脈死亡リスクと主要血管イベント(MVE)リスクの相関
低〜中リスクの日本人患者において食事療法を対照としてプラバスタチンの心血管イベント一次予防効果を検証したMEGA study(Lancet 2006;368:1155)では,5.3年間の観察で食事療法単独群の致死的心筋梗塞(=冠動脈疾患による死亡)が(3/3966=)0.08%なのに対し,MVE発症率が((33+62+66)/3966=)4.69%でした.しかし,さすがにいくら一次予防であっても,5.3年間で致死的心筋梗塞の発症が0.08%というのは小さすぎます.これは,イベント発症数が少ないため,たまたま心筋梗塞で亡くなった人が少なかったと考えられます.
一方,心血管死亡は(18/3966=)0.45%ですが,心筋梗塞以外の心血管疾患で死亡しているのが心筋梗塞での死亡の5倍もいることになります.これはちょっと違和感があります.もっといえば,MVEには冠血管再建術が含まれますが,MEGA studyではその施行例が多いですから,真の冠動脈疾患はもっと少ないと考えられます.
そこで,心血管死亡0.45%に対してMVE 4.69%であることを考慮すると,
冠動脈死亡2.0%に相当するMVEは20%程度
になります.つまり,先のメタアナリシスの結果の示す通り死亡が減らないMVEは5年間で10%ですから,10年間だと20%になり,最もリスクの高いカテゴリーVでもスタチン治療によって死亡が減らないと言えます
糖尿病患者
では,一次予防ではすべての患者で脂質異常症の薬物治療が全く不要でしょうか.
NIPPON DATA 90(Diabetes Care 2013;36:3759)のデータから,日本人糖尿病患者の冠動脈死亡率は1000人年対2.6,すなわち単純計算で10年間の冠動脈疾患による死亡確率は2.6%と高いことが示されています.そして2006年のシステマティックレビュー(BMJ 2006;332:1115)において,糖尿病患者を対象とした6件のメタアナリシスにより,冠動脈イベントの一次予防がRR 0.79(95%CI 0.7〜0.89)倍に有意に減ることが示されていますので,糖尿病患者では薬物治療を行ったほうがいいでしょう
脳梗塞の既往のある患者
 脳梗塞の既往のある患者がアスピリンや降圧剤とともにスタチンを使用することはメリットがあるでしょうか.
 2009年に発表されたコクランレビューでは,7件のRCTのメタアナリシスで,脳梗塞やTIAの既往のある患者の脂質異常症治療薬使用は脳梗塞と脳出血の発症がOR 0.92(0.81〜1.04)と再発を有意に減らすことができませんでした.ただ,フィブラートでOR 1.48(0.94〜2.30)と害の傾向があり,スタチンだけでは5件のメタアナリシスでOR 0.88(0.77〜1.00)と脳梗塞や脳出血をやや減らすというものでした.このコクランレビューでは,総死亡は減らせず,脳梗塞に限ればOR 0.78(0.67〜0.92)と有意に減らせましたが,逆に脳出血はOR 1.72(1.20〜2.46)と有意に増える結果でした.
 結論として,脳梗塞の既往のある患者はスタチンを服用してもいいですが,出血のリスクが増えることを念頭に置きながら,例えば脳出血の既往のある患者では使用を控えるなどとした方がいいかもしれません
CKD患者
 透析をしていないCKD患者を対象とした2014年のコクランレビュー(CDSR 2014:CD007784)では,13件のRCTのメタアナリシスで,スタチン治療により主要血管イベントがRR 0.72(0.66〜0.79),総死亡がRR 0.79(0.69〜0.91),心血管死亡がRR 0.77(0.69〜0.87)といずれも有意に減少しました.


これに対して,透析中のCKD患者を対象とした2013年のコクランレビュー(CDSR 2013:CD004289)では,13件のRCTのメタアナリシスで,スタチン治療により主要血管イベントがRR 0.95(0.88〜1.03),総死亡がRR 0.96(0.90〜1.02),心血管死亡がRR 0.94(0.84〜1.06)といずれも有意な減少は示しませんでした.

結論としては,スタチンを使用することによるメリットは透析中でないCKD患者ではありますが,透析中のCKD患者ではありません.
超ハイリスク患者
 また,NIPPON DATA 80のリスク評価で10年間の冠動脈疾患による死亡確率が5〜10%と高くなる60〜75歳の喫煙男性で,収縮期血圧が180 mmHg以上の場合(つまり,糖尿病以外のリスクが全て揃っている男性)も,薬物治療を行ったほうがいいでしょう
 ただ,これら例外以外の患者さんの一次予防でも薬物治療を行ってはいけないということではなく,よりリスクが高い患者さんや,どうしても薬物療法を行いたいと希望する患者さんには,どのようなアウトカムを目的に治療するかを確認し,治療効果について話したうえで治療を開始することもあります.
冠動脈疾患一次予防に対する薬物療法の適応
  • ベースラインリスク(ベースラインの心血管イベント発症リスク)の考え方が基本.治療適応はすべてベースラインリスクの高さで決まる
  • 基本的に,一次予防では喫煙などの生活習慣改善を中心に据え,LDLコレステロールの値がどれほど高くても,原則として薬物療法は行わない(LDLコレステロール値よりも心血管リスクが大事)
  • 糖尿病患者ではLDLコレステロール 120 mg/dL未満になるように治療する(二次予防と異なり,治療前からLDL-C<120 mg/dLであれば薬物治療は不要)
  • 脳梗塞,CKD患者(ただし,透析中の患者を除く)は治療してもよい(目標LDLコレステロール 120 mg/dL
  • 60〜75歳の喫煙男性で,収縮期血圧が180 mmHg以上(つまり,糖尿病以外の動脈硬化リスクが全て揃っている男性)の場合も,薬物治療を行う

スタチンの選び方 (項目新設2014/5/21,最終更新2016/4/7)

現在本邦で承認されているスタチンは以下の通りです.たくさんありますが,違いはほぼ力価の違い(どれだけ強力にLDL-Cを下げるか)だけと考えて良いと思います.
分類 商品名 一般名 製薬会社 薬価
スタンダードスタチン   メバロチン プラバスタチン 第一三共/ブリストル・マイヤーズスクイブ 50.5円/5mg,94.8円/10mg 後発品あり
リボパス シンバスタチン 万有製薬/メルク 112.4円/5mg,221.8円/10mg,447.8円/20mg 後発品あり
ローコール フルバスタチン ノバルティスファーマ/田辺三菱製薬 38.9円/10mg,69円/20mg,99.1円/30mg 後発品あり
ストロングスタチン  リピトール アトルバスタチン アステラス製薬/ファイザー 65.5円/5mg,107.9mg/10mg 後発品あり
リバロ ピタバスタチン 興和創薬 63.2円/1mg,119.8円/2mg 後発品あり
ストロングスタチン
(スーパースタチン)
クレストール ロスバスタチン 塩野義製薬/アストラゼネカ 68.1円/2.5mg,131.5円/5mg 後発品なし

※一次予防と二次予防における治療前値のLDLコレステロールに応じたスタチンの選び方

一次予防
当院で最も頻繁にLDLコレステロールのコントロールを行うのは,糖尿病脳梗塞の患者です.
幸いなことに,いずれも2007年版のガイドラインと変わらず,糖尿病と脳梗塞患者におけるコントロール目標は,LDLコレステロール<120mg/dLです.これに,2012年版のガイドラインでは,CKDも同じコントロール目標になりました.
脂質異常症の治療で最も大事なのは,LDLコレステロールのコントロールです.
HDLコレステロールは直接上昇させる良い薬剤がないですし,中性脂肪はそのコントロールが心血管疾患の予防に有効とするエビデンスがないからです.
二次予防
二次予防では全例に薬物療法を行う.
LDL-C値によって用いるスタチンの種類と用量を決定する.
LDL-C 100 mg/dL未満を目標とする.
実際に治療する際各スタチンにおけるLDL-C低下率については, UpToDateの「Lipid lowering with statins」に各スタチンの用量とLDLコレステロール低下率の関係を見た表が載っています.
これは,各スタチンの効果を見るのにとても便利です.
LDLコレステロール低下率のデータから逆算した,治療前値のLDLコレステロールに応じた選択すべきスタチンを以下の表にまとめます.
ただし,食事療法の効果が期待できるときには,それを差し引いて薬剤の選択すると良いでしょう.
一次予防で治療する場合(DM,CI,CKD患者,目標LDL-C<120mg/dL)
LDLコレステロール
治療前値
目標低下率 選ぶべきスタチン 薬価
265 mg/dL −55% クレストール20 mg* 526.0円
240 mg/dL −50% クレストール10 mg* 263.0円
220 mg/dL −45% クレストール5 mg 131.5円
200 mg/dL −40% リピトール10 mg
クレストール2.5 mg
107.9円
68.1円
185 mg/dL −35% リピトール5 mg
メバロチン20 mg
56.5円
189.6円
150 mg/dL −20% メバロチン10 mg 94.8円
130 mg/dL −10% メバロチン5 mg 50.5円
<120 mg/dL 0% 治療の必要なし
二次予防で治療する場合(目標LDL-C<100mg/dL)
LDLコレステロール
治療前値
目標低下率 選ぶべきスタチン LDL-C
治療後予測値
220 mg/dL −55% クレストール20 mg* 100 mg/dL
200 mg/dL −50% クレストール10 mg*
180 mg/dL −45% クレストール5 mg
170 mg/dL −40% リピトール10 mg
クレストール2.5 mg
155 mg/dL −35% リピトール5 mg
140 mg/dL −30% 90 mg/dL
120 mg/dL −15% 80 mg/dL
100 mg/dL ±0% 65 mg/dL
80 mg/dL 50 mg/dL
60 mg/dL 40 mg/dL
最初から目標に達していても最低限リピトール5 mgを使用する
*添付文書上の記載から,クレストールは5mg以下から開始しなければなりません.
ちなみに,スタチンは強さによって,strong statinとか,super statinとかいう言い方をしますが,単に力価の問題だと思われます.
つまり,初期に発売された古いstatinでも,量を増やせばLDLは下がるということです.
これは,新しい薬剤が承認を受けるときには,既にある薬剤より優れていることを証明しないといけないので,よりLDLの下がる力価を設定する必要があるという事情があるためです.
スタチンによる横紋筋融解症
横紋筋融解症は発症率が100,000人年あたり3.4人と少ないですが,発症したら致死率は10%と怖い副作用です.
スタチンの強さが強くなるほど,横紋筋融解症の発症率は高くなるとされていますので,必要以上に低下率の高い薬を選ぶのは避けた方が良いでしょう.
最もLDLコレステロールを協力に下げるクレストールは,腎障害が75倍発症し,承認前の臨床試験で横紋筋融解症が発症しました.
したがって,コレステロールの治療のためには,必要最低限(コントロール目標を達成するもっと弱い)の薬剤を用いるべきです.
通常はスタチン開始から数週間〜数ヶ月以内に起こります.
横紋筋融解症までいかなくても筋肉痛や脱力など筋症状が起こることがあります.2〜11%と頻繁に起こるとされています.
血清CKは上昇しないこともあります.
発症するときには数日の経過で起こり,スタチンを中止すれば数日〜数週間で回復します.したがって,横紋筋融解症を早期発見する目的で外来のたびにスタチン服用患者にルーチンで血清CKをモニタリングすることは意味がないとされています.

スタチンは糖尿病を増やす (最終更新2010/3/3)

スタチンの力価が上がれば効果も大きいが害も多いというのは,2010年3月2日発行のLancetに掲載されたメタアナリシス(Lancet 2010;375:735)でも証明されました.
このメタアナリシスは,スタチンの使用で糖尿病の新規発症がOR 1.09(1.02-1.17)倍増えることを示したものです.
スタチン別では,ロバスタチン→プラバスタチン,シンバスタチン→アトルバスタチン→ロスバスタチン の順にオッズ比が上がっていくので,titer-dependentに発症すると言えます.
そして,クレストールでは,糖尿病の新規発症が18%も増えることになります.
やはり,必要最低限の薬剤を用いるのが,スタチンの正しい使用法と言えます.

中性脂肪は放っておけ,フィブラートは使わない (最終更新2012/8/28)

脂質異常症で用いられる薬剤にはさまざまものがありますが,LDLコレステロールが高い場合にはスタチン,中性脂肪が高い場合にはフィブラート系が用いられることが一般的だと思います.
日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版でも,リスクの数に寄らず150mg/dL未満を目標に治療するように書かれています.
では,LDLコレステロールも中性脂肪も高い場合は,どうしたらよいのでしょうか?
中性脂肪が高いと,心血管疾患は増えるのか?
近年の最も大きなコホート研究(JAMA 2007;298:299)では,高中性脂肪血症は一見心血管疾患のリスクとなっているというデータです.
Fig.4を普通に見ると,確かにそう読めます.
しかし,注意しなければならないのは,これは空腹時の中性脂肪が1mmol/L(=88.5mg/dL)未満の人を基準にして考えた場合です.
この場合,日本人で一般的に多い150〜300mg/dL(1.7〜3.4)前後くらいを考えると,多変量で調整後に,心筋梗塞,虚血性心疾患,総死亡のいずれもHR 2〜2.5倍程度のリスクがあると読めます.
ところが,これを,1〜1.99mmol/L(88.5〜177mg/dL)を基準に考えたとしたら,150〜300mg/dL(1.7〜3.4)前後の人は,リスクが高い傾向にあるかも知れませんが,有意と言えるほどの差はなくなります.
基準をどこに置くかによって結果が変わるのは当然ですが,majorityを基準に置くか,少数の低リスクの集団に基準を置くかを考えた場合,私は前者にするのが合理的だと思います.
また,全体の傾向は,男女とも,どのアウトカムでも有意差が付いていますが,これは1mmol/L未満と5mmol/L(442.5mg/dL)以上の極端な人達が多く含まれているからで,これらを除いたら,有意差が出なくなる可能性もあります.
それでも,1mmol/L未満と比較したら2〜2.5倍のリスクというのは高いのではないかとの反論があるかも知れません.
本研究は26年間の観察研究で,その間,心筋梗塞は13%,虚血性心疾患は25%,総死亡は56%起こっており,これを年率に直すと,それぞれおよそ0.5%,1%,2%になります.
日本人での心筋梗塞と虚血性心疾患の発症率は,MEGA study(Lancet 2006;368:1155)の対照群でみると年率0.16%と0.5%ですから,JAMAの研究の患者の半分以下です.
ですから,2〜2.5倍と言っても,それほど大きな差にはならないと考えられます.
さらに,JAMAの研究に参加した患者は,高血圧患者が約半分,喫煙者が約6割ですから,これらの危険因子がないような患者では,リスクはさらに下がるものと思われます.
2009年に発表されたメタアナリシス(JAMA 2009;203:1993)でも,中性脂肪は心血管疾患のリスクにならないと示されています.
脂質以外の危険因子で調整後の心血管疾患に対するハザード比は1.37(1.31-1.42)でしたが,これをさらにHDLコレステロールと非HDLコレステロールで調整すると,0.99(0.94〜1.05)になり,有意差がなくなってしまうということでした.
エビデンスが錯綜していますが,中性脂肪は心血管疾患の危険因子とはならない可能性があり,仮になるとしても他の危険因子ほど重視はするべきではないと言えます.
高中性脂肪血症にフィブラートは使うべきか?
結論から言うと,フィブラートいう薬は,原則として使うべきではないと思います.

スタチン登場以前に行われた介入研究はフィブラートやニコチン酸を用いたものが主でしたが,それらを中心としたメタアナリシス(Br Heart J 1993;69;S42)によれば,一次予防治療においては冠動脈疾患は減少しますが,死亡率はOR 1.20(1.0-1.45)で有意に増加していました(Figure 3).
同じ年に出された他のメタアナリシス(BMJ 1993;306:1367)でも,冠動脈疾患による死亡率が年率0.1%の低リスク群では,コレステロール治療によりかえって死亡率が上がることが指摘されています(FIG 4).
その後行われたfenofibrateの比較的新しい研究であるFIELD trial(Lancet 2005;366:1849)では,primary outcomeの冠動脈イベントはHR 0.89(0.75-1.05)と有意差がつかず,死亡率も有意差がありませんでしたが,HR 1.11(0.95-1.29)とやはり増加傾向を示しました.
しかもこの研究では,糖尿病患者を対象としていますので,さらに低リスク患者の場合には,死亡率は有意に増加する可能性があります.
その後行われたgemfibrozilを用いてHelsinki Heart Study(Arch Intern Med 2006;166:743)が行われました.
18年のフォローで,こちらは心血管疾患はRR 0.76(0.59-0.99)と有意に減少していますが,やはり総死亡はRR 0.92(0.79-1.08)で有意に減らせてはいません
しかも,この心血管疾患のイベント減少は,サブ解析において,BMI>27.5のTG≧184mg/dLの場合に限り0.30(0.15-0.58)と有意差が出ており,それ以外の非肥満患者と肥満患者でも中性脂肪値がそれほど高くないグループでは有意な減少はみられていません

そして,2010年にフィブラートの効果を検討した新たなメタアナリシス(Lancet 2010;375:1875)が出ました.
この報告によると,心血管イベント,冠動脈イベント,非致死的冠動脈イベント,冠動脈血管再建術,アルブミン尿の増加,網膜症は有意に減らしましたが,一方で,総死亡,心臓死,心血管死,突然死,非血管死,脳卒中,心不全は減らしませんでした.
この中で,特に非血管死は有意差は付いていないものの,逆に増える傾向を示しています.
結論としては,高中性脂肪血症が動脈硬化の危険因子といえたとしても,フィブラートを使うことで心血管疾患は減るかも知れないが,死亡率には影響しない,と言えます.
したがって,多くの日本人では,中性脂肪値が高かったとしても,フィブラートを使用する意義はないと考えられます.

スタチンとフィブラートは併用すべきか?

ACCORD研究のサブ解析(NEJM 2010;362:1563)で,simvastatinにfenofibrateを加えても,アウトカムを改善することができませんでした.
併用により,横紋筋融解症の発症率は飛躍的に上がると言われており,スタチンとフィブラートを併用することは勧められません

フィブラートはどういう場合に使うべきか?

では,高中性脂肪血症は完全に放置でよいのでしょうか.
フィブラートという薬は無用の長物なのでしょうか.
動脈硬化からの視点で中性脂肪があまり重要ではないとしても,急性膵炎では,話が違ってきます.
NEJMの総説(NEJM 2007;357:1009)では,中性脂肪値が1000mg/dL以上では,急性膵炎の発予防のために治療をすべきと記されています.
その際は,理論的にはスタチンよりも中性脂肪値の低下効果の最も大きいフィブラートを使用するのが良いと思われます.
そして,2012年に脂質異常症に対する治療が急性膵炎を予防するかどうか検討したメタアナリシス(JAMA 2012;308:804)が出ました.
この報告によると,16件のRCTでスタチンを使用すると,急性膵炎の発症は平均4.1年でRR 0.77(95%CI 0.62〜0.97,p=0.03, I2=0)になりました.スタチンの投与量に関して検討した5件のRCTのメタアナリシスでは,高用量は中等用量と比較してRR 0.82(95%CI 0.59〜1.12,p=0.21, I2=0)と変わりませんでした.一方で,7件のRCTのメタアナリシス(平均5.3年)で,フィブラートの使用でRR 1.39(95%CI 1.00〜1.95,p=0.053, I2=0)と逆に急性膵炎の発症が増える結果でした.
やはり,フィブラートは使うべき薬ではないといえるでしょう.
中性脂肪値の基準範囲上限である150mg/dLをちょっと越えた程度では,全く大騒ぎする必要がないと言えます.
高中性脂肪血症の治療
  • 基本的に治療不要
  • 中性脂肪1000 mg/dL以上は急性膵炎のリスクになるため治療適応
  • 薬物治療はスタチンで行う
  • フィブラートは逆に急性膵炎を増やすので使用しない
  • スタチンとフィブラートを併用するのはメリットがなく横紋筋融解症のリスクを増やすので危険

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブezetimibe) (最終更新2016/4/7)

フィブラート,スタチン,ニコチン酸など,脂質異常症の治療薬にはいくつかありますが,小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるゼチーアが日本でも発売されるようになりました.コレステロール吸収を担う小腸コレステロールトランスポーター(NPC1L1)に結合することで,胆汁性および食事性コレステロールの吸収を選択的に阻害します.結果的に,肝臓のコレステロール含量が低下し,血中コレステロールの低下につながるのです.
SHARP trial
では,そのエビデンスは?ということになるのですが,LDLコレステロールを下げて,HDLコレステロールを上げる作用は証明されているものの,心血管疾患発症率や死亡率の低下といったより臨床的に重要なアウトカムについては,2011年のLancetにSHARPという臨床研究の結果が発表されました.CKD患者にスタチンとezetimibeを併用すると心血管疾患が減るというものでしたが,この結果は実質的にスタチンの効果を見たものでした.現時点では,積極的に使うべきとは言えない薬です.
SHARP(Lancet 2011;377:2181【原著論文の批判的吟味】
IMPROVE-IT trial
2015年1月心血管イベント後の二次予防におけるエゼミチブ+スタチンとスタチン単独とを比較したIMPROVE-IT(N Engl J Med 2015;372:2387)の結果が発表されました.
心血管イベントをハザード比HR 0.936(95%CI 0.89〜0.99),心筋梗塞をHR 0.87(95%CI 0.80〜0.95),脳梗塞をHR 0.86(95%CI 0.73〜1.00)と減少させましたが,心血管死亡と総死亡は減りませんでした.
この研究には糖尿病患者が27%しか含まれていませんでしたが,この結果を受けて米国糖尿病学会では,2016年のPosition Statementで,「中等度の強度のスタチン治療へのエゼチミブの追加は,中等度の強度のスタチン治療単独と比較して,付加的な心血管ベネフィットをもたらすことが示されており,LDLコレステロール≧50 mg/dL(1.3 mmol/L)の最近急性冠症候群を起こした患者と高強度スタチン治療が認容できない患者で考慮するかもしれない」と二次予防においてスタチンに追加する治療としてエゼチミブを推奨しています.
ただ,1件のRCTの結果だけでこのような推奨を出すことは異例であり,この推奨を鵜呑みにするべきではありません.
まずはスタチンをしっかり使って,それでも心筋梗塞の既往のある患者でLDL-Cが100mg/dL未満に抑えられない場合のみエゼチミブの使用を検討します(必ず使うというわけではありません).

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